統合幕僚監部は令和7年12月12日、中国共産党(中共)海軍のクズネツォフ級空母「遼寧」(艦番号「16」)を中心とする複数の艦艇が、太平洋上の海域において航行していることを確認したと発表した。特に12月9日(火)以降、艦載戦闘機及び艦載ヘリによる発着艦訓練が活発化し、日本の周辺海域における中共海軍の活動レベルの高まりが示されている。
活発化する空母艦載機の運用
海上自衛隊は、9日以降も引き続き、「遼寧」を含む中共海軍艦艇を太平洋上で確認した。12月10日(水)には沖大東島の南東約210km、11日(木)には沖大東島の南西約390kmの海域において航行している状況を確認している。確認された艦艇には、空母「遼寧」のほか、ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦2隻(117及び124)が含まれていた。
この期間中、「遼寧」からの艦載機の活動が顕著であり、発着艦の回数は、9日に約20回、10日に約20回、そして11日には約60回に及び、12日(金)にも約20回確認された。これにより、12月6日(土)から12日(金)までに確認された艦載機の発着艦実績は、合計で約260回となった。
沖縄本島・宮古島間を通過し東シナ海へ
その後、12日(金)には、「遼寧」(16)、レンハイ級ミサイル駆逐艦(101)、ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦2隻(117、124)、及びフユ級高速戦闘支援艦(901)の計5隻が、沖縄本島と宮古島との間の海域を北西に進み、東シナ海へ向けて航行したことが確認されている。

この中共海軍艦艇の動向に対し、防衛省・自衛隊は、海上自衛隊第6護衛隊所属の護衛艦「てるづき」(横須賀)及び第5航空群所属の「P-3C」(那覇)により、警戒監視及び情報収集を行った。また、艦載機の活動に対応するため、航空自衛隊の戦闘機を緊急発進させる等の措置が取られた。
遠洋運用能力の向上と日本の対応
今回の「遼寧」艦隊の活動の背景には、中共海軍が空母を中心とした機動部隊の遠洋における実戦的な運用能力の確立を目指していることが挙げられる。太平洋上の広大な海域で、長期間にわたり多数の艦載機発着艦訓練を集中的に実施したことは、中国が空母航空作戦能力の練度向上を図っている明確な兆候である。複数のミサイル駆逐艦や高速戦闘支援艦を伴った艦隊行動は、空母を護衛し、洋上で補給を完結させる能力を示すものである。
常態化する遠洋訓練と継続的な監視の必要性
今後、中共海軍は、今回の実績を基に、空母艦隊による太平洋への進出と、それに伴う長時間の洋上訓練を常態化させる可能性が高い。これにより、南西諸島周辺や太平洋の公海における中共の海軍活動は一層活発になるものと予測される。
防衛省・自衛隊は、この戦略的な動きに対し、引き続き、海上自衛隊の艦艇や航空機による警戒監視・情報収集活動を継続していく必要がある。また、艦載機の活動範囲が拡大する傾向にあるため、航空自衛隊は今後も、必要に応じて戦闘機の緊急発進(スクランブル)を含む厳重な対応を維持していくものと見られる。周辺海域の安全保障環境の透明性を確保するため、中共海軍の動向に対する日本の継続的な監視活動は、その重要性を増している。
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