全米で加速する人工添加物規制 各州が相次ぎ法整備へ

2025/04/08 更新: 2025/04/08

アメリカ各地で、食品に使用されている人工着色料や保存料を禁止する法案の動きが加速している。健康運動を推進する団体や一部の議員らは、ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官のスローガン「アメリカを再び健康にする」を掲げ、規制強化を訴えた。

食品安全団体環境ワーキンググループによれば、2025年の最初の3か月間だけで、全米20州で約40本の関連法案が提出されたと言う。

中でも動きが早かったのは、カリフォルニア州で、2023年10月に「赤色3号」の使用を州内で禁止したほか、同年8月には、学校給食から6種の着色料を除外する法案も可決されていた。バージニア州も2025年3月に同様の措置を採択した。

最も抜本的な法整備を行ったのは、ウェストバージニア州である。3月24日、パトリック・モリッシー州知事が署名した法案(H.B. 2354)により、7種の合成着色料と2種の合成保存料の使用が、段階的に禁止されることとなった。

具体的には、2025年8月1日から、州内の学校給食で以下の7種の着色料が使用禁止となる:

  • 赤色3号(Red No.3)
  • 赤色40号(Red No.40)
  • 黄色5号(Yellow No.5)
  • 黄色6号(Yellow No.6)
  • 青色1号(Blue No.1)
  • 青色2号(Blue No.2)
  • 緑色3号(Green No.3)

さらに、2028年1月1日からは、上記の着色料に加えて、保存料プロピルパラベンおよびBHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)も、州内で販売される食品全般に使用が禁止されると言う。

3月24日、モリッシー知事は声明で、「ウェストバージニア州は全米でも公衆衛生の指標が低い。だからこそ、この州が『アメリカを再び健康に』という運動の先頭に立つべきだ」と述べ、子どもたちの健康と学習能力を守るために有害な化学物質の排除が必要だと強調した。

これに対し、業界団体からは反発の声も上がっていて、ウェストバージニア清涼飲料協会は、

「消費者の選択と製品の透明性で対応すべき問題であり、法規制は不要」

と、SNSで表明。全米製菓協会も

「州ごとの規制は食品価格の上昇や供給の混乱を招く」

とし、食品の安全性はFDA(米食品医薬品局)が一元的に判断すべきだと主張している。

なお、アメリカで食品に使われるすべての着色料は、FDAの承認を得る必要がある。現在、FDAは36種類の着色料を承認しており、そのうち9種類が合成染料。

健康団体は長年にわたり、人工着色料が注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの行動症状悪化や、動物実験での発がん性との関連が示唆されていることを理由に、州および連邦レベルでの法整備を求めてきた。

欧州連合(EU)や豪州、日本などでも、一部の人工着色料については使用禁止または制限が設けられており、今後アメリカにおける規制の広がりが注目される。

アメリカで、食品に使用される人工着色料や添加物への規制を求める声が高まっている。2024年10月には、ミシガン州にあるWKケロッグ社本社前で、市民らが抗議集会を開き、人気シリアル「フルーツループ」などから人工着色料の使用をやめるよう求めた。

ケロッグは以前、2018年までにアメリカ国内製品から人工着色料と添加物を排除すると発表していたが、実現には至っていない。一方、カナダでは既にフルーツループの着色にブルーベリー果汁やニンジン濃縮液、スイカ果汁など自然素材を使用しており、各国で対応に差があった。

同様に、製菓大手マースも2016年に、人工着色料の全面撤廃を発表したが、2021年には一部製品のみにとどめ、方針を後退させた。

こうした状況に対し、ケネディ・ジュニア氏は、

「食品に含まれる人工化学物質が、慢性疾患や子どもの発達障害などを引き起こしている」

と、警鐘を鳴らした。

ケネディ氏は、

「現在、アメリカ人の3人に2人が慢性疾患を抱えており、大人や子どもにおける糖尿病、神経疾患、脂肪肝、がんが急増している」

と指摘。その主因として、

「第一に超加工食品、第二に食品や薬品、環境中の有害化学物質」

を挙げた。

また、

「こうした食品には、100年前には存在しなかった化学物質が含まれており、それが病気の増加に関与している」

とし、多くの物質は欧州では禁止されているにもかかわらず、米国では一般的に流通していると批判した。

2024年9月に開催された上院議員ロン・ジョンソン主催の円卓会議では、

「私たちは利益のために、体系的に子どもたちを毒している。農薬、食品添加物、薬品、有害廃棄物が私たちの体の隅々にまで入り込んでいる」

と、訴えた。

特に着色料については、「子どもの多動や学習障害と関係している」と指摘。カリフォルニア州の環境衛生リスク評価局が2021年に発表した報告書では、27の臨床試験を分析し、一部の子どもで着色料が、行動に影響を与える可能性があると結論づけている。

ケネディ氏は、2025年3月10日、クラフト・ハインツ、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、タイソン・フーズ、スマッカーズ、ペプシコなど米国大手食品企業の幹部と会談し、

「食品の安全性と透明性を高め、特に子どもたちの健康を守るための取り組みを進める」

と、表明した。

Xに投稿した声明では、「私たちは食品から有害物質を取り除くことで、消費者の信頼を取り戻す」と強調している。

ケネディ氏は、食品に含まれる有害な化学物質の排除を「政権内での最優先事項」と位置づけ、特に合成着色料FD&C青色1号などの禁止を急ぐ意向を示した。この方針は、ケネディ氏が2月13日に長官に就任した直後に、明らかにされたものであった。

ケネディ氏は、トランプ氏の大統領令により設置された「アメリカを再び健康にする(MAHA)」委員会の委員長も兼任しており、同委員会は“子どもの慢性疾患危機”への対応を主要任務とする。同委員会は現在、食品、医療、環境、生活習慣、政策、さらには企業の影響まで、子どもの健康に影響を及ぼすとされるさまざまな要因を調査している。

大統領令によれば、委員会は5月22日までに最初の報告書を提出し、180日以内に「全米こども健康戦略」案を提示する予定であると言う。

ケネディ氏は、添加物業界がFDAや国民への通知なしに、新たな化学物質を食品に導入できる「抜け道」を長年にわたって利用してきたと批判。そのうえで「最悪の成分を食品から排除することで、本物の変革を起こす」と意欲を示した。

食品添加物の規制は、バイデン政権末期にも一部で進められていた。2024年1月には、石油由来の着色料「赤色3号」の使用が禁止され、その食品は2027年、医薬品は2028年までに削除される必要があると言う。FDA幹部のジム・ジョーンズ氏は「赤色3号を高濃度で投与された実験用ラットにがんが発生した」との証拠を示し、

「発がん性が確認された添加物は、食品への使用を認めることはできない」

と、述べた。

MAHA委員会の支援団体「MAHA Action PAC」の創設者であり、ケネディ氏の大統領選広報責任者でもあるデル・ビッグツリー氏は、

「この運動とケネディ氏の登用がなければ、食品から化学物質を排除するという議論は“口先だけ”に終わった」

と、語った。

また、子どもを持つ保護者からも支持の声が上がっている。10代の息子2人を育てる40歳の母親サマンサ・レイバーンさんは、

「着色料を取り除くだけで子どもの様子にポジティブな変化が見られる」

と語り、

「スーパーで売られている食品の原材料を見れば、不健康なものばかり。ようやく健康的な選択肢が増えていく動きが出てきたことを歓迎したい」

とし、

「各州での法整備はまだ始まったばかりだが、有望な第一歩だ」

と、期待を寄せた。

大紀元でホワイトハウスと政府機関のニュースや特集記事を担当している。また、上院・下院選挙の報道も行っている。1990年からプロのジャーナリストとして活動しており、ニュースや政治、ビジネス、プロ・大学スポーツ、ライフスタイルなど、地域・全国メディア向けに幅広い分野を取材してきた経歴を持つ。