日豪パートナーシップ 安保と経済で深化 豪大使が講演

2025/12/09 更新: 2025/12/09

オーストラリアのジャスティン・ヘイハースト大使は2025年12月8日、日本記者クラブで講演を行い、日豪間の「特別な戦略的パートナーシップ」が進展していることへの誇りを表明した。

この講演は、両国政府が安全保障環境の悪化に対して積極的に対応を進めている最中に開催された。

日豪関係は、来年(2026年)に友好協力基本条約の50周年を迎えるが、その基盤は数十年にわたる相互依存と信頼に基づいている。

深刻化する安保環境への対応

両国は、安全保障環境の悪化に対応するため、防衛・安全保障分野で協力の「さらなる実質化」を進めている。大使の講演に先立ち、両国防衛大臣は新たな「戦略的防衛調整の枠組み」を発表し、安全保障協力を深める姿勢を示した。9月に行われた日豪「2+2」会議では、両国が「インド太平洋における平和と安定を維持し、紛争を抑止・防止するためにあらゆる国家運営のツールを用い、米国およびその他の主要パートナーと協力するという確固たるコミットメントを持つ、志を同じくする国々の間の調整の中心的な柱として行動する」という明確なシグナルを発信した。

具体的な防衛協力の進展は目覚ましい。ヘイハースト大使は、「両国は相互運用性を高め、前例のない防衛産業協力を展開し、強固な情報交換を行っている」と述べた。

オーストラリア海軍は「もがみ」級フリゲート艦を採用し、今年初めて米国を加えた三カ国空軍戦闘演習を日本で完了した。また、合同演習「タリスマン・セイバー」には過去最高の数の日本人要員が参加し、日本の12式地対艦誘導弾の実弾射撃が初めて実施され、画期的な日豪円滑化協定(RAA)の下で、初めてオーストラリアの軍艦が日本で修理・整備された。

防衛・安全保障以外にも、サイバーセキュリティ、宇宙協力、およびサプライチェーンのレジリエンス強化、特に重要鉱物における協力も進められている。また、国際的な危機発生時に互いの国民を助け合うための協定も締結されている。

記録的水準の経済連携と重要鉱物協力

日豪間の貿易と投資の繋がりは記録的な水準に達しており、オーストラリアは日本のエネルギーおよび食料安全保障にとって不可欠なパートナーである。オーストラリアは日本のLNGの約40パーセント、石炭の65パーセントを供給している。また、日本の食料消費カロリーの約12パーセントをオーストラリアが供給している。

日本からオーストラリアへの直接投資(FDI,Foreign Direct Investment:外国直接投資 )は2024年に1411億ドル(約20兆円)という過去最高額を記録し、オーストラリアへの全FDIの11.95%を占めた。日本は累計FDIで第3位であり、過去11年間毎年FDIを増加させている唯一の外国投資国である。最近の目立った投資例としては、三井物産のRhodes Ridge鉄鉱石事業(5000億円)、ルネサスの豪州半導体設計会社アルティウム買収(9370億円)、サムティによる豪州不動産会社UniLodgeへの投資(640億円)が挙げられる。

重要鉱物の分野では、日豪の信頼関係が経済安全保障の利益をもたらしている。2011年に始まったライナス社の事例は象徴的であり、オーストラリアのレアアース資源と日本の技術・投資を組み合わせることで、日本への軽希土類供給の多様化に貢献した。そして今年10月、ライナス社から日本へ重希土類が初めて出荷され、中国国外で初めての重希土類サプライチェーンが構築された。ガリウム、蛍石、ジルコニウムも今後の協力対象である。

今後の日豪関係と世界情勢の見通し

ヘイハースト大使は「日豪両国は、この不確実な世界情勢下において、共通の利益を守るために行動している」のだと述べた。

世界情勢の見通しとして、大使は「平和と安定は保証できない」「開かれた経済環境は試練にさらされている」と指摘した。オーストラリアと日本は、防衛、外交、サイバー能力を強化し、国力を築いている。両国は、紛争を抑止・防止するだけでなく、協力を促進し説得するための手段として、ルールと国際法を推進している。アジアおよび太平洋地域における開発と連結性を支援しており、安全な海底ケーブル敷設への資金提供はその一例である。オーストラリアのペニー・ウォン外務大臣の言葉を借りれば、両国はインド太平洋の「居住者」であるだけでなく、「開かれた安定した地域の設計者」である。日豪が協力することで、インド太平洋はより良く、より安全な場所になる。

今後の日豪関係の見通しとして、パートナーシップは特に防衛と安全保障において、さらに大きな実質を伴うものとなる。オーストラリアは、日本の防衛・安全保障の変革とエネルギー転換における模範的なパートナーとなることを目指している。オーストラリアにとって、強く安全な日本は極めて重要であり、戦略的バランスの維持、サプライチェーンの確保、紛争の抑止、そして両国の国家的な課題解決のためには、日本との効果的なパートナーシップが必要不可欠である。

経済面では、オーストラリアの豊富な再生可能資源と、日本の資本、技術、買取を組み合わせることで、クリーン燃料やグリーンメタルにおける新しい市場が創出される見込みである。

また、両国の関係深化に伴い、人的交流も活発化しており、オーストラリアから日本への渡航者は過去最高を記録している。特に、オーストラリアは現在、日本の高校生の海外修学旅行先として第1位となっている。

このように、日豪両国は、相互依存と信頼を基盤としつつ、防衛・安全保障および経済安全保障を強化することで、日本とオーストラリア双方をより強く、より豊かにするパートナーシップを構築している。この協力関係の拡大は、インド太平洋地域全体に良い影響を与え続けるであろう。

ヘイハースト大使は最後に、「日本でのビジネス、大学、政府との仕事を通じて、そしてこの素晴らしい国を旅する中で、あらゆる関わり合いにおいて、私は日本の人々の創意工夫、献身、そして回復力に感銘を受けてきた。私は、オーストラリアだけでなく、日本をもより強く、より豊かにするこのパートナーシップに、私自身が貢献できたことを嬉しく思う」と締めくくった。

大紀元エポックタイムズジャパンの速報記者。主に軍事・防衛、安全保障関係を担当。その他、政治・経済・社会など幅広く執筆。
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