インテル 投資部門を分離し独立基金化へ 中国投資を巡る審査も焦点に

2025/01/16 更新: 2025/01/16

米半導体製造大手インテル(Intel)は1月14日、同社の投資部門であるインテル・キャピタル(Intel Capital)を分離し、新たに独立した投資基金として再編する方針を明らかにした。この動きは、中国のテクノロジー企業への投資が米国で審査対象となっていることが背景にあると報じられている。

インテル・キャピタルはシリコンバレーを代表する投資会社で、1991年の設立以来、約1800社に対して累計200億ドル(約2.9兆円)以上を投資してきた実績を持つ。

現在、業績不振に陥っているインテルは、コスト削減に向けた取り組みを進めている。同社は、資産規模50億ドルのインテル・キャピタルを独立した基金に転換することで、外部投資家から資金を募ることが可能になると説明した。これまで同部門はインテルが全額出資して運営されていた。

インテルは、新基金においても同社が主要な投資家であり続けるとし、今年後半には新たな名称で活動を開始する予定だとしている。

厳しい状況が続くインテル、コスト削減策を加速

インテルにとって2024年は「挑戦の年」と位置付けられており、一連のコスト削減策を通じて経営立て直しを目指している。同社の株価は1年前と比較して約60%下落している。

昨年12月には、当時の最高経営責任者(CEO)だったパット・ゲルシンガー氏が取締役会により解任された。フィナンシャル・タイムズによると、解任の背景には、同氏が推進していた5年間に及ぶ多額の資金投入を伴う計画に対する社内外の反発や懸念の高まりがあったという。

この計画は、インテルを台湾のTSMCと競合する製造業の巨人に育てることを目指したもので、数十億ドル規模の投資を伴うものだった。しかし、同時に、インテルの主力である半導体設計部門は、AMDやNVIDIA(エヌビディア)といった競合他社からの圧力に直面している。

ゲルシンガー氏の後任として、インテルはCFOのデビッド・ジンスナー氏と、執行副社長のミシェル・ジョンストン・ホルソース氏を共同暫定CEOに任命し、暫定的に会社運営を担わせることを決定した。

米政府の補助金と中国投資のジレンマ

ゲルシンガー氏が辞任する直前、バイデン政権はインテルへの支援として、連邦補助金約79億ドル(約1.15兆円)の支給を決定した。この補助金は、アメリカ国内の半導体製造業を促進する計画の一環として、最大規模の直接支援とされている。

一方、インテル・キャピタルは引き続き中国での投資を行っており、フィナンシャル・タイムズによれば、昨年時点で43社の中国テクノロジー系スタートアップに出資している。

データプロバイダーのCrunchbaseによると、インテル・キャピタルは1990年代の設立以来、中国企業120社以上に投資を行ってきた。その中には、半導体製造企業の地平線ロボティクス(Horizon Robotics)や億智電子科技(Eeasy Tech)も含まれる。

アメリカ政府は中国企業への資金流入を制限する措置を強化しており、2025年1月からはAI、量子コンピューティング、半導体などの技術を扱う企業への投資を事実上禁止する規制が施行される。また、米外国投資委員会(CFIUS)による審査体制も強化され、関連する投資が厳しく監視されるようになっている。

これに先立ち、2023年にはアメリカを代表する大手ベンチャーキャピタルのセコイア・キャピタル(Sequoia Capital)とGGVキャピタルが、米中間の緊張の高まりを背景に中国事業を分離している。

李皓月
関連特集: アメリカ経済