経済成長の鍵は技術ではなく貯蓄にあり 専門家の見解に異論

2024/10/21 更新: 2024/10/22

一部の人は、新しい技術アイデアは、材料投入や労働力とは異なり、そのもの自体が希少なものではないと主張している。そのため、効率的なプロセスや新製品に関する新たなアイデアがあれば、持続的な経済成長が可能になるとされている。

しかし、いわゆる専門家たちは、完全競争の環境下では、企業が導入した革新技術が競合に模倣されることを懸念すると考えている。したがって、企業は高コストの研究開発への投資に慎重になるとされている。

この問題への対処として、「専門家」たちは、研究開発への補助金のような政策を導入する必要があると考えている。結果として、政府の政策が技術革新の促進において重要な役割を果たすと結論づけられている。

しかし、これに反して、実際に最も重要な技術的アイデアは、多くの場合、政府の支援を受けることなく、民間の様々な個人のイニシアティブによって生まれてきた。例えば、20世紀後半のコンピュータ技術の革新や、20世紀初頭の電気、ラジオ、テレビ、自動車産業、航空産業の発展などがその例として挙げられる。

さらに、政府の補助金政策は市場のメカニズムを迂回し、資源の効率的な利用を阻害し、経済成長を妨げることになる。

技術的アイデアと貯蓄の確保

どれだけ多くのアイデアがあったとしても、重要なのはそれらのアイデアが実現可能かどうかだ。さまざまな新しい技術の実行を常に制限するのは、資本財(道具や機械)への投資を可能にする貯蓄の有無であり、それが生産性と効率の向上につながる。消費財の生産が増加すれば(他の条件が同じである限り)、貯蓄の量も増える。これにより、さらなる資本インフラの強化と拡大が可能になる。

貯蓄が増えることで、それまで行えなかった新しい生産段階を導入できるようになり、消費財(商品)の生産量と種類が拡大する。また、消費財が十分に蓄えられると、人々は娯楽や医療などのサービス関連の商品を追求し、生活の質を向上させることができるようになる。

貯蓄の成長により、資本財の蓄積が進む。そして、資本財の増加こそが経済成長を可能にする。

ロスバード氏は次のように述べている。

「資本は、消費財を享受するための道程における中継地点である。資本を持つ者は、望む消費財に向けて時間的に進んでいると言える。つまり、資本の役割は、人々が消費財の生産に向けて目標に到達するための時間を短縮することである」

問題の本質は、資本財の増加は実質的な貯蓄の増加なしには実現しないという点である。資本と消費財の量が限られている中で、多くの活動を支えるためには消費財の増加が不可欠だ。これを実現する鍵は、生産設備(工具や機械など)の改善にある。より優れた工具や機械を使えば、より多く、かつ高品質な消費財が得られる。

貯蓄の量が、様々な工具や機械の質と量を決定する。もし貯蓄が1か月の作業を支えるに十分なだけであれば、製作に2か月かかる工具を作ることはできない。技術的な知識がどれほど優れていても、事前に十分な貯蓄がなければ、成長は実現しない。

インフラの強化が消費財の拡大と利用を可能にする。その他の条件が同じであれば、これはインフラのさらなる改善への投資の割り当てを増やし、結果として生活水準の向上をもたらす。新しいアイデアは、希少な資源のより良い利用をもたらすことはできても、事前の貯蓄がなければ実質的な経済成長にはつながらない。ロスバードは、ミーゼスの言葉を引用し次のように述べている。

「これらの(発展途上国などの)国々に欠けているのは、西洋の技術的手法(ノウハウ)の知識ではない。それは容易に学ぶことができる。知識の提供は、個人的にであれ書物であれ、すぐに補える。問題は、その先進的な手法を実行するために必要な貯蓄資本の供給が不足していることだ」

経済成長の制約要因が技術的「ノウハウ」だけであるならば、多くの第三世界の経済は最新の西洋技術を採用することで問題を容易に解決できたはずである。そうならなかった主な理由は、最新技術の知識が不足しているのではなく、資本財とそれを支える貯蓄が不足しているからである。

例えば、ある特定の工具を作るためには、製作者がその工具を作るためのアイデア(「レシピ」)を持っていなければならない。しかし、アイデアだけでは工具を生産することはできない。その工具を作るための様々な部品を製造しなければならず、時間、エネルギー、労働、資源の機会費用が発生する。生産の様々な段階(中間および最終段階)に従事する人々は、その間、生活を支えるための消費財を供給される必要がある。生産段階にいる人々に消費財が提供されなければ、技術的知識があっても工具は完成しない。

結論

一般的な見解とは異なり、経済成長の鍵は単なる技術知識ではなく、経済の生産構造の拡大と強化を支える貯蓄にある。

(ミーゼス.orgより)
 

フランク・ショスタック博士は、ミーゼス研究所の関連学者です。彼のコンサルティング会社であるApplied Austrian School Economicsは、金融市場と世界経済の詳細な評価とレポートを提供しています。また、プレトリア大学およびウィットウォーターズランド大学の経営大学院で教鞭を執った経験があります。
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