中国共産党 次期米国務長官ルビオ氏を恐れ 3つの対策を実施

2024/11/24 更新: 2024/11/24

11月19日、香港の裁判所は「香港47人事件」に関する判決を下し、45人が「国家政権転覆共謀罪」で有罪となり、最長10年の刑が言い渡された。また最近、中国共産党(中共)財政部は輸出税還付率を調整し、大部分の製品の還付率を引き下げた。一方、習近平はペルーでのAPEC首脳会議で、バイデン大統領に対して中共の4つの「レッドライン」を提示した。これらは台湾問題、民主人権、道路制度(中国の共産主義体制)、発展の権利であり、近年で最も強硬な対米姿勢とされる。

これらの一見無関係に見える出来事は、実はトランプ氏が再びアメリカの大統領に就任することと関連している。中共は新たな米中対立に備えている。

中国共産党、ルビオ氏を恐れ「香港47人事件」に先手を打つ

ジャーナリストの郭君氏は、新唐人テレビの番組「菁英論壇」で、11月19日に香港高等法院が「47人事件」[1] の45人に判決を下したと述べた。

2021年初頭、中共は香港で民主派を逮捕し、3年以上にわたって拘束している。今回、正式に判決が下された45人の中で、最も重い刑罰を受けたのは香港大学の副教授である戴耀廷氏で、10年の懲役が言い渡された。

[1] 47人事件
2020年、香港の民主派が議会にあたる立法会の選挙に向けて予備選挙を行った際、元議員や活動家など47人が、国家政権の転覆をはかったとして香港国家安全維持法違反の罪で起訴された事件

この事件を議論する前に、香港の選挙について触れる必要がある。1997年に香港の主権が中国に移譲されて以来、部分的な民主選挙が行われていた。香港市民は直接に行政長官を選べず、立法会議員の一部のみを選出できる。設計した選挙制度は複雑な比例代表制で、親中派が大多数を占めており、中共は香港を長年コントロールしてきた。

民主派が人気がないわけではなかったが、団結力が不足していた。2020年に内部調整を望んだが、非常に困難だったため内部予備選挙を実施した。この予備選挙に基づき、民主派が立法会の議席の大多数を獲得することが予想され、それは中共が最も避けたい状況だった。

そのため、香港政府は予備選挙が香港国家安全維持法に違反していると発表した。香港政府は、予備選挙を企画した戴耀廷氏が「民主派が大多数を獲得すれば、財政予算案を否決して政府の運営を麻痺させることができる」と述べた発言を政府転覆罪の証拠と見なし、47人の民主派が逮捕された。

なぜ今、判決を下したのか?

郭君氏は、今年のアメリカの選挙が終了し、民主党が敗北したため、来年1月の政権交代までの期間は維持段階にあると述べた。

そのため、現在のアメリカ政府の反応は限られるだろうと考えている。トランプ次期大統領はマルコ・ルビオ氏を国務長官に指名しており、来年1月以降、香港政府の行動に対する反応はルビオ氏が担当する。ルビオ氏は強硬な反共産主義者で、特に香港での出来事に対しては強い反発を示すだろう。

反送中運動の際、香港大紀元印刷工場が放火されたとき、アメリカ議会は迅速に香港人権民主法案を可決した。これはルビオ氏が推進したもので、彼は当時の事態の緊急性を理由に直接不在投票を行い、法案を迅速に通過させた。

ルビオ氏はキューバ移民の子孫で、共産主義の独裁に強く反対している。郭君氏は、香港がルビオ氏の正式就任前に47人事件の判決を急いだのは、ルビオ氏を避けるためだと考えている。

ルビオ氏の国務長官就任後に判決を下すと、彼の面子をつぶすことになり、47人事件の判決に対するアメリカの反応が非常に強くなる可能性がある。もちろんどちらにしてもルビオ氏が1月に就任すれば、強い反応が予想されるが、それでも判決を今、下す方が良いという判断だろう。

習近平が4つのレッドラインを提示、社会制度が重点

習近平はペルーでのAPEC首脳会議で、バイデン大統領に対し中国の4つの「レッドライン」を提示した。台湾問題、民主人権、道路制度(中国の共産主義体制)、発展の権利である。

時事評論家の横河氏は「菁英論壇」で、この4つのレッドラインの提示は習近平の強硬な姿勢を示しているとし、次のように述べた。

習近平が「発展の権利」について言及しているが、中国共産党が国内で閉鎖的に発展しようとする場合、誰も反対しないだろう。

4つのレッドラインの真意

では、中国共産党が求めているものは何であろうか?  それは外国からの技術と資金である。外国が技術を提供せず、資金を出さない場合、それが発展の権利を制限していると習近平は主張している。しかし、実際には外国は中国の発展の権利を制限しているのではなく、中国共産党が進めている先端技術などの盗用や不当な利益追求を制限している。

また横河氏は、習近平が単にレッドラインの数を増やしているだけで、もともとは1つのレッドラインだったのを、レッドラインを追加することで、自分が依然として強い立場にあり、アメリカに頼っていないという姿勢を示したいのだと述べた。

また横河氏は中国共産党の今回の態度が2001年のWTO加盟時とは異なると指摘し、次のように述べた。

当時、中国共産党は何でも受け入れ、従順に振る舞っていた。しかし、今回の習近平は強硬な発言をし、同じものを求め、他者の助けを望んでいながら強がっている。

一方、中国共産党は、米中関係が今日のような状況になった責任はすべてアメリカにあると主張し、自分たちには全く責任がないとしている。しかし実際は、この責任は中国共産党にあり、アメリカは後に我慢の限界に達して反撃を始めた。

台湾問題で中共の主張に見られる論理の破綻

また台湾問題については、習近平の主張は一貫しているが、理にかなっていない。というのも習近平は「一つの中国原則」[2] と3つの共同声明はアメリカが厳守すべきものであり、米中関係の基礎だと言っているが、アメリカは一度も1つの中国原則を認めたことがない。

アメリカが言っているのは「一つの中国政策」[3] であり、中共の主張は独り言のようになっている。他者に約束したことのないことを守るよう要求するのは理にかなわない。このため、中共の主張には論理的な混乱が見られる。

[1]  一つの中国原則
中国共産党政府の主張で、世界に中国は一つで、台湾はその一部であるとする

[2]  一つの中国政策
アメリカの方針で、台湾を中国の一部と認めないが、独立も支持しない

習近平が本当に守りたいレッドライン

習近平が本当に守りたいレッドラインは、道路制度(中国の共産主義体制)であると思う。彼は常に自分の政権が脅威にさらされていると感じており、これが習近平の最重要事項である。

横河氏はその一方でアメリカは中国の社会制度を変える意図を持たず、歴史的にもそうであったとし、次のように述べている。

アメリカの長期的な政策は、どんな状況でも現状を維持することを目指しており、そのため今までこの話題には触れていない。

習近平がこの話題を再び持ち出したのは、2つの意図があると考えられる。1つは、中共は、アメリカが一貫して行ってきた政策をトランプ政権も継続し、変えないことを望んでいることだ。

もう1つは、社会制度についての言及が国内向けのメッセージであることだ。「社会制度は変えられず、アメリカでも変えられないため、国内の人々も変えようとしてはいけない」という警告だ。これは共産党がこの問題に直面した際、容赦しないという意思表示であり、中共のレッドラインだ。

習近平は現在の政局が不安定であるため、この話題を持ち出した。表面上はアメリカに向けた発言に見えるが、実際には国内向けの発信だ。私が最も重要と考えるのは、この中国国内の人々に対する警告だ。

輸出税還付率引き下げ、中国共産党は戦う前に譲歩

郭君氏は、トランプ氏の就任後に中国共産党との貿易戦争が再び起こると述べた。

今回の貿易戦争は前回とは大きく異なる可能性があり、前回はヨーロッパや他の国々が傍観していたが、今回はヨーロッパ、日本、韓国もアメリカの立場に近づくかもしれない。

また、国際情勢の変化、例えばロシア・ウクライナ戦争や中国との貿易に関する様々な紛争がある。ヨーロッパは中国のバッテリー、電気自動車、太陽光パネルに制裁を加え、大幅に関税を引き上げようとしている。

これは、中国製品が安すぎてヨーロッパの企業が崩壊したためだ。ヨーロッパは中国が製品に国家補助金を与えていると非難している。

中国の輸出企業への補助金には2種類あり、一つは輸出税還付、もう一つは国家の直接補助金である。今回の輸出税還付率の引き下げは、中国が貿易戦争に備えた事前準備と見なせる。

横河氏は、今回の輸出税還付率の引き下げが貿易戦争への準備ではないと述べた。この引き下げはアメリカの制裁に対処するための措置であり、厳密には戦争とは言えない。戦争であれば双方が戦うが、今は戦わずに譲歩を始めている。制裁に備えているのだ。

中国共産党は自らの行動で問題を引き起こしている。貿易税還付は政府の補助金の一種であり、輸出補助金はWTOの協定で許可されていないため、政府は補助金を出せないはずだ。その結果、WTO加盟時に約束したことを10年以上経っても履行していない。履行しないのであれば強気でいればよいのに、今になって譲歩しようとしている。間違いを認めたくはないが、修正が必要である。

国内で税還付を調整し、それを交渉の切り札として利用しようとしている。つまり、ルールを守り、政府の補助金を減らしたと主張したいのだ。このように、一時的に問題を回避しようとしている。

郭君氏は、トランプ次期大統領が中国製品に60%の関税を課すと述べているが、その実現は不明だと指摘している。

しかし、方向性は明確である。トランプ氏の目的は製造業をアメリカに戻すことであるが、実際にはこの約束を果たすのは難しいだろう。アメリカの企業は労働コストだけでなく、多くの政府規制や資格審査にも直面しており、多くの産業がアメリカで存続するのは難しいかもしれない。

60%の関税が課されると、中国企業はアメリカに輸出できなくなるが、アメリカはこれらの製品を引き続き購入するだろう。おそらく東南アジアやインドから購入することになる。

つまり、アメリカの貿易赤字は依然として存在するが、貿易黒字国は東南アジア諸国やインドに変わるということである。将来の米中対立は、結局誰がより多くのお金を持っているかで決まる。つまり、誰の経済がより良いかで決まるのだ。

郭君氏は、アメリカ企業が必ずしも利益を得るわけではないが、地政学的競争では相手を弱体化させることが重要だと述べている。

現在、アメリカの両党が唯一合意しているのは、中国共産党に対抗することだ。トランプ氏が引き上げた関税はバイデン政権によって引き継がれ、民主党もトランプ氏が再び同様の措置を取ることを歓迎するだろう。マスク氏は公の場で反対の立場を取っているが、それは彼の中国でのビジネスに影響を与えるからだ。大きな政策に関しては、彼はトランプ氏と意見の相違はない。

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