オピニオン いつから首切りが通常の外交対話の一部になったのか?

礼節ない戦狼外交の行方 中共の威圧的外交とその本質

2025/12/01 更新: 2025/12/01

論評

中国共産党(中共)の外交官らの言動は、国際法を顧みることなく自国の戦略的・経済的利益を追求し、ますます好戦的になる中国共産党政府の姿勢と完全に一致している。

「自分からずかずか首を突っ込んできた汚い首。容赦なく即刻叩き切るしかなかろう。覚悟はできているのか?」

 

薛剣中国駐大阪総領事が、11月9日にX(旧Twitter)へ投稿した(現在は削除済み)

この外交儀礼を無視した薛大使の発言は、高市早苗首相が7日に国会で述べた内容への反応であった。高市氏はその場で、中国が台湾を封鎖すれば日本に「存立危機事態」が生じる可能性があり、自衛隊出動につながり得ると指摘した。

薛大使の発言は、経験豊富な外交官のものというより、まるで野蛮人の物言いであった。

問題の検証

■ 薛 剣(シュエ・ジエン)

薛大使(57)は江蘇省淮安市出身。淮安は中国の一般的な地級市で、行政区分上は省の下のレベルに相当する。1992年、北京外国語大学で日本語・日本文化を学び卒業。その後外務省で一貫して対日外交に従事してきた。

近年の主な役職は以下の通り(いずれも上級ポスト)

2014–2018年: 駐日中国大使館 公使参事官

2018–2019年: 中国外交部アジア局 参事官

2019–2021年: 同・アジア局 副局長

2021–現在: 駐大阪総領事(大使級)

つまり薛大使は、日本の文化・政治・政府を熟知している。外交経験は30年以上、そのうち8年以上が対日勤務であり、世界の外交団が共有する標準的な規約を理解していないはずがない。

外交儀礼の原則

外交官の最も基本的なルールは「他国、特に赴任先政府を公に非難しないこと」である。
これは1961年のウィーン条約で規定された国際慣習法かつ外交実務の基礎だ。

ウィーン条約第41条にはこうある。

「外交特権・免除を持つ者は、受入国の法律を尊重し、その内政に干渉してはならない」

理由は明快だ。首脳を侮辱するような言動を公に行えば、その外交官は信頼も交渉能力も失う。
外交の鉄則は 「公では称賛、批判は非公開で」世界中の大使館はメディアやSNSでホスト国を批判することを避けている。

しかし薛大使は高市首相に「斬首」を示唆した。これは重大な外交規約違反であり、個人への脅迫にすら見える。平職員なら処分の対象だが、現在までのところ北京は彼を召還も処罰もしていない。
すなわち、中央指導部が黙認していると考えるほかない。

類似する 中共外交官の越権事例

薛大使の暴言が特殊例かと言えば、そうではない。
近年、中国外交団が外国で外交慣行を破った事例は数多い。

2010年 カナダ
中国外交官が内政干渉(スパイ容疑)で退去処分。

2019年 アメリカ
中国大使館職員がアメリカ軍基地へ無断侵入し秘密裏に国外退去。

2019年 スウェーデン
中国大使が報道機関に対し「散弾銃で撃ち込む」と威嚇 し、外務省が呼び出し。

2021年 フランス
ルー・シャイ大使が学者を「小悪党」と侮辱したが、注意処分どころか後に昇格。

2022年 イギリスマンチェスター
香港デモ参加者を中国領事館職員が暴行し、 関係者6人が帰国。

2024年 チェコ
 台湾副総統を尾行し「衝突工作」を準備 して、大使が召還抗議。

2024年 フィリピン
中国外交官に海軍会話の盗聴・リーク疑惑が浮かんだが、中国側は否定し処罰なし。

つまり薛大使の言動は、過去の**“狼外交”**と呼ばれる攻撃的外交姿勢の延長線上にある。

結論

近年の外交規約軽視は、中国人民解放軍による周辺国威圧(台湾海峡・南シナ海・尖閣・黄海など)と軌を一にしている。

アメリカ駐日大使ジョージ・グラス氏は11月9日、Xでこう評した:

「また仮面が剥がれた。イスラエルをナチスに例えたのもつい先日のことだ。
今度は高市首相と日本国民への脅迫だ。
中国が繰り返し口にする『良き隣人』にまず相応しく振る舞うべきだ。」

まさに、外交儀礼を保ちながら野蛮さを鋭く突く一撃だった。もっと続けてほしいものだ。

Stu Cvrk
米国の退役軍人。退役時の階級は大尉。米海軍で30年にわたり現役・予備役を問わずをさまざまな任務に就き、中東や西太平洋での豊富な作戦経験を持つ。海洋学者およびシステムアナリストとしての教育と経験を積み、米海軍兵学校を卒業。兵学校時代に受けた古典的なリベラル教育は、自身の政治評論の重要な基盤となっている。
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