米サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)のジェン・イースタリー長官は、米国と中国の紛争が勃発した場合、中国のハッカーはパイプラインや鉄道など米国の重要なインフラを破壊するサイバー攻撃を行う可能性が高いと警鐘を鳴らした。
イースタリー氏は12日、アスペン研究所で開催されたイベントで発言した。中国共産党は米国のインフラを妨害することを目的に設計されたサイバーテクノロジーの進歩に多額の投資を行っていると述べた。その上で「紛争が発生した場合、中国はほぼ間違いなく、パイプラインや鉄道などの重要インフラを狙い、軍事展開を遅らせ、社会的なパニックを引き起こすために、積極的なサイバー攻撃を行うだろう」と語った。
「これこそ、我々が準備し、焦点を当て、耐性を構築する必要がある真の脅威だ」。
また、変わりつつある中国共産党の脅威にも言及した。これまでは知的財産の窃盗や強制技術移転などのスパイ活動に焦点が当てられてきたが、現在は「混乱と破壊」といった取り組みにシフトしていると述べた。
「中国の国家権力がもたらす脅威の恐ろしさ、その能力の大きさ、それにかけるリソースと労力を考えると、米国が破壊の発生を防ぐことは非常に難しくなっている」。
中国の妨害工作
イースタリー氏のコメントは、二国間の緊張が高まり続け、中国からのサイバー攻撃が注目される中で発表された。
先月末、米マイクロソフトと英語圏5カ国の機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」の各サイバーセキュリティ機関は、中国のサイバースパイ集団が少なくとも2021年から米国の製造、通信、政府、海事、公益事業、輸送、教育など重要インフラ機関を標的とした攻撃を実施していると明らかにした。
マイクロソフトはこの攻撃の目的は「将来の危機の際に、米国とアジア地域間の重要な通信インフラを混乱させることができる能力」を開発することだったとしている。
また、4月には下院歳出委員会に出席した米連邦捜査局(FBI)のレイ長官が、中国のハッカーは米サイバー専門家の数を「50対1で上回っている」と述べた。
米サイバーセキュリティ企業のクラウドストライクが2月に発表したサイバー脅威に関する報告書も、中国共産党の広範に渡るサイバー攻撃を指摘している。報告書によれば、中国と連携したサイバースパイ集団はほぼすべての大陸で39の業界を標的にサイバー攻撃を仕掛けており、活動の約25%は北米を狙ったものだとした。
国務省のマシュー・ミラー報道官も13日の記者会見で中国の脅威に言及した。「中国はほぼ確実に、石油・ガスパイプラインや鉄道システムなど米国内の重要インフラサービスを妨害し得るサイバー攻撃を行うことが可能だ」。
ミラー氏は、こうした標的となりうる機関を保護するために様々な社会分野と連携をとっているとした上で「これを国家に対する脅威としてとらえ、私たち全員が果たすべき役割を担っていると認識する必要がある」と述べた。
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