近頃、中国各地の病院が「再び」大混雑している。
「3年前のパンデミックの時と同じ」と、多くの人が口をそろえるこの状況はいったい、何なのか。
子どもから高齢者まで、みんな発熱や風邪の症状に苦しんでいる現状に、当局は「A型インフルエンザ」または「ヒトメタニューモウイルス(hMPV)」が流行していると主張している。
しかし、「隠蔽体質と欺瞞」のイメージが定着してしまった当局の主張をそのまま信じる市民は少ない。当局が言及しない「新型コロナウイルスの流行ではないか」と疑う人も多いという。
中国で流行っているのはいったいどんなウイルスなのか、現時点ではわからない。
それでも、病床は満杯、大混雑の点滴ホール、深夜であっても受診を待つ長蛇の列ができるなど、SNSでは患者が増え病院がごった返している様子を映した動画が多く出回っており、これに加え、「身の回りに集団感染が起きている」と多くのユーザー訴えており、感染症大流行の事態に市民の不安は募るばかり。
(混雑する中国の病院の様子)
「ヒトメタニューモウイルス(hMPV)」というウイルスは耳慣れない読者もいるかも知れない。
日本ウイルス学会によると「ヒトメタニューモウイルス」は乳幼児でゼェゼェといった喘(ぜん)をきたす急性呼吸器感染症の原因ウイルスであることが多く、日本における流行のピークは、春だという。
また再感染を防ぐための十分な終生免疫が一回の感染では得られず、幼小児期においても何度も再感染を受け症状を呈するとしている。ワクチンは動物実験段階にあるため、マスクの着用と手洗いの励行という予防策となっている。乳幼児、高齢者、免疫不全状態の患者では重症化の危険があり、注意が必要だ。
日本は中国で新型コロナ流行していたこともあり2020年3月9日から、中国からのビザを停止していたが、段々と緩和し、先日、岩屋毅外相の中国訪問の際、団体観光客向けビザの滞在可能日数を従来の最長15日から30日とするなど緩和措置をとった。
最近の円安もあり中国からの観光客は増加する可能性が高く、前回のパンデミック同様、旅行者の移動で感染が拡大するおそれもあり、注意が必要だ。
疫病にならない人もいる
古代、「疫病は神の計らい」とされてきた。西洋キリスト教では「疫病は神の罰」と考えられている。
古代ローマで大疫病が発生したとき、多くの人々はキリスト教徒が疫病にかからないのを見て、自らを反省し、キリスト教徒の教えを聞き、神に祈るようになった結果、多くの人が治った。
1633年、ヨーロッパを席巻していた黒死病は、ドイツのバイエルン地方にあるオペル・アメガウ村にも襲いかかり、2家族に1人以上の割合で死者が出て、住民に大きな恐怖を与えた。絶体絶命の中、神を思い出した村人たちは、神に祈り、黒死病から生き延びたら恩返しをして、踊りという形で感謝の気持ちを伝えようと誓った。すると、奇跡的に、村人たちが誓いを立てた瞬間から、黒死病による犠牲者は1人もいなくなったのだ。
黒死病が発生した時、ヨーロッパの修道士だったマルティン・ルターは、「神がペストを送ったのは罰であり、神への信仰を試すためである」と述べている。周りの多くの人がペストで亡くなったにもかかわらず、ルターは感染地域で、病人や瀕死の人に奉仕し続けることを選び、家を開放して妊娠中の妻カトリーヌとともに病人を受け入れたが、その家族は感染しなかった。
『ローマのペスト(The Plague in Rome/1869/ジュール・エリー・ドローネー)』という絵を見たことのある人も多いかもしれない。
そこに描かれているのはペストが猖獗する七世紀のローマ、悪魔を引き連れてローマの町に舞い立った天使。「神の御使い」である天使は悪魔に命じて、人々の家の戸の扉を叩かせては死をもたらした。
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