今年7月4日、英国は欧州連合離脱後の初の全国選挙を迎える。世論調査によると、労働党が保守党に対して大きくリードしており、「改革党」は最大の野党を目指している。
英国では下院の650議席が争われる。下院の過半数を獲得した政党は次期政府を組織する資格を持ち、その党首が首相となる。第二党は最大の野党となる。
英国の総選挙は原則として5年ごとに行われるが、首相は早期選挙を実施することができる。
主要政党の状況
英国の主要な伝統的政党は保守党と労働党である。現職首相リシ・スナク氏は英国初の非白人としてインド系首相である。
労働党の党首はキア・スターマー氏で、かつて英国王室検察庁の検察総長を務めた。
自由民主党(Lib Dem)の党首はエド・デイビー氏で、同党は伝統的に労働党と保守党に次ぐ第三政党であり、2010年の英国総選挙後には保守党と連立政府を組んだことがある。
「改革党」(Reform UK)の前身は2019年の欧州議会選挙で29議席を獲得し、当時の英国における欧州議会の最大政党であった。2021年に改革党と改名し、党首はナイジェル・ファラージ氏である。
その他にも、緑の党、スコットランド国民党(SNP)、ウェールズ党(Plaid Cymru)などが選挙に参加する。
労働党が世論調査でリード 改革党と保守党が接近
現在、労働党が選挙の初期段階で世論調査において優位に立っている。労働党の支持率は40%前後で推移しているが、6月上旬から労働党と保守党の支持率がともに下落し、改革党と自由民主党の支持率が上昇している。
世論調査機関YouGovのデータによると、6月25日時点で労働党の支持率は36%、保守党は18%、改革党は17%、自由民主党は15%である。
YouGovはこの結果について、改革党が保守党と競り合える位置にあることを示しており、英国総選挙の構図が大きく変わる可能性があると述べている。
一方、改革党は世論調査で2位または3位に位置しているが、その支持者は英国全土に散在しており、支持率を議会の議席に転換するのは難しいとの分析もある。
与党は70年来最大の試練に直面
ロイターは、いずれの政党が勝利しても、第二次世界大戦後最大の試練に直面するだろうと分析している。
英国社会は多くの課題に直面しており、有権者が最も関心を持つのは生活費の上昇、医療などの公共サービスへの圧力、移民の急増などである。
シンクタンク「財政研究所」(Institute of Fiscal Studies)は5月の報告で、次期英国政府は過去70年間で、最も厳しい財政問題に直面することになり、増税、支出削減、債務増加のいずれかを選ばざるを得ないと述べている。
COVID-19のパンデミック以来、英国の経済成長率はG7で下から2番目である。このため保守党は「減税」政策を提案しており、改革党はさらに大幅な減税を主張している。労働党は減税に対する立場が不明確であり、有権者や専門家から度々質問を受けている。
英国の人口増加は1960年代以来の最高速度を記録しており、移民問題が総選挙の重要な争点となっている。スナク首相は不法移民をルワンダに送還する計画を提案しているが、労働党はルワンダ計画を放棄し、新しい国境・安全司令部(Border and Security Command)を設立することを表明している。改革党は欧州人権条約からの脱退を提案し、不法移民の送還を主張している。
英国の国民保健サービス(NHS)も困難な状況にあり、非緊急治療の待機リストが長期間積み上がっている。
英国の「先に到達した者が当選」選挙制度
英国の総選挙を理解するには、独特の選挙制度を知る必要がある。
大多数の国(フランス、ドイツ、イタリアなど)の比例代表制とは異なり、英国は「先に到達した者が当選」(first past the post)という選挙制度を採用している。これは支持率が高い政党が必ずしも多くの議席を獲得するとは限らないことを意味している。
英国全土は650の選挙区に分けられ、各選挙区の有権者は各党の代表者に投票する。その選挙区で多数票を獲得した党の代表が国会議員となり、その党が下院で議席(Seat)を獲得する。下院の過半数の議席を獲得した政党が次期政府を組織し、党首が首相となる。
これは、選挙区内の有権者が、特定の政党に集中して投票すれば、その政党がその選挙区で勝利することを意味している。一方、支持者が英国全土に散在している政党は、必ずしも各選挙区で勝利するとは限らない。つまり、政党の支持率が議会の議席数に直結するわけではないということだ。
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