食卓に並ぶのは「料理」か、それとも「廃棄物」か——。
食べることそのものが「命がけのギャンブル」
問題ある食材や健康を害す添加物の使用、劣悪な厨房環境、さらには運が悪ければ、注文した新鮮な食事のはずが廃棄物同然の残飯かもしれないということも。
日本では信じられないような事態「残飯再利用」は、中国の飲食店および学校食堂で行われていて、金儲け主義と監督体制の甘さが生んだこうした事態は、中国の食品業界が、いかに深刻な腐敗に陥っているかを浮き彫りにしている。
大手ファストフードチェーン「楊銘宇黄燜鶏米飯」
最近、中国のSNSでトレンド入りする話題でも、「フード配達員が絶対に食べない料理リスト」のトップに載るのは同国発のファストフードチェーン「楊銘宇黄燜鶏米飯(ヨウメイウファンメンジーミイファン)」だと言う。なお、この「楊銘宇黄燜鶏米飯」は、中国のほか、ヨーロッパ、アメリカ、日本などにも進出しており、全世界で数千店を展開していて、中国の同ブランド加盟店では過去にも「集団食中毒」や「煮込みネズミまるごと一匹が食事に混入」など食品安全の問題を相次いで指摘されてきた。

最近では、中国メディア「新京報」記者による潜入調査で、複数の加盟店の衝撃的な厨房事情が暴かれ、中国国内で大きな波紋を広げている。なんとそれが、客の食べ残した料理を回収して洗浄した後、再加工して再度販売していたと言う事実だ。
ほかにも、賞味期限切れの食材や腐った食材の使用、新鮮でなくなった黒くなった肉に着色料を加えて新鮮なものに見せかけたり、腐ったキノコを何度も洗って使うなどの実態が確認された。
潜入した記者は、「午前11時前には、食事のデリバリーを注文しないほうがいい。というのは、早い時間に頼むと、前日の残り物が届くからだ」と警鐘を鳴らしている。
こうした現象について、中国問題に詳しい時事評論家の秦鵬氏は、「中国経済の悪化に伴い、生き残りをかけた企業間の競争が以前より激化して、コスト削減のために不正行為が横行している」と指摘している。

食の安全は「運」任せでいいのか?
中国では、食品安全法が存在するものの、監視体制は依然として脆弱だ。企業によるコスト削減のための悪質な手口と、政府との癒着が絡み合い、消費者は、常にリスクにさらされている。
今回暴かれた「楊銘宇黄燜鶏米飯」の問題は氷山の一角にすぎない。消費者には見えない厨房で、何が行われているのかを知る術はない。
食品業界の腐敗を放置すれば、明日の食卓には何が並ぶかわからない。
「安全な食事」を手に入れるには、企業だけでなく監督機関の覚醒と厳格な取り締まり、そして道徳の向上が不可欠だ。さもなければ、中国では食べることそのものが「命がけのギャンブル」であり続けることだろう。

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