アメリカ大統領選挙を控える2024年11月おいて、トランプ前大統領が中国製品への高関税導入を公約する中、バイデン政権は変わらず中国に対する強硬姿勢を維持する方針である。「ポリティコ」誌の分析によると、バイデン政権には、もう中国製品に対する関税強化以外の選択肢はなく、重要州での敗北や民主党議席の喪失リスクに直面しているという。
■トランプ政権時代の関税導入
トランプ前大統領は2018年の任期中に、中国からの輸入品に対して3千億ドル以上の高関税を導入した。これにより、国内の一部製造業は恩恵を受けたが、輸入業者、小売業、消費者には大きな負担となった。
2020年の大統領選挙では、ジョー・バイデン候補がトランプ政権の関税政策を見直し、削減または撤廃することを約束した。しかし2021年の大統領就任後、バイデン政権はトランプ政権の政策を強化し、継続した。
■2021年:中国に対する関税削減の計画が頓挫
バイデン氏が2021年に就任した際、ワシントンの貿易専門家は中国への大規模な関税を撤廃または段階的に削減することを期待していた。バイデン政権はジェイク・サリバン国家安全保障顧問を通じて関税削減案を模索し、クリーンエネルギーや半導体などの先端技術産業に焦点を当てた関税政策を採用しようとしていた。
しかし、米国通商代表キャサリン・タイ氏が関税削減案に強く反対し、中国との対話を優先した。サリバンの提案は棚上げされ、バイデン政権の関税削減計画は頓挫した。
■2022年:インフレ対策としての関税削減計画が行き詰まる
2022年にはアメリカで物価上昇とインフレが急速に進行し、財務省・商務省の高官や主要輸入業者は消費財関税引き下げを強く要望する。商務省のジーナ・レイモンド長官も積極的に関与し、バイデン大統領が関税削減を行う可能性を議会で示唆した。
しかし、キャサリン・タイ通商代表は関税撤廃がインフレ抑制に繋がらないと反対。バイデン大統領自身も記者会見で「さらなる議論が必要だ」と述べ、関税削減は行き詰った。
■2023年:国家安全が関税削減の妨げに
2022年11月、バイデン大統領はG20サミットで中国共産党党首・習近平と会談し、米中関係のさらなる悪化を避けることに合意した。その結果、中国への関税措置は事実上凍結された。
2023年初頭、中国共産党はワシントンで積極的にロビー活動を行い、関税撤廃を訴えた。しかし、中国共産党の高高度スパイ気球がアメリカ本土上空を飛行したことで米中関係は冷え込み、バイデン政権は2023年11月のAPEC首脳会議に習近平を招待しつつ、関税削減計画を見送ることにした。
■2024年大統領選挙:関税削減ではなく中国に対する関税引き上げ
2024年の大統領選挙を控え、バイデン政権は中国に対する関税の削減を断念し、逆に関税引き上げを図る。特に中国製の電気自動車、太陽光発電設備、バッテリー、半導体などに高い関税導入を予定している。
■分析:トランプに屈するわけにはいかない、バイデンは関税を引き上げるしかない。
11月5日の大統領選挙が近づく中、バイデン大統領には選択肢が限られていた。トランプ前大統領が中国製品に最大60%の高関税を約束している中、バイデン大統領も中国への強硬姿勢を維持するしかない。中国製品が、第三国を経由してアメリカに流入する問題もある。
バイデン政権の元高官は「関税引き下げの声はあるが、政治的圧力により抑制されている」と述べた。しかしトランプ氏に屈する形での政策変更は選択肢にないという。
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