【冷都男】
50年前の中国であれば、女性からみた理想の結婚相手は「労働を愛し、党と人民に奉仕する人」だった。男性からみた理想的な女性像も、ほとんど同じであった。
雑誌の日本語版『人民中国』などに、男女とも人民服で、質素ながらも幸せそうな結婚写真つきで紹介されていたのが、これである。もちろん、中共による海外向け雑誌なので、それ自体が宣伝物であり、中共の「政治」の一環である。
とは言え、当時は男女の価値観に目立った差はなく(その政治を是認するか否かは別として)これが社会主義中国における模範的な結婚であった。
結婚相手に要求する「欲」がなかったのは、その頃までだったと言ってよい。80年代の改革開放から現在に至るまでの40年間で、これが同じ国かと思うほど一変する。
男女の人口比により、今の中国では「女性が男性を選ぶ」が主になっている。そこで女性(および女性の家族)から「高収入」「高学歴」「高身長」「高顔値(ハンサム)」「マンション持ち」「車あり」などが最低条件として提示される。
最近では、その最低条件に上乗せされるのが「冷都男」なのだそうだ。
「冷」とは、冷淡な男ということではなく、一見クールに見えるほど落ち着きがあること。「都」はモダンな都会に住んでいること。
はいはい、それは結構と思うが、ふと心配にもなる。そこに人間の「ゆがみ」が生じてはいまいか。条件ばかりつけた結婚で、本当に幸せになれるとは思われないのだが。
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