ロシア経済危機が深刻化 プーチン政権の限界が近づく

2025/07/13 更新: 2025/07/13

ロシア経済は急速に悪化しており、インフレの加速や財政赤字の拡大、製造業および金融業の深刻な危機が顕在化し、プーチン政権は、西側諸国による制裁強化と原油価格の下落という二重の打撃を受け、従来の経済モデルの限界を自ら露わにした。さらに、トランプ米大統領の支持も失ったことで、国際的孤立が一層深まりつつある。こうした状況の下、ロシア経済の今後は極めて不透明だ。

ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、過去2年間、西側諸国は制裁を強化し続けてきたが、ロシアは高水準の原油価格と戦時体制の経済効果を背景に、逆境の中で経済成長を維持していた。一時的に華やかさを見せたこの戦争経済は、現在急転直下の局面を迎えた。各種経済指標が一斉に悪化し、製造業は大幅に減速、国民の消費能力も著しく低下した。インフレは依然として高止まりし、国家財政は逼迫し始めている。

ロシア財務相アントン・シルアノフ氏は、現在の経済状況を「パーフェクトストーム(完全な嵐)」と表現した。ドイツ国際・安全保障問題研究所の経済専門家ヤニス・クルーゲ氏も、戦争によって一時的に刺激されたロシア経済モデルはすでに限界に達したと断じている。政権が戦争体制を維持するためには、民間経済を犠牲にせざるを得ず、その構造は長期的に持続不可能なのだ。

プーチン大統領は依然として強気の発言を続けているが、「ロシア経済の死のニュースは誇張されている」とマーク・トウェインの言葉を引用しつつも、実際には、自ら経済がリセッションやスタグフレーションに陥ることを絶対に避けなければならないと認めた。つまり、プーチン自身が現在の経済的危機の重大さを理解しているのだ。

高騰する軍事費と金利

2025年、ロシアはGDPの6%を軍事費に投入し、アメリカの約2倍に相当する水準となった。インフレの急騰に対処するため、中央銀行は政策金利を21%まで引き上げたが、その結果、企業活動は圧迫され、製造業は深刻な打撃を受け、第1四半期のGDP成長率は1.4%に急落した。農業機械大手ロストセルマシュは、従業員に強制的な休暇を取らせ、シベリアの送電網企業も破産寸前に追い込まれている。

より深刻な危機は、銀行業界に及んだ。戦略・国際問題研究センターは、政府が銀行に対して、戦費捻出のため低金利融資を強要した結果、今後数年以内に不良債権が急増し、金融システム全体が崩壊する可能性があると警告した。

このような経済的苦境は、プーチン氏が戦争を継続するために、資金を急速に失いつつあることを意味する。2025年6月には、ロシアの石油・ガス収入が2023年以来の最低水準に落ち込み、財政赤字が急拡大し、西側諸国がさらに制裁を強化し、原油価格が下落すれば、ロシア経済はいつでも崩壊しかねないと言う状況だ。

元ロシア中央銀行職員アレクサンドラ・プロコペンコ氏は、ロシア経済の実態は見かけ以上に、脆弱で、いかなる外的要因でも、容易に崩壊する危険があると警告した。

この経済危機に追い打ちをかけるように、トランプ大統領もプーチン氏に対して、厳しい態度を取っている。7月8日、トランプ大統領はプーチン氏に対する「非常な不満」を表明し、ウクライナ戦争に関して「でたらめばかりを言っている」と厳しく非難した。同日、トランプ大統領は、ウクライナへの防衛兵器追加支援を承認し、対ロ制裁の強化も検討する姿勢を見せた。

ホワイトハウスで開かれた閣議でも、トランプ大統領は「プーチンは、表面的には友好的だが、実際には無意味である」と述べ、プーチン氏との電話会談に失望したと明かした。7月3日の1時間に及ぶ電話会談の内容に対して、トランプ大統領は「プーチンは状況を全く理解しておらず、戦争を終わらせる意思もない」と断じたという。

唐青
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