【プレミアム報道】誤った気温データに基づく「気候変動」に数兆ドルが費やされる=気候専門家

2024/02/28 更新: 2024/02/28

国連は、「住みやすい地球」を維持するために、産業革命(18世紀後半)前の水準から1.5℃以上地球を温暖にしてはならないと警告している。

NASA(米国航空宇宙局)によれば、これを維持できなければ、干ばつや気象災害の増加、熱関連の病気や死亡の増加、食料の減少や貧困の増加など、大惨事につながる可能性があるという。

しかし一部の気候科学者の間では、気温の測定値が間違っており、存在しない問題に基づいて何兆ドルもの資金が注ぎ込まれていると訴える声が高まっている。

2016年、194の加盟国と欧州連合(EU)は、迫り来る苦難を回避し、地球の気温上昇を抑えるために、「世界の温室効果ガス排出量を大幅に削減する」ことを目的とした法的拘束力のある国連パリ協定に署名した。合意後、気候関連プロジェクトへの世界的な支出は指数関数的に増加した。

2021 ~22 年の間に、億世界の納税者は、毎年平均 1 兆3千億ドル(約195兆円)をこのようなプロジェクトに費やしたと、非営利の諮問グループである Climate Policy Initiative は述べている。この額は、2011年と2012年の年間3640億ドル(約54兆8580億円)から2019年と2020年では年間6530億ドル(約98兆4253億円)と約2倍にも跳ね上がったことが報告書で明らかになった。

膨大な資金が注ぎ込まれたにもかかわらず、「2023年は観測史上最も暑い年だった」と米国海洋大気庁(NOAA)は報告した。NOAAの設置した気温観測所では、2023年の地球平均陸地と海洋表面温度の両方で産業革命前の平均を1.35℃上回っていた。

NOAAのチーフサイエンティストであるサラ・カプニック氏は「2023年は、174年に亘るNOAAの気候記録の中で最も暖かい年だっただけでなく、群を抜いて暖かかった」

「地球の温暖化は気候変動の影響に備える必要があるということであり、実際、その影響は異常気象がより頻繁かつ深刻化するという形で起きている」と述べている。

一方で、気候科学者の間では、「気温の測定値は間違っており、存在しない問題に基づいて何兆ドルもの資金が注ぎ込まれている」と訴える声が高まっている。

気象学者で、NOAAの気候観測所調査研究のディレクターであるアンソニー・ワッツ氏によると、NOAAの気温観測所の90%以上が熱バイアスを持っているという。

ある気象学者は、NOAAの気温観測所の96%が、換気扇の隣や猛暑の屋上などに設置されていることを発見している。「NOAAはこのバイアスを減らそうとしているが、圧倒的な数字であるため彼らの方法はうまくいかない」とワッツ氏はエポックタイムズに語った。

「残された数少ない観測所は、町の外れの畑にあったり、100年前からある農業研究観測所に置かれていたりしているため測定値に偏りが見られない。しかし、それらのデータはその他のはるかに大きな偏ったデータセットにより完全に圧倒されているため、温度調整などできるわけがない」

気象学者のロイ・スペンサー氏も同意見だ

「都市のヒートアイランド現象は時間の経過とともに増加しており、その影響を地表温度計のデータはいまだに受けている」とスペンサー氏は語った。

さらに、エネルギー政策を変更するために使われたコンピューター上の気候モデルは、間違っているとも述べた。

また、認定コンサルティング気象学者のジョン・シューチャック中佐は、気温測定の問題は熱バイアスだけにとどまらないと述べた。

シューチャック氏は、NOAAがUSHCN(米国歴史気候学ネットワーク)の気温データを調整しているという報告を目にすることが多いため、自分でもデータをダウンロードして分析することにしたという。

中佐は、「他の人の発見を確認することができた。全体として、過去の気温(データ)がより低温に、現在の気温がより温暖化傾向になっているのは明らかだ」と述べ、「NOAAとNASAは現在の温暖化傾向をより顕著にするために、過去の気温がより寒くなるようデータ調整をしていた」と主張している。

温度測定値の誤り

環境保護庁によると、「都市のヒートアイランド」は、太陽の熱を吸収して放射する建物、道路、その他の形態のインフラが多い地域で、より高い温度を引き起こす現象である。同庁は、「都市部の日中の気温は郊外の気温よりも華氏約1~7度高く、夜間の気温は華氏約2~5度高い」と推定し、NOAAは、すべての気温観測所をコンクリート、アスファルト、建物などの要素から少なくとも100フィート(30.48メートル)離して配置することを要求している。

2009年3月にワッツ氏が発表した報告書の中で、NOAAの観測所の89%が、これらから100フィート以内に位置しているため熱バイアスの問題を抱えており、観測所の多くが空港の滑走路のそばにあることを示した。

「多くの観測所が、エアコンの換気扇の隣、アスファルトの駐車場や道路に囲まれた場所、猛暑の屋上、熱を吸収して放射する歩道や建物の近くに設置されていることが明らかになった」とワッツ氏は語っており、68か所の観測所が設置されている廃水処理場は、廃水の消化過程で周辺地域よりも温度が高くなっているとも述べている。

報告書では、「米国の気温記録の信頼性は低いが、それでも『世界最高』と見なされているため、世界の気温データベースは危険にさらされており信頼できない」と結論付けている。

この報告を受けて、米国監察総監室(OIG)と政府会計検査院はワッツ氏の調査結果を確認し、「NOAAに、問題に対処するための措置を講じている」と述べた。

OIGの報告書には、NOAAが「観測所の移転や不適切な立地、機器の変更などが理由でバイアスが遺されているため、USHCNデータには問題があること」を認めたと書かれている。「このような観測後のデータ調整の必要性をなくすために、すべての専門家が、気候報告システムの改善と最新化が必要だと考えている」とも。

NOAAの対応に疑問を抱き、ワッツ氏は2022年4月と2022年5月に彼のチームを引き連れ、2009年に調査した同じ温度観測所の多くを再訪した。そして、2022年7月27日に新しい研究の調査結果を発表した。それで分かったことは、NOAAの温度観測所の約96%が、依然として基準を満たしていないことだった。

ワッツ氏によれば、米国やおそらく世界の地表温度ネットワークには、主に2つのバイアスがある。最大のバイアスはヒートアイランド現象だ。何が起こっているかというと、熱は表面に保持され夜間に空気中に放出されるため、都市部の夜間の気温は、郊外にある町や畑ほど低くならない。年ごとに、温度計が設置された場所の周りに多くのインフラが構築され、夜になるとアスファルトやコンクリートが吸収した熱が放出され、温度を押し上げている。熱バイアスを被っていない気候観測所が示す温暖化度は、他の半分以下である。

この傾向は、どの気候データからも見ることができる。最低気温の上昇傾向が大きく、最高気温はほぼ横ばいである。気候変動で用いられるのは平均気温であり、最低気温の上昇が問題となる。NOAAもNASAもヒートアイランド影響をデータ調整によって説明できると主張しているが、地上局の96%がこの影響を被っているため、バイアスを克服することは不可能だとも述べている。

一過性の温度

ワッツ氏が特定したバイアスの二つ目は、読み取り値を間違える可能性のある一過性の温度変化である。ワッツ氏によると、NOAAは1980年代半ばから後半にかけ、水銀温度計から数秒で温度を測定できる電子温度計に切り替え始め、現在、そのネットワークの大部分が電子温度計を使っている。

しかし電子温度計はその日の最高気温と最低気温を記録しているだけで、風の影響によって偏っている可能性がある。
突然、東から風が吹いて、風は駐車場を横切り輻射熱を拾う。温度計は1~2秒でそれに応答する。突風によって高温を報告するが、必ずしもその日の天気を表しているわけではない。同じことが夜にも起こり得る。

ワッツ氏によれば、一過性の温度はよく知られた問題であり、英国気象庁と豪州気象局は、ハイテクネットワークを放棄し、より正確な測定値を得るために設備を刷新しているという。

「これは、NOAAが十分に対処できていない問題だ」とワッツ氏は語った。「要するに、協同組合オブザーバー・ネットワーク、COOPネットワークは、文字通り、警察署、消防署、森林局などの公的機関が一緒になった寄せ集めのボランティアの集まりで、運用レベルで厳密に科学的に管理されたネットワークではないのだ」

NOAA自身も、ウェブサイトで、温度測定値は正確ではなく、温度に誤差の余地を残していると述べている。

測定した温度の調整

NOAAは過去の気温データも調整している。「通常、データの間違いを修正する場合、上向き下向きの調整があり、よりランダムな結果が期待されるが、NOAAは過去の温度データを低くし、現在のデータをより暖かくするということを体系的に行っている」とシューチャック中佐は述べている。

その一例がアイスランドのレイキャビク観測所であり、1936年2月の記録は、NASAゴダード宇宙科学研究所の「地表面温度解析(GISTEMP)」によると、月の平均気温はマイナス0.2℃、年平均気温は5.78℃であった。オリジナルのGISTEMP月次データはv2(バージョン2)と呼ばれていた。

2019年、NOAAはソフトウェアの更新版GISTEMP v4をリリースした。それによると、レイキャビク観測所の1936年2月の平均気温はマイナス1.02℃、年平均気温は5.01℃となっている。これは、ソフトウェア更新後、月で0.82℃、年で0.77℃下方修正されたことになる。

GISTEMP v2の月次データとv4の月次データを比較すると、全体的に過去に比べ冷え込んでいることがわかる。

「信じられないことに、データの調整幅は華氏2度を超えており、現在の気温の傾向からすると大き過ぎる」とシューチャックった中佐は語る。

「NOAAはまた、以前調整したデータを定期的に遡って再調整するという非常に変わったデータ調整のやり方を採用している。このため、真実のデータを見つけるのは難しく、砂が移動しているようにしか見えない」

エポックタイムズが過去のデータの調整についてコメントを求めたところ、NOAAの広報担当官であるジョン・ベイトマン氏は、NOAAの国立環境情報センター(NCEI)の気候専門家の1人に連絡を取った。

回答によれば、「NCEIは、観測所の位置、温度計測器、観測方法、そして立地条件の歴史的な変化を考慮した補正を適用している。NCEIのアプローチは、査読を受けた文献に文書化されている。全国規模において、補正されたデータは米国気候基準ネットワーク(USCRN)とよく一致している」

NASAは、過去のデータの調整についてエポックタイムズのコメント要請に応じなかった。

衛星の読み取り値

変動する地球の表面温度をより正確に読み取るために、スペンサー氏と気候学者のジョン・クリスティ氏は、人工衛星から観測されたマイクロ波データを使って地球の気温データセットを創り出した。

彼らは1989年にプロジェクトを開始し、1979年までさかのぼってデータを分析した。

衛星データによると、1979年以降、地球の気温は10年ごとに0.14℃ずつ上昇している。また、2023年は直線的な温暖化傾向により、記録上最も暑い年となったが、一般の人々がパニックに陥る原因にはならない程度のものだったと彼らは語った。

スペンサー氏は、「2023年は過去100年間で最も暖かったが、誰もが感じるほどのものではなかった。それに、重要なことは1年で見る変化ではなく、何十年という長期的な傾向である」と語っている。

同氏は、「1979年以降の45年間のデータに2023年のデータを追加しても、10年ごとに0.14°C上昇するという全体的な傾向は変わらない」と述べ、また、「1970年代以降、人工衛星も温度計も温暖化の傾向を示しているが、この傾向は、気候モデルが予測するよりもかなり小さい。こうした気候モデルが、エネルギー政策の変更やCO2排出削減を主張するために使われている」

シューチャック中佐は、衛星ベースの気温データの方がより正確であり、NOAAの地表ベースの温暖化傾向よりもはるかに小さい温暖化傾向を示していることに同意している。「衛星データは、従来の地表温度観測所が内包する位置の問題がなく、NOAAによるさまざまな形式のデータ編集活動にも悩まされないため、地球の気温変化のより良い尺度となる。また、衛星の測定値は、大気データのゴールドスタンダードであるラジオゾンデ(気象観測用気球)データに照らして定期的に較正されている」と彼は語った。

スペンサー氏は  1月24日、気候モデルの不正確さを指摘する報告書を発表した。それによれば、過去半世紀にわたって気候システムがもたらした温暖化は、コンピューター上の気候モデルが示す温暖化よりも平均して43%少なかった。「メディアの報道や環境団体のプレスリリースに反して、地球温暖化は炭素ベースの規制を正当化するものではない」と述べている。

スペンサー氏によると、一般の人々はモデリングが「かなり正確」であると信じ込まされているが、モデリングには多くの変数が追加され、その結果、推定する気温が高くなっている。「現在の気候危機は、過去100年以上にわたる気候システムが示す実際の観測結果ではなく、最も温暖化をもたらす気候モデルに依存した結果である」と彼は書いている。

NASAが地上の測定値を支持

NASAはウェブサイトで、地上温度計は衛星による測定よりも正確であると主張している。「人工衛星は地球の気温に関する貴重な情報を提供するが、地上温度計は人々が住んでいる場所の温度を直接測定するため、より信頼性が高いと考えられている」

「衛星データでは、輝度の測定値を温度測定値に変換するために複雑な処理とモデリングが必要となる。一方、地上温度計はより直接的で正確な温度情報のソースになる」とNASAは述べている。

スペンサー氏は、すぐにNASAの主張の欠陥を指摘した。

「地表温度計は地球のごく一部しかカバーしていないが、人工衛星は地球全体をほぼカバーしている」と彼は語った。

NASAは、『ジグソーパズルのように』16基の衛星をつなぎ合わせなければならないと不満を述べているが、これは苦しい言い逃れというものだ。なぜなら、地表温度の記録は、何千とは言わないまでも何百もの観測所のデータをつなぎ合わしたものであり、増大するヒートアイランド現象の影響を受けずに、連続した記録を提供しているものはほとんどないからだ。

「また、人工衛星が測定するのは大気の深部だけで、人々が生活する地表は測定できないという不満があるようだ。… もしそうなら、なぜ、気候研究において深海の水温測定に価値があると宣伝されているのだろうか? これらの測定はどれも重要であり、それぞれのシステムには長所と短所がある。この衛星データセットは、世界中の気候研究者から広く利用されているものだ」

人工衛星は温度を直接測定するのではなく、地球の大気の明るさを測っているため不正確であるというNASAの批判について、スペンサー氏は「厳密に言えば本当だが、表面温度計は電子式であるため、技術的には電気抵抗を測定しているというわけだ。

衛星による測定は、最高品質の実験室標準のプラチナ抵抗温度計で較正されている。もしNASAが、遠隔観測衛星のデータに欠陥があると言うのなら、同じ欠陥を持つ無数の地球衛星プログラムを停止させた方がいい」

シューチャック中佐は、衛星のデータが地表温度の測定値より劣っているというNASAの主張を「ナンセンス」と呼んだ。「UAH( University of Alabama in Huntsville)衛星データは、真にグローバルなデータソースであり、地球の大気全体、特に対流圏下部の温度を効果的に測定し、実際、そこで天気が作られている。唯一の制限は、衛星データが1979年からしか始まっていないことだ」

ワッツ氏は、都市のヒートアイランド現象とは無関係の草原の地表観測所のデータについて、気温の測定値はスペンサー氏の衛星データとほぼ一致していたという。

なぜNOAAは、ヒートアイランド現象の影響のない場所で温度観測をしないのかという質問に対して、スペンサー氏は「彼らの目標は、最も正確で長期的な気温記録を取ることではなく、手に入る限りの温度データを使うことのようだ。それは、議会が提供する資金を利用してプログラムを構築し、人々の雇用を維持するためには良いことだが...」と答えた。

気候政策イニシアチブによると、このイニシアチブに費やされている金額は、年間1兆3千億ドル(約195兆円)にもなるが、それでも十分ではないという。同グループは、「平均的なシナリオによれば、2030年までに必要とされる年間の気候資金は、8兆1千億ドル(約1214兆円)から9兆ドル(約1349兆円)へと増加する。その後、2031~50年にかけて、毎年10兆ドル(約1499兆円)以上に跳ね上がる」と述べている。

つまり、気候変動がもたらす最悪の影響を回避するためには、気候資金を少なくとも毎年5倍に、しかもできるだけ早く増やさなければならないということのようだ。

この組織は、ロックフェラー財団、WWF(世界経済フォーラム)、ブルームバーグ・フィランソロピーズなどの資金提供者をウェブサイトに掲載している。そのパートナーには、ブラックロック、2つの国連気候グループ、いくつかの大手グローバル銀行、および気候とエネルギーに関する世界市長誓約などの政府グループが含まれている。

エポックタイムズ記者。エネルギー政策や政治問題を中心にさまざまなトピックを担当。医療業界における検閲や政府との癒着に関する取材も行う。ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせる前は、米空軍で軍用機J-STARSの空挺作戦技術者として活躍。
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