中国西部の甘粛省臨夏回族自治州積石山県で18日深夜、マグニチュード(M)6.2級の地震が発生し以来、現地では、余震が数百回と続いている。21日の明け方には、再度マグニチュード(M)4.1級の地震が起きている。
被災者を早々に「見捨てた」当局
地震などの大災害が発生した後、人命救助のタイムリミットは3日間つまり「72時間」といわれている。この「72時間」は、もちろん中国でも知られており、ゴールデンタイム(黄金時間)と呼ばれている。
しかし、その「72時間」は、天候が温暖で安定しており、官民あげて救助活動に全力を投入できるなど各種の条件が整っている場合でのことだ。
今回の地震の被災地である甘粛省および青海省は今、零下10数度の酷寒のなかにある。しかも地震発生が深夜であったため、防寒具も身につけず屋外に飛び出した人も多い。巨大な冷凍庫のような環境では「72時間」の猶予があることは期待できない。だからこそ、人命救助は一刻も早く行われなければならないのだ。
ところが被災地である甘粛省の当局は、地震発生後、わずか2日にして外部からの民間救援の申し出を拒否。また地震発生の15時間後に、なぜか当局は「救援作業の終了」を発表した。
あろうことか、他省からの救援隊を被災地へ入れさせず、そのまま返したのだ。
被災地の実状を隠蔽するのが目的
当局の人命を完全に無視する判断をめぐり、ネット上では「中共は、またしても災害の実態を隠蔽しようとしているのか」と疑う声が広がっている。
中国国営中央テレビ(CCTV)によると、この地震で死者は少なくとも134人に上るという。しかし、中国共産党当局は、災害が起きるたびに一貫して被害情報の隠蔽を行っているため、今回の地震による実際の死傷者数も、公式発表をはるか上回る可能性がある。
今年7月末から8月にかけて、河北省を中心に大規模な洪水が発生し、同省の涿州市が住民もろとも完全に水没するなど甚大な被害が出た。
この洪水は、習近平肝入りの未来都市・雄安新区を水害から守るために、意図的に涿州を水没させるという、完全に「人為的な災害」であった。しかし中共当局は今でも、これを豪雨による自然災害であるとしている。
この時にも、被災地の悲惨な状況を隠蔽するため、外部から駆けつけた民間の救助隊を現地へ入れず、地元政府の役人が追い返している。有志の救助隊は、悔し涙を流しながら、目の前の被災地を後にするしかなかった。
そして今回、甘粛省の地震の被災地は通信が断たれて孤立し、一部の地域では水道や電気まで使えなくなり、町は廃墟と化した。
現地では、夜間の最低気温が零下10数度まで冷え込んでいる。しかし、緊急を要する被災者への救援はあまりにも遅い。かろうじて生き残った被災地の人々は、焚火を囲んでわずかな暖をとり、ビニールシートで作った簡易テントのなかでの避難生活を余儀なくされている。
12月20日にネットに流れた被災地(震源から約15キロの大河家鎮)を映した動画のなかには、いたるところで家屋が倒壊した光景が見られた。この街の被災者は「村では多くの家が倒壊した。私たち家族は、今は車の中で暮らしている」と話した。
車がある住民は、まだ条件が良いのかもしれない。ほとんどの被災者は、家屋やわずかな家財も失い、着の身着のままで酷寒のなかに放り出されたのだ。
このような極限状況では、地震を生き残った人たちでさえ、早急に救援の手が差し伸べられなければ凍死や餓死、あるいは病死することは免れない。
「寄付するなら、物資より金をくれ」
こうした災害に乗じて、財政難にあえぐ中国の地方当局は、往々にして「ひと儲け」しようとする。
今回も地震の後、被災地の危機管理当局は「寄付するなら、物資よりお金を送ってほしい」と中国メディア「大河財立方」に対して呼び掛けた。
これに対して、ネット上では「金で寒さをしのげるか!」などのバッシングが殺到している。
地震の後、確かに中国企業や有名人による寄付が寄せられている。テンセントは2千万元(約4億円)。インフルエンサーの「小楊哥」は1200万元。このほか、1千万元、5百万元、3百万元などと寄付をする著名人がいるなかで、災害救助の主役であるはずの「中国紅十字(赤十字)基金会」が発表した緊急援助金は、わずか2百万元(約4千万円)だった。
「汚職は数億元単位だというのに(中国赤十字は)災害救援には200万元しか出さないのか」。このあまりに少ない金額に、落胆する人は多い。
2008年に起きた四川大震災(汶川大地震)では、国内外から760億元に上る寄付金が寄せられた。
しかし、後に「清華大学公共管理学院」の鄧国勝教授のチームが行った「汶川地震の寄付金の流れ」に関する研究報告書によると、全国から寄せられた652億元のうち、約8割が「政府の口座」に入っており、自身が寄付したお金の流れを把握している寄付者は、全体のうちわずか4.7%であったことがわかった。
つまり中国では、災害時に寄せられる寄付金の流れが非常に不透明であり、本当に被災者や被災地のために使われるとは、とても考えられないのだ。
今回、中国中央テレビ(CCTV)も、国民に対して「中国赤十字基金会」への寄付を呼びかけている。
しかし「中国赤十字基金会」の信用度は、すでに崩壊している。そのため、確実に「被災者の手に届いてほしい」という思いから、寄付するにあたっては「赤十字基金会」以外の慈善団体を選ぶ市民も多い。
なお「中国紅十字(赤十字)基金会」は、中共政府の国務院が主導する半官半民の慈善団体である。
戦時において、敵味方の区別なく傷病兵を治療する理念を掲げ、中立かつ人道的な活動を行う国際機関「赤十字国際委員会(ICRC)」(1863年設立)とは、名称は似ているが何の関係もない。
実際「中国赤十字基金会」は腐敗しきっており、信頼性も乏しく、財務管理や会計に透明性がないとされている。
寄付金の受け付けは「政府の口座」
地震の後、甘粛省当局は被災地のために各界から義援金を募ったが、当局が公表した寄付金の受け付け先は、なんと「甘粛省財政庁の口座」であることがわかった。つまり、地震関連の寄付金は「地元政府の口座に、ひとまず入れよ」というのだ。
当然ながら、市民から「それは、おかしくないか」といった困惑の声が上がっている。まずは、地元政府に着服されるに決まっているではないか。
時事評論家の王赫氏は、NTD新唐人テレビの取材に対し、次のように分析した。
「これはつまり、中共の赤十字基金会の信用が完全に失墜していることを意味する。もう誰も、赤十字基金会に寄付したいと思わない」
「中国には、独自に慈善事業関係の法律がある、それによれば、慈善団体は独立した民間機構である。政府は、それを監督管理する責任を担う。しかし今では、監督する側の政府が自ら寄付を募っている。そうすると、誰が寄付金の流れを監督するというのか。中共政権は、ただでさえ腐敗がひどい。毎年、あれほど多くの汚職官僚が逮捕されているのだ」
腐敗の本家本元である中共政府が、いくら寄付金を募っても、それが本当に被災者のもとへ届き、被災地のために使われるとは、もはや誰も思わない。それは中共政府の「子飼い」である「中国赤十字」についても同様である。
今も、被災地である甘粛省や青海省の人々は、零下10数度の酷寒のなか、明日の命も危うい状況におかれている。
それを救助することなく、早々に「見捨てる」判断をした中共政府に対して、全ての中国の民衆が覚醒すべき時は、すでに到来していると言ってもよい。
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