失業率が過去最高であり、すでに最悪といわれる中国。以前まで公表されていた失業率の数字は、現在では当局によって「非公開」となっている。
とくに若い世代では、実質的に「2人に1人が無職」といわれており、大学生も「卒業すれば失業」という厳しい現実にさらされている。
そのようななか、中国では、多くの若者が生活のために長時間のライブ配信に身を投じた結果、心身を擦り減らされて急死する悲劇が時折報道されている。
今月10日、河南省の大学三年生の李昊(仮名)さんは、徹夜ででゲーム実況を行った約9時間後に、急死した。インターンシップ先企業から賃貸アパートに帰宅した後だった。
李さんの大学では「6か月間、職場経験を積むインターンシップ」が卒業の要件となっていた。
そこで、李さんはネットを通じてインターンシップ先を見つけ、そこで「ゲーム実況」をする仕事をはじめた。プレイヤーがコンピュータゲームをプレイして、それを実況をしながら配信する仕事である。
毎月のライブ配信時間は240時間以上で、1日の平均の仕事時間は9時間前後。毎月26日以上のライブ配信を行い、毎月15本のショートムービーをアップロードする、などが李さんの契約内容となっていた。
もとは日中にライブ配信を行っていた李さんだったが、今月5日以降に夜間の配信をはじめた。その日から、夜を徹しての配信を5夜連続して行った後、急死した。直接の死因は明らかにされていないが、5夜連続の徹夜による過労が関係しているとみられる。
李さんが死亡した後、インターンシップ先企業である河南琴意文化传媒有限公司は「李さんとの間には雇用関係もインターンシップ関係もなかった。李さんは仕事を終えた後、自身が借りたアパートの部屋で死亡しており、会社とは関係ない」として、会社には責任がないことを強調している。
会社からは、李さんの死亡に対する賠償や補償ではなく、あくまでも「恩給」として5000元(約10万円)が支払われただけだった。
李さんの「抖音(中国版のTikTok)」アカウントからも、彼が10月15日~11月10日までの25日間に計89回のライブ配信を行っていたことが確認できる。
過去2年の間、中国のライブ配信業界では、配信者が夜を徹しての長時間配信を重ねた結果、急死するケースが後を絶たない。配信者の年齢は若く、20代から30代が多い。
長期にわたる睡眠不足が身体に大きなダメージを与えることは、医学上の常識である。なかでも徹夜作業などによって過度の睡眠不足が続いた場合は、心臓発作や脳卒中、あるいは突然死に至るなど、致命的な事態を招くリスクは高くなる。
この問題について、日本在住の中国社会問題学者で中国民主化活動家である夏一凡氏は、以下のように指摘する。
「中国では、一つの職を千人以上が奪い合う報道が、もはや日常茶飯事となっている。異常に高い失業率のなか、中国人は当面の生活のため、たとえそれが死を招くほど心身を消耗する仕事だとわかっていても、それを受け入れるしかない」
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