北朝鮮による拉致被害者の家族会と支援団体「救う会」が12日に集会を開催し、専門家らが出席し、国際情勢が拉致問題に与える影響について意見が交わされた。集会では、米国によるベネズエラおよびイランへの軍事行動が北朝鮮指導部に強い衝撃を与えているとの分析が示された。
マドゥロ氏拘束で 金正恩が妹と軍に緊急指令
麗澤大学の西岡力特任教授は、米国によるベネズエラへの軍事介入とニコラス・マドゥロ大統領拘束の事例を挙げ、これが金正恩および北朝鮮指導部に「大きなショック」を与えたと説明した。
西岡氏は、自身が入手した情報として、「一部では平壌攻撃の可能性も指摘される中、(金正恩が)次に平壌を攻撃する可能性があるか否かについて『徹底的に調べろ』との指令を出した」と述べ、「信用できるのは妹しかいないため、金与正がキャップになって米国の動きをリアルタイムで毎日のように金正恩に報告している」と明かした。
続けて、「ベネズエラのようなことを北朝鮮でも絶対起こしてはいけない」というのが、北朝鮮政権の思惑だという。つまり、北朝鮮はベネズエラの事例を自国政権の安全保障問題として受け止めているという見方だ。
西岡氏はまた、ベネズエラのマドゥロ大統領が拘束された後、「1月12日付で『人民軍に最高首脳部を命がけで守るのに必要な全ての非常対策を立てる問題』と題する金正恩批准文書が下った」と明かした。
冷戦後の国際政治では、米国が軍事行動によって独裁政権の崩壊につながった例は少なくない。代表例としては、2003年のイラク戦争で失脚したサダム・フセイン政権や、2011年のリビア内戦で崩壊したカダフィ政権などが挙げられる。
こうした前例は、権威主義体制の指導者にとって共通の恐怖となっているとみられる。ベネズエラの事例が北朝鮮に強い衝撃を与えた背景にも、同様の心理があると考えられる。

北朝鮮が衝撃を受けたもう一つの事例が、米軍によるイラン核施設への攻撃だ。
西岡氏によると、昨年6月に米軍がイランの核施設を地中貫通弾「バンカーバスター」で破壊したことを受け、北朝鮮は中国との国境付近などにある、核攻撃にも耐えるとされる地下トンネルの強化工事を開始したという。
北朝鮮は長年、地下施設網によって指導部や軍事施設を保護する戦略を採ってきたが、米軍が地下施設攻撃能力を実際に行使したことは、同国の安全保障戦略にとって重大な警告となった可能性がある。
米の軍事行動で 金正恩がトランプ氏との対話模索か
こうした米国の軍事行動は、北朝鮮の外交姿勢にも影響を与えている可能性がある。
麗澤大特任教授の江崎道朗氏によると、ロイターの報道を引用して、「北朝鮮が米国との関係を適切に管理しておかないと、自分たちも攻撃対象になりかねないと考えている」と語った。
韓国紙などの分析でも、イランやベネズエラの事例は「米国からの警告を無視した場合の結果」として北朝鮮に受け止められていると指摘。トランプ米大統領からのシグナルを無視したり拒否したりすれば、イランと同じ状況になる可能性があるとの見方だ。
そのため、北朝鮮としてはイランの轍を踏まないためにも、トランプ政権側からの交渉に応じざるを得ない状況にあるとの分析も出ている。
具体的には、今後予定される米中首脳会談のタイミングに合わせ、北朝鮮が何らかの外交的な動きを見せる可能性があるとの見方も浮上している。
西岡氏は、北朝鮮指導部の心理について「トランプ大統領は何をするかわからない人物であり、口だけではなく実際に行動する」と認識されていると指摘する。北朝鮮の外交は、相手の行動を見極めながら圧力をかける「瀬戸際戦術」で知られるが、相手の行動が読めない場合には、むしろ慎重な姿勢を取る可能性もある。

もっとも、北朝鮮はイランとは異なり、核弾頭搭載可能なミサイルを保有しているため、実際に指導部攻撃を行えば核報復のリスクがあるとの見方が一般的である。
西岡氏はこの点について、北朝鮮内部では次のような疑念があると指摘する。仮に指導部が壊滅した場合、残された幹部が核攻撃命令を実行するかどうかは不確実だという。
「自分たちが殺されてしまって、家族も身辺も皆殺された際、『核を打て』と言っておいたって、(金正恩が)幹部らが本当に打つだろうかと思っている」と述べ、「恐怖で皆が動いているから、(金正恩が)一定程度忠誠心が本当にある人もいないのも知っている」と西岡氏は語る。
恐怖による統治体制では、指導者自身が幹部の忠誠を完全には信頼できないという構造的問題があるとみられる。

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