アメリカ国防総省は、米軍基地に対するドローン攻撃が相次ぐ状況を受け、対ドローン防御に関する新たな戦略を打ち出した。
ロイド・オースティン米国防長官が12月2日、同文書に署名した。詳細は機密となっている。
オースティン国防長官は声明で、「近年、敵対的な無人システム技術が急速に発展している」とし、「これらの安価な無人機は戦闘の様相を変えた。米軍施設と人員が脅かされている」と述べた。
同戦略を「敵対的な無人システムの脅威に対抗するための指針」として位置付け、国防総省の対ドローン戦略を統合し、領域横断的かつあらゆるドローンに対応可能な体制をつくり上げる狙いだ。
戦略を一本化することで、ドローンに対する共通の認識とアプローチを確立する。これは、軍民の安全保障という文脈で意味を持つ。
商業用ドローンを用いたスパイ活動や嫌がらせ行為が、近頃大きく問題視されるようになった。正体不明のドローンが艦船や軍事基地に接近するといったできごとは、世界中で報告されている。
11月にも、複数のドローンがイギリスの軍事基地上空を飛行する様子が確認された。標的となったイギリスのレイクンヒース空軍基地には、在欧アメリカ空軍で唯一第5世代戦闘機F-35を配備する第48 戦闘航空団が駐留している。
各国は無人機の開発競争でしのぎを削っている。大型かつ最先端の無人機開発に莫大な予算を投じているのはアメリカだけではない。
たとえば、中国は無人機の大量配備において先頭を走っている。10年以上にわたり、中国共産党は安価で使い捨て可能な小型無人機から高高度を長時間飛行可能な大型無人機にいたるまで、あらゆるタイプのドローン開発に予算をつぎ込んできた。
特に、中国軍の最新空母「福建」は各種無人機を搭載可能だ。また、中国が開発した全長88.5メートルの無人システム科学調査母艦「珠海雲」は、水中・空中ドローンを複数搭載する能力を持つ。珠海雲そのものも無人水上艦で、遠隔操作機能および自動航行機能を備えている。
中国当局は珠海雲を科学研究目的の船舶としている。一方、香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」の調査によれば、同船舶は「敵対的な標的に対して妨害、包囲、排除する」といった軍事目的の使用も可能だと指摘している。
このような動きを受けアメリカ国防総省は昨年(2023年8月)、「レプリケーター(Replicator)」構想を打ち出し、無人・自律システムの製造と配備を急速に進めている。
5日に公表されたファクトシート(科学的知見に基づく概要書)によれば、この度の新ドローン戦略はレプリケーター構想を基礎としており、無人システムの統合・対処を担当する新たな部署も設立される。
ドローンの脅威をリアルタイムで「発見、追尾、識別」できる能力を獲得していくとともに、無人システムを戦略思想の重要な要素として位置づける。
新戦略の背景には、やがて到来するドローン時代への切迫感がある。昨年、マーク・ミリー米統合参謀本部議長(当時)は、今後10年以内に米軍のほとんどが無人化するだろうと述べた。
ミリー氏は、「軍事的な視点でいえば、我々は歴史的な転換点に立っている」とし、ドローンがもたらす戦争の質的変化を指摘した。
「そう遠くない話だ。おそらく10年以内に劇的な変化が起きるだろう」
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