アメリカ上院は、ロシア・中国・インドを対象とする強力な制裁法案の策定を進めてる。この法案は、ロシア産エネルギーを購入する国に対して、最大500%の関税を課す内容を含み、ウクライナ支援国に対する優遇措置の導入も視野に入れていた。米中の戦略的競争が激しさを増す中で、国際政治の力学は大きく変動中だ。
7月8日、リンジー・グラム上院議員は、法案成立後、ロシア産のウラン鉱、天然ガス、石油を引き続き購入する国家に対して、最大500%の輸入関税を課す方針を明らかにした。この極端な税率は、中国共産党に対し、ロシアとのエネルギー取引が果たして戦略的に得策であるかを再考させる狙いを持つ。
一方で、この法案は、トランプ大統領に裁量を与える設計となっており、ウクライナ支援に積極的な同盟国には制裁の適用除外を認める余地を設け、グラム議員は「これは典型的なアメとムチの政策である。ウクライナを支援する国には優遇措置を与え、ロシアに加担する国には厳罰を課す」と説明した。
さらに、グラム議員は、法案にすでに80人以上の上院議員が署名しており、今回の措置には超党派の広範な支持が存在すると強調した。アメリカ国防総省もすでにウクライナへの防衛兵器再供給を開始し、トランプ大統領もロシア軍事侵攻に対抗するウクライナへの全面支援を表明した。
この背景には、アメリカが中国共産党への戦略を全面的に再編成しているという事情がある。
米中戦略的競争の新たな局面
バングラデシュ・チッタゴン大学の国際関係専門家スジット・クマール・ダッタ氏は、「China-US Focus」ウェブサイトにおいて、アメリカが中国共産党の世界的拡張を封じ込めるため、新たな戦略を展開していると分析した。
ダッタ氏はこの戦略を三つの柱に分類
第一に、経済および技術分野におけるデカップリングである。アメリカは半導体、人工知能、量子計算などの重要技術を厳格に管理し、中国共産党の軍事近代化の根幹を制約。
第二に、軍事および地政学的布陣である。アメリカはインド太平洋地域で軍備を大幅に強化し、「クアッド(QUAD)」やAUKUSなどの枠組みを通じて日本、オーストラリア、インドと連携し、中国共産党の軍事拡張に対抗する包囲網を築く。
第三に、中国の「一帯一路」構想に対抗する形での国際開発構想の提示である。アメリカは、文化や教育を通じたソフトパワーを拡大すると同時に、「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」などの枠組みを打ち出し、開かれた援助方式によって、発展途上国の対中依存を減らすことを目指す。
ただし、ダッタ氏は、米中間の戦略的競争は避けられないものの、十分な意思疎通によって、偶発的な衝突や世界的危機は回避可能であるとも警鐘を鳴らした。
以上の状況から判断すれば、アメリカはロシアに対して、強硬な制裁を加えながら中国共産党の影響力拡大にも強く歯止めをかけており、国際政治の力学は、ますます複雑かつ繊細な局面へと突入している。
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