米国務省は22日、世界各国の人権状況に関する2023年版の年次報告書を発表した。中国共産党(中共)政権による法輪功学習者やウイグル人への人権弾圧を非難した。さらにストーカー行為や中国海外警察署を設置して、異論を唱える人権活動家や少数民族らへ越境弾圧を行っていると指摘した。
報告書によると、政権が標的にする集団には、迫害されている少数民族、反体制派、海外にいる中国人留学生、精神的な信仰の信奉者などが含まれる。
中共の国境を超えた弾圧は、スペインの人権団体が、中国公安部の組織が管理する中国海外警察署が数十か国に設置されていると明らかにしたことで、世界的に注目されるようになった。
米司法省は昨年4月、ニューヨークでこうした海外警察署を運営していた疑いで、中国系米国人の男2人を逮捕した。2人は中国伝統気功「法輪功」への対抗デモを組織したほか、民主活動家につきまとい、中共の代理として活動していたとされる。
昨年5月には、香港「逃亡犯条例」に反対する集会で民主活動家の写真や動画を撮影し中共に提供した罪で、中国国籍の梁利堂(音訳、Litang Liang)被告が起訴されている。
ブリンケン国務長官は報告書発表の記者会見で、報告書は中共が「国境を越えて虐待を拡大していることを示している」と指摘。ウイグル人を「ジェノサイドと人道に対する罪の犠牲者」と呼び、「報告書は人類の最も暗い瞬間を彷彿とさせる残虐行為を記録している」と述べた。同氏は24日から中国を訪問する予定だ。
中共の幹部や警察官は、しばしば華僑社会に組み込まれたフロントグループの援助を通じて、国境を越えた弾圧活動に直接参与してきた。
梁利堂被告もその一人で、ボストンの平和統一促進会の会長を務めた。促進会は、ボストンの華僑留学生と協力して「1000人以上の愛国者を組織」し、香港や台湾、チベット人への越境弾圧を行っていたという。
国務省の報告書によれば、中共と関わりの深い留学生組織「中国学生学者連合会」も反体制的な意見を抑圧し、民主派学生を追跡して報告する「海外監視機構」としての役割を果たしている。
報告書はまた、「政治的な動機から」他国に圧力をかけ、「特定の個人やグループに対して不利な措置を取らせる」ことを目的とした同政権の妨害活動についても言及しているが、詳細は書かれていない。
エポックタイムズは、中共の高官から入手した文書などから、中共が米国の地方高官や劇場に政治的・経済的圧力をかけ、ニューヨークを拠点とする神韻芸術団の公演を妨害していることを明らかにした。神韻芸術団は中国の伝統文化を芸術的に描き、中共の人権侵害に光を当てる作品も上演している。
24年以上、迫害の対象となっている法輪功学習者については、中共が「再教育」といった名の下で信仰を放棄させる取り組みを行っているとも指摘。事例として、2023年4月に8年の不当な懲役刑を受けた法輪功学習者の周徳勇氏をあげた。
「真・善・忍」の価値観を教える法輪功の学習者は、信仰を理由に逮捕され、強制労働や臓器狩りの犠牲者となっている。
報告書は、中共主導の臓器狩りについても取り上げ、臓器摘出に関与した元中国人医師である鄭治氏へのエポックタイムズのインタビューを引用した。
鄭治氏は、中国軍病院研修医の時代に軍事命令を受け、武装した兵士が警護するバンの中で18歳に満たない青年の臓器狩りに強制的に参与させられたと語った。同氏によれば、臓器を摘出される際、少年はまだ生きていたという。
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