中共に誤算 中央アジア5か国が米国接近 

2025/11/09 更新: 2025/11/09

中央アジア5か国の大統領がホワイトハウスでトランプ大統領と歴史的な会談を行い、米国との経済・安全保障協力を大幅に強化。中国共産党(中共)の影響圏で巻き起こる地政学的転換が注目されている。

11月6日、米国のトランプ大統領はホワイトハウスで中央アジア5か国の大統領を招き、「C5+1」首脳会議を開催した。中共にとっては見たくない光景である。

トランプ氏は先に行ったアジア歴訪、すなわちASEAN首脳会議や日本、韓国で大きな成果を挙げ、中共を焦燥させていた。さらに今回、中央アジア5か国までもが米国寄りの姿勢を公然と示し、中共は極めて厳しい立場に追い込まれている。三方向からの包囲を意識し、その動揺は一層深まっている。

トランプ氏の「重要鉱物戦略」

11月6日、トランプ大統領はホワイトハウスでカザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの大統領を迎え、次のように述べた。

「われわれの議題の中で重要な項目の一つは重要鉱物だ。ここ数週間、わが政権は世界各地の同盟国や友好国との協定を通じて重要鉱物の供給網を拡大し、米国の経済安全保障を強化してきた」

トランプ氏は再任後、まずウクライナと鉱物協定を締結し、同時にロシア・ウクライナ間の停戦を推進した。ロシアも重要鉱物分野で米国との協力を望んでいる。インドとパキスタンの対立を仲裁した後、パキスタンは自国の鉱物開発で米国と協力する意思を表明し、港湾開発の共同事業を提案した。

最近では、ASEAN諸国やオーストラリアとも相次いで重要鉱物協定を締結し、多角的な供給体制を急速に構築している。

中共はレアアース輸出規制を切り札としてきたが、その効果は薄れつつある。トランプ氏は鉱物資源の戦略的配置をさらに進め、中央アジア5か国を引き寄せた。中共が影響下にあると考えていた中央アジア情勢に、明確な変化が生じている。

トランプ氏は「これらの国々は東西を結ぶ古代シルクロード上に位置しており、ユーラシア大陸の要衝にある。その地理的条件が極めて重要であり、無限の可能性を秘めている」と述べ「米国と中央アジア諸国のパートナーシップをこれまでになく強固なものにする」と表明した。

5か国の大統領はいずれも、米国との協力拡大への意欲を示し、中共の一方的な宣伝を退けた。

6月17日、中共の党首・習近平はカザフスタンを訪れ、第2回「中国・中央アジア首脳会議」に出席した。出席したのは今回と同じ5か国の大統領である。当時、習近平は「覇権主義と強権政治に反対しよう」と呼びかけ、5か国を事実上、反米陣営に引き込もうとしていた。

その後、新華社は「時代の呼び声、歴史の必然『中国・中央アジア精神』の深い意義を理解する」と題する評論を掲載し、「中国と中央アジアの協力は南南協力の模範であり、一国主義や覇権主義を打破する中国・中央アジアモデルである」と宣伝した。

中共の主張によれば、中央アジア5か国は米中対立で中共側についたはずだった。しかし、わずか5か月後に5か国の大統領がホワイトハウスを訪れ、重要鉱物や経済協力の強化を表明した。

さらに注目されるのは、これらの国々が米国の中共鉱物規制対抗策を支持する立場を明確にした点である。中共との関係を背景に米国へ接近する動きとなり、中共は衝撃を受けたとみられる。

カザフスタン大統領の発言

カザフスタンのトカエフ大統領は11月6日の「C5+1」首脳会議で「この会議は中央アジアと米国の協力が新段階に入ったことを示すものだ」と述べ、トランプ氏を「傑出した政治家」と称賛した。

さらにトカエフ氏は、「あなたの英明で果断な政策は世界中から支持されるべきだと確信しており、私は断固としてあなたの側に立つ。あなたはわずか8か月で8つの戦争を終結させ、米国を国際的安定の柱とした」と述べた。

トカエフ氏は近年、習近平と頻繁に会談を行っているが、このような言葉を習近平に向けたことは一度もなかった。

また同氏は、「あなたの最初の大統領任期の際に、われわれは『戦略的パートナーシップの強化』を正式に確認した。アメリカはカザフスタン最大の投資国であり、投資額は1千億ドル(約15兆円)を超える。今回は両国企業間で170億ドル(約2兆5500億円)超の協力協定が署名された」と述べ、エネルギー、鉱物、産業分野での潜在的協力額は5千億ドル(約75兆円)を超えると示し、「米国投資家には私自身が支援を行う」と約束した。

資金難に直面する中共や、戦争で経済が疲弊するロシアを背景に、カザフスタンが米国寄りの道を選ぶのは当然の流れである。

トカエフ氏はトランプ氏と個別会談を行い、さらにイスラエルのネタニヤフ首相を交えた電話会談にも臨んだ。その後、トランプ氏はカザフスタンの「アブラハム合意」加盟を発表した。

カザフスタンは中共の主張する「覇権」や「強権」に同調することなく、米国支持を明確にした姿勢により、中共を大きく困惑させた。

ウズベキスタン大統領の発言

ウズベキスタンのミルジョエフ大統領は、「C5+1」首脳会議後の声明で「今回の会議は、地域の貿易・交通・エネルギー連携を促す有効な枠組みであり、中央アジアと米国の戦略対話が新たな段階に入ったことを示している」と述べた。

同氏は、常設事務局や閣僚級の投資・貿易調整委員会、さらに鉱物の探査・採掘・加工を協調する特別委員会の設立を提案。米国との協力を強化し、中央アジア・南コーカサス・欧州を結ぶ交通・通信・エネルギー計画を推進すると述べ、「米国の技術導入により地域の農業を近代化したい」と語った。

次回首脳会議はウズベキスタンのサマルカンドで開催することを提案した。

トランプ氏との会談後、両国は関係が「戦略的パートナーシップの新段階」に入ったと発表した。ミルジョエフ氏はトランプ氏に「内外政策での偉大な成果に心から祝意を表する」と述べ、正式訪問を要請した。

トランプ氏は「驚くべき経済協定が成立した」と述べ、「今後3年間でウズベキスタンが米国主要産業への購入・投資を計350億ドル(約5兆2500億円)、10年以内に1千億ドル(約15兆円)超とする」と明らかにした。

この動きもまた、北京にとって大きな打撃だろう。

他の3か国の動き

残る3か国も米国との協力強化への意思を示した。

キルギスのジャパロフ大統領は会議で「トランプ大統領と二国間会談を行い、『C5+1』首脳会議に参加できたことを光栄に思う。キルギスは米国を重要な外交パートナーと位置づけ、貿易拡大と投資促進を望んでいる」と述べた。

また「2024年、キルギスのIT専門家は63か国以上に1億3千万ドル(約1950億円)のサービスを輸出し、その40%は米国向けだった」と語り、「今回の会議が中央アジアと米国の多面的パートナーシップを活性化する契機となる」と述べた。

タジキスタンのラフモン大統領は会議で「米国との経済協力強化、貿易拡大、投資促進の重要性」を強調した。トランプ氏との会談後の声明では、「現在タジキスタンでは70社超の米国企業が操業しており、特にレアメタル分野での採掘・加工協力が進展している。双方は、この協力拡大が共通の利益になると認識している」と記された。

トルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領も会議後にトランプ氏と会談し「今回の『中央アジア・米国首脳会議』は、両国が幅広い分野で協力を深める新たな機会を提供した。この会談がトルクメニスタンと米国の伝統的友好関係をさらに発展させる重要な一歩になると確信している」と述べ「あらゆる主要分野で協力を深化させたい」と語った。

包囲される中共

中央アジア5か国がすべて米国との協力拡大に前向きな姿勢を示し、中共は深刻な打撃を受けた。

トランプ氏の影響力は、すでに東アジアの日本・韓国から、東南アジア、インド、さらに中共が「鉄の同盟」と呼ぶパキスタンにまで及び、今や中央アジアにまで広がっている。

東・南・西の三方向から包囲網が形成されつつある中、中共は盲目的に米国との対立を続け、周辺国を威圧してきたが、結果的に誤算が明らかになったのである。

楊威
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