百家評論 中共の構造的問題が不況に現れる

ことし第3四半期 中国経済の顕著な減速とその影響

2024/10/03 更新: 2024/10/03

中国の第3四半期の経済データは、経済が依然として低迷しており、2024年の国内総生産(GDP)成長目標を達成する可能性が低いことを示している。

物価上昇率(インフレ率)のうち、特定の変動が激しい項目に注目して計算されたコアインフレ率が、3年余りの最低水準に低下する中、中国経済は明らかに減速の兆候を示し、この減少は中国が2024年に約5%の成長目標を達成できるかどうかに対する懸念を引き起こしているという。

8月には、食品とエネルギーを除く消費者物価指数(CPI)が前年同月比でわずか0.3%上昇し、2021年3月以来の最低成長率となった。全体のインフレ率は0.6%上昇したが、これは主に悪天候による食品価格の上昇によるもので、このデータは依然として予想を下回っている。

需要の低迷に加え、電気自動車(EV)や電子製品などの重要な業界の価格が下がっているため、デフレ圧力が一層強まっている。政府が介入しなければ、経済は物価、賃金、企業収入が継続的に下がる悪循環に陥る恐れがある。市場の感情も深刻な影響を受けており、中国の株価指数と人民元の為替レートは継続的に下落している。過去1か月間、米ドルは連邦準備制度の利下げ期待のもとでわずかに弱含んでいたが、この下落は人民元に対して何のプラスももたらさず、人民元の為替レートは依然として変わらずだった。

インフレが穏やかに上昇している一因は、食品価格の急騰である。昨年同時期と比較して、新鮮な野菜の価格は21.8%も上昇し、全体のCPIは0.44%増加した。金利の引き下げや古いものを新しいものに交換するなどの刺激策が実施されたにもかかわらず、これらの取り組みは依然として不動産市場の低迷や消費者の信頼不足による悪影響を補うことができていない。同時に、2022年末以降、工業製品の出荷価格はデフレ状態にあり、生産者物価指数(PPI:Producer Price Indexは、企業が商品やサービスを生産・販売する際の価格変動を測定する指数)は前年同期比で1.8%減少し、予想の1.5%を上回る減少となった。

経済の減速は、工業生産と小売売上高に明確に現れており、両者は8月に減少した。工業生産は前年同期比で4.5%の増加にとどまり、7月の5.1%を下回り、3月以来の最低成長率となっている。小売売上高は消費者支出の重要な指標であり、8月の増加率はわずか2.1%で、今年で2番目に低い月となり、7月の2.7%と比較して減少している。これらの数字は期待に応えられず、8月が夏の旅行シーズンであるにもかかわらず、国内需要が減少していることを浮き彫りにしている。

中国の不動産市場と固定資産投資の減速

中国共産党は経済の安定を図ろうとしてているが、固定資産投資は依然として大幅に減速している。1~8月の固定資産投資はわずか3.4%の増加にとどまり、2023年12月以来の最低成長率となり、不動産市場は引き続き大幅に下落している。今年上半期には不動産投資が10.1%減少し、不動産の販売面積は前年同期比で19%減少した。さらに、新規着工数は昨年と比較して23.7%も急落したという。

不動産危機は、アナリストが「二重速度経済」と呼ぶ状況を引き起こしている。これは、輸出が増加している一方で、国内需要が依然として低迷していることを意味する。中国共産党の党首である習近平は、中国が年間の経済成長目標を達成することが重要であると強調した。特に、工業生産を強化し、ハイテク製造業を推進することで、過去3年間の不動産市場の低迷による影響を軽減する必要があると考えているという。

中共(中国共産党)が公式に設定した経済成長目標と現在の経済状況には明らかに乖離があり、これにより中国が5%のGDP成長目標を達成することは非常に難しい可能性が高いことが示されている。中国共産党が製造業と輸出を重視しているのは、国内経済の減速を認識しているからである。そのため、国内経済や国民の生活水準を犠牲にしてでも、海外での経済的優位性を維持することを優先しているとしか思わざる得ない。

消費の消極的

中国の二重経済は、国内需要が依然として弱い一方で、貿易黒字が拡大し続けているため、ますます厳しいリスクに直面している。貿易黒字の増加により、中国は貿易相手国から追加の関税を課される可能性があり、これが経済成長をさらに抑制し、デフレ圧力を強める要因となるであろう。この課題に対処するため、中国共産党は新しい関税が経済回復に与える影響を相殺するために、国内需要をより積極的に刺激する必要がある。しかし、経済成長が鈍化し、若者の失業率が上昇している中で、中国の消費者は支出を増やすことに対して慎重な姿勢を示している。

人民銀行の前総裁である易剛(えきごう)氏は最近、中国がデフレの課題に直面していることを公に認め、政策決定者に即時の対応行動を呼びかけた。易剛氏は上海の金融サミットでのスピーチで、中国が特に消費と投資において、内需の弱さに直面していることを強調し、これを支えるためには積極的な財政政策と健全な金融政策が必要であると述べた。

彼は、中国のGDPデフレーター(物価水準を測る広義の指標)が今後数四半期でプラスに転じることを期待している。しかし、現在の個人消費需要の低迷や消費者信頼感の低下を考慮すると、自然な回復を実現するのは難しいと言われている。

共産党政府は家庭の需要を回復し、不動産市場を安定させるために多少の努力しているが、これまでのところ、段階的な措置しか講じられていないため、消費の低迷、信頼感の低下、そして不動産業界の危機は、中国の成長見通しに深刻な影響を与え続けている。経済の減速傾向はますます強まっており、追加の刺激策が経済の下落傾向を逆転させるのに十分なのかどうか、あるいはまた、これらの措置が実際に実施されるかどうかは、現時点では不透明だ。

中共の公式メディアは、経済成長が安定しており、機会に満ちていると引き続き報じ、好調な業界に焦点を当てている。しかし、彼らはより広範な経済の減速を認めようとはしていない。この減速は深刻な構造的問題によって引き起こされており、中共は現在、明確な解決策を示していない状況だ。

経済学者、中国経済アナリスト。上海体育学院を卒業後、上海交通大学でMBAを取得。20年以上アジアに滞在し、各種国際メディアに寄稿している。主な著作に『「一帯一路」を超える:中国のグローバル経済拡張』(Beyond the Belt and Road: China's Global Economic Expansion)や『A Short Course on the Chinese Economy』など。
関連特集: 百家評論