プレミアム報道 緊張激化から1年、米中トップが11月に会談。中国共産党は約束を守れるか。

【プレミアム報道】「自由と全体主義の対決」専門家が米中会談を振り返る(下)

2023/12/30 更新: 2024/01/03

口だけは達者

米中会談は実質的な成果物に乏しかったと見るアナリストもいる。

バイデン大統領は「最も前向きで有意義な」話し合いと称したが、両者とも相手を自分の側に引き込むことには成功していないようだ。

会談の大部分を占めたのは台湾問題だった。中国側が台湾奪取の意志を「止められない」と宣言していることから、依然として最大の火種となっている。APEC会合の直後、中国の台湾周辺での軍事活動が再燃し、11月19日には航空機と軍艦が「戦闘準備哨戒」を実施し、敏感な台湾海峡の中央線を横断した。

人権問題が議題に上がろうと、中国国内で進行中の虐待を暴露しようとする人々は、米国内で自分が中共政権の代理人から狙われていることに気づかされる。

活動家らは、黒や赤の服を着て共産党の旗を振る党の支持者らに取り囲まれる。サンフランシスコ空港に抗議に向かう途中、中国の反体制活動家らは殴る蹴るなどされ、額に怪我を負い、目を腫らし、唇から出血した。

キース・クラック元米国務次官(経済成長・エネルギー・環境担当)は、「中国共産党はいつも口では良いことを言うが、行動となると話は別だ」とエポックタイムズに語った。「習近平のアグレッシブな戦術がすぐに減速することを示すものは何もない」

シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」のシニアフェロー、デレク・シザーズ氏も同様に否定的な見方を示した。

2023年3月31日、中国東北部の遼寧省瀋陽市郊外にある荒れ果てた別荘群の航空写真。中国の不動産業界は記録的な不振に陥っている。(JADE GAO/AFP via Getty Images)

「(中共は)口だけは達者だ」とエポックタイムズに語った。

習近平の訪米は、中共政権にとってプロパガンダの機会となった。外務省のウェブサイトは、中国人グループが代表団の到着を「沿道に列をなして温かく歓迎した」と記したが、その多くが中国領事館から報酬を得ていたことは省略された。

「この会議はAPECの一部であるべきだったが、習近平はそれを望んでいない。習近平は世界が自分に注目することを望んでいる」とシザーズ氏は述べた。

習近平がAPEC首脳の晩餐会を欠席し、代わりに米国の企業家たちとの1席4万ドルの豪華な晩餐会を催したことから、中共が米国の資金を欲しがっていることは明らかだった。

アップルのティム・クック氏など、出席した著名人はすでに中国に進出している。現在、多くの米国企業は、製造能力の一部をより好意的な国に移す代替案を練っている。

2023年4月18日、インドのムンバイでアップル初の直営店がオープンし、客を迎えるアップルの従業員(緑色の服)。アップルは重要な販売市場として、また中国に代わる製造拠点として、南アジアの国への注力を強めている。(PUNIT PARANJPE/AFP via Getty Images)

トランプ政権で中国政策顧問を務めたマイルズ・ユー氏は、「彼らはそこにいなければならなかった。来なければ、それは非常に危険な賭けになるからだ」と述べた。注目すべきは、その晩餐会にいなかった人々だという。メタ社のマーク・ザッカーバーグCEOはその一人だ。通常ならこの手の会合の常連だが、彼のフェイスブックアプリは中国で禁止されている。

パンデミック以来、外国人投資家は中国からの撤退を加速させている。国家安全保障上の規制強化、経済の透明性の欠如、敵対的な政治情勢が中国の魅力を弱めているからだ。

ユー氏は「人々が中国で儲けたくないのではない。中国が投資を絶対に不可能にしている」とし、「中国は、とりわけ習近平は、負債に苦しんでいる」と述べた。

ゾンビのような関与政策の終焉

中国問題の批評家らは、バイデン政権の会談の成果に満足していない。

中国共産党に関する下院特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー下院議員(ウィスコンシン州選出)は、エポックタイムズに次のように語った。

「この1年間、米国の外交政策の焦点は、この協議を実現させることだった。しかし、これまでのところ我々が目にしているのは、今後の協議の約束と、D.C.の動物園に新たなパンダが送られることだけだ。実に残念だ」

2023年11月17日、サンフランシスコで開催されたアジア太平洋経済協力会議の最終日、経済首脳会議に臨む中国共産党トップ。(BRENDAN SMIALOWSKI/AFP via Getty Images)

「人権侵害に対する中国政府高官への制裁、台湾へのかつてない圧力に対する反発、スパイ気球の透明性、コロナ起源の透明性などに関して、私たちは手綱を緩めている。この会談を実現させるには大きな代償が必要だったので、もっと多くの結果がほしかった」

そしてギャラガー氏は、APECを「ゾンビのような関与政策の終焉」にしたかったと語った。

APECの期間中、彼はエポックタイムズに対し、中国との関わりを追求することは 「危険」であり「甘い」と考えていると語っていた。

「逆説的だが、中国共産党はより攻撃的になるだろう。なぜなら、マルクス・レーニン主義政権は、宥和的に接するほど攻撃的になるからだ」

作家で中国専門家のゴードン・チャン氏も同じ考えだという。

彼は、フェンタニル問題に関する中共政権の協力と引き換えに、米国が中国の法医学研究所を人権制裁リストから外したことに不満を表明した。

「中国人は冷酷な現実主義者だ。いかなる譲歩やトレードオフも恐怖の表れと見なされ、政権に間違ったインセンティブを与えることになる」

それでもなお、チャン氏はバイデン大統領が中共政権のトップを叱責したことに拍手を送った。

「バイデン大統領は『私はあなたを恐れていない。あなたは独裁者だ。私はあなたを独裁者と呼ぶ』と言って切り捨てた。素晴らしいことだと思う。政府にはもっとそういうことが必要だ」

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。
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