【十字路口】習近平「七つの悪夢」 イラン危機で中国共産党はイランを救えず

2026/01/14 更新: 2026/01/14

トランプ米政権のイラン制裁で中国共産党(中共)支援できず、習近平を襲う「七つの悪夢」とは? マドゥロ逮捕の恐怖、ハメネイ斬首、軍内クーデターまで詳細分析。イラン政変の行方と中共孤立を解説する。

ご存じの通り、イランでは昨年末から反政府抗議運動が勃発し、全国各地で市民が街頭に繰り出して経済難や生活苦に抗議し、当局の退陣を求めた。しかし政権側は全国的にインターネットと通信を遮断し、大規模で暴力的な鎮圧を行った。その結果、多数の死傷者が発生した。

トランプ米大統領も直ちに声明を発し、「イランの人々は自由を求めている」と述べ、軍事介入を含む選択肢を検討していることを明らかにした。アメリカはイラン国民を支援する用意があるとも表明した。

ところが1月11日、トランプ氏は突如として「イラン側から電話があった」と明かし、イラン政府が「核合意」をめぐる取引交渉に応じる姿勢を示したと述べた。つまり、イランは核兵器開発を放棄する代わりに、アメリカに対して軍事介入を控えるよう求めた形である。イラン側もアメリカとの交渉の用意があるとしながら、「戦争への準備」も整えていると表明し、もし米軍が攻撃を仕掛ければ、中東の米軍基地を報復攻撃すると警告した。

同日、「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙は、トランプ政権が13日にイラン情勢への対応策を協議する会議を開く予定だと報じた。想定される選択肢は三つである。第一に、イラン高官への経済制裁をさらに強化すること。第二に、イラン政府に対するサイバー攻撃により軍事施設を麻痺させること。第三に、軍事攻撃の発動である。

トランプの関税制裁:イラン経済孤立へ

11日午後、ホワイトハウスはトランプ大統領の写真を公開したが、その上には「神よ、米軍を守り、アメリカを守りたまえ」との文言が添えられており、メディアは騒然となった。さらに「ペンタゴン・ピザ指数」も急上昇した。これは国防総省の建物ペンタゴン周辺のピザ店の売上が通常より活発になった際に、「米軍が出兵を準備しているのではないか」と推測される指標である。

一方、12日朝にはホワイトハウス報道官が「トランプ大統領がどう判断するかは本人にしか分からない」と述べ、各国は決定を待つ姿勢を見せた。そして12日午後、ついにトランプ氏が動いた。彼はインターネット上で声明を発表し、即日以降、イランと貿易関係を持つすべての国は、アメリカとの貿易において一律25%の追加関税を支払わなければならないと宣言した。この関税措置はすべての産業分野に及ぶ。

この措置は極めて大胆で、かつ新しい発想である。トランプ氏はイランとの交渉を続けつつ、非軍事的な「関税戦争」を先制的に仕掛けることで、各国にイランとの取引をためらわせる環境を作り出した。狙いはイラン経済と金融を全面的に孤立させることである。この戦略は短期的に政権を「ノックアウト」できるものではないが、出血を強いながら徐々に体力を奪う「緩やかなKO」であり、やがてアメリカの交渉条件を受け入れざるを得なくする作戦でもある。

暴力を平和で制する見事な一手ではあるが、アメリカ内外に新たな圧力を生み出す可能性もある。果たしてこの一手でイラン政権を崩せるのか。トランプ氏には他にどのような対イラン政策の選択肢があるのか。そして今回のイラン反政府運動は、いかなる結末を迎えるのか。さらに中共はどのような動きを見せるのか。以下に詳しく見ていく。

対イラン軍事オプション4選:ハメネイ斬首作戦など

記事執筆時点で、トランプ氏はイランを孤立させる関税障壁を打ち出した以外には、軍事面での対応方針を明確にしていない。ただし、地上部隊の派遣は行わない方針を示している。では、どのような軍事オプションが残されているのか。以下に整理する。

選択肢1:最高指導者ハメネイ斬首によるイラン政権交代

最も注目されるのがこの選択肢である。米軍はすでにベネズエラのマドゥロ大統領を生け捕りにする作戦が成功しており、同様の「斬首作戦」をイラン最高指導者ハメネイ師に対しても実行可能と見る声は多い。しかし、この作戦は難度が極めて高い。マドゥロ氏拘束の一件以降、ならず者国家の指導者たちは防備をさらに強化し、居場所も頻繁に変えている。米側が最新情報を更新するにも時間を要する。

さらにイラン側は昨年11月、「外国勢力によるハメネイ暗殺未遂があった」と非難しており、安全保障体制を一層強化している。よって現時点で斬首作戦の成功は容易ではない。またアメリカがマドゥロ氏逮捕時に「麻薬犯罪人」として司法手続きを利用したのに対し、ハメネイ師はアメリカ司法省の指名手配犯ではない。このため米側には法的な「大義名分」が欠け、出兵すれば国家間戦争と見なされるおそれがある。トランプ氏が慎重になるのは当然である。

仮にハメネイ師を排除しても、「次の政権を誰が担うのか」という根本的課題が残る。現状、反政府運動には統一した指導者が存在しない。米側がイラン国内の改革派指導者や、国外亡命中のレザー・パフラヴィ王太子を擁立する意向を持たないかぎり、権力は結局、イスラム革命防衛隊(IRGC)に握られる可能性が高い。権力は銃口から生まれるからである。

また、パフラヴィ王太子が帰国しても現地に軍事的基盤はなく、米軍の支援なしでは政権の安定は難しい。したがって「斬首作戦」は見かけほど容易ではなく、軍事・政治両面で極めて高リスクな選択肢である。

選択肢2:イラン核施設など重要軍事拠点への爆撃

二つ目の選択肢は、昨年実施された「ミッドナイト・ハンマー」作戦に類似する戦略である。米軍がイランの主要核施設など重要軍事拠点を再び爆撃すれば、地上戦を避けつつ大きな威圧効果をもたらす。短期的には政権の士気をくじき、国民の抗議を後押しするだろう。

しかし、当局による民衆弾圧が緩む保証はない。ハメネイ師をはじめ支配者層にとって、弾圧の停止は自己崩壊を意味するからである。彼らにとってこれは生死を賭けた選択であり、武力による鎮圧をやめることは自らの死刑宣告に等しい。

選択肢3:イスラム革命防衛隊・バスィージの軍事力を徹底的に弱体化

三つ目の選択肢は、イスラム革命防衛隊の上層部やバスィージ民兵組織を標的にすることで、政権の「手足を切り落とす」ものである。幹部の一部を精密攻撃で除去すれば、組織内の忠誠構造に揺らぎが生じる可能性がある。

革命防衛隊の規模は十数万人におよび、さらに民兵組織バスィージも存在する。米側が巧みに離反を促し、一部が民衆側へ寝返るようになれば、内乱と呼応して短期間のうちに政権崩壊が起きる可能性もある。軍内部でクーデター的な動きが起き、銃口が政権側に向けられれば、イランの政治地図は一気に塗り替えられるだろう。

実際、イラン軍内部ではすでに変化を求める声が高まりつつあり、トランプ氏に対して「一刻も早く出兵し、イランを救い、イランを再び偉大にしてほしい」と公に呼びかける人物も現れている。

選択肢4:米イラン交渉による政権交代シナリオ

四つ目の選択肢は、米イラン交渉による軍事衝突なき幕引きである。ホワイトハウスは12日、「トランプ氏はイランに対抗するための致命的武力行使を恐れない」としながらも、「外交を優先する」と表明した。交渉で最も重要なのは取引材料、すなわち「カード」である。

イランが「核制限協定」をカードに使うのであれば、それはトランプ氏を見誤った対応である。トランプ氏は出馬前から一貫してイランの核開発を厳しく批判しており、昨年6月の「ミッドナイト・ハンマー」作戦以降、核施設はすでに大きな打撃を受けている。したがって米側が再び核協定で妥協する可能性は低い。むしろ追加爆撃をちらつかせる圧力外交を続ける可能性が高い。

双方の交渉目的を整理すれば、イラン政府は「政権の存続・利益の保持・身の安全」の三条件を求める。一方のアメリカにとって、イラン国民の自由と人権の回復こそ最優先課題である。トランプ氏はイラン国民がこれ以上殺されることを望まず、暴政を敷くイスラム政権に対して「You’re fired!(解雇だ!)」と言い放ちたいと考えている。

アメリカは「ハメネイ師のイスラム政権は資金を伴って国外退去してよい。ただし、今後二度とイラン新政権に干渉しないこと。違反すれば米軍は精密な斬首作戦で報復する」という条件を提示する可能性がある。この条件が成立すれば、歴史的な平和的体制転換となりうる。しかしイラン当局が容易に屈服するとは考えにくい。最終的にはアメリカが軍事・経済・金融の三面包囲戦略を展開し、イランを妥協に追い込む可能性が高い。

米軍の対テロ作戦とイランの「報復」能力

「アメリカが攻撃を仕掛ければ、イランは戦争で報復する」と警告する向きもある。しかし現に1月10日、米軍はシリアで空爆を実施し、過激派組織「イスラム国(ISIS)」の拠点や兵器庫を攻撃した。この作戦は、米軍を攻撃しようとするあらゆる敵に対する警告でもある。「もし米軍を攻撃するなら、我々は地の果てまで追撃する。信じられないなら試してみろ」というメッセージである。

したがって、イランも中国共産党と同じように口では強気だが、果たして拳は本当に強いのか――その答えは、そう遠くないうちに明らかになるだろう。

中国共産党とイラン 習近平の「七つの悪夢」と中共体制の行方

イランは中共の親密な同盟国であり、中東における代理勢力でもある。トランプ政権がイランを包囲する中、中共の対応は注目されている。

中国外交部は12日の記者会見で、「イラン政府と国民が困難を克服し、国家の安定を維持することを望む。他国の内政干渉に反対する」と述べた。これは事実上、イラン政権の体制維持を支持する立場を示す発言である。すなわち中共は、イラン国民が自由を得ることを望まず、中国国民と同じように統制下に置くことを望んでいると言える。

マドゥロ氏逮捕で世界の反独裁勢力は士気を高めた。もしイランでも体制転換が実現すれば、中共は民衆蜂起の連鎖を恐れざるを得ない。イランは中共政権の「国際的防火線」であり、同政権は背後支援に動く可能性がある。しかし実際、今の中共に打てる手は限られている。

第一に、最大の懸念は米中貿易戦争と先端技術分野での制裁圧力である。習近平は4月にトランプ氏を北京に招く予定だが、イラン問題で正面衝突すれば訪中自体が中止されるおそれがある。その場合、中国経済への打撃は深刻となり、習近平は責任を一身に負うことになる。さらにアメリカが台湾への武器売却を拡大し、日本やフィリピン、韓国への兵器配備を加速させる可能性もある。そうなれば「武力による台湾統一」の夢は遠のく。

また、マドゥロ氏逮捕は習政権に深刻な精神的衝撃を与えた。習近平は以降、身の安全を極度に懸念し、「七つの悪夢」に苛まれているとされる。

習近平を苛む七つの悪夢とは

第一の悪夢は、マドゥロ氏が斬首作戦で拘束されたことで、独裁者たちが自らの邸宅の安全に不安を抱き始めた点である。習近平も宿泊先を頻繁に変えるなど、米側と内通者の双方に警戒を強めているのだろう。

第二の悪夢は、身辺警護への不信である。マドゥロ氏が側近を信用できず、キューバ人部隊を護衛にしたが、米軍特殊部隊の攻撃に全く対抗できなかった。この失敗を受け、習近平も自身の護衛体制に疑念を抱いているとみられる。

第三の悪夢は、内部の裏切りへの恐怖である。マドゥロ氏拘束の情報は身内のリークによるものとされる。一方の中共では反習派が各層に存在し、特に軍内には仇敵が多い。習近平は今後、公の場への登場をさらに控えると見られる。

第四の悪夢は、ベネズエラで中共製兵器が役立たずだったという事実である。中共の軍事力神話が「張り子の虎」に過ぎない可能性が露呈した。

第五の悪夢は、自国軍の実戦能力への疑念である。米軍は長年の実戦経験によって圧倒的な精度と速度を誇る。一方の中共軍は宣伝で作り上げられた虚像ではないのか。習近平自身が不安を隠せない。

第六の悪夢は、米軍が無傷で圧勝した事実が中共軍の「臆戦心理」を誘発する可能性である。命の安全を優先して離反や寝返りが続出する懸念もある。

第七の悪夢は、もし台湾海峡に出兵を命じた場合、軍の一部が中南海に進軍してクーデターを起こす可能性である。習近平には忠誠心と能力を兼ね備えた人材を見極める眼力がなく、内部掌握は極めて不安定である。

これら七つの悪夢だけでも、習近平が長期にわたって不安と抑うつに悩まされるには十分である。この状況下で中共はアメリカとの衝突を避けるしかなく、イランやキューバのような「ならず者国家」を支援する余力も乏しい。結果として、親中勢力は次々と形勢を変え、アメリカ側に流れていくことになるだろう。中共はもはやイランを救うこともできず、国際社会で孤立を深める運命にある。

唐浩
台湾の大手財経誌の研究員兼上級記者を経て、米国でテレビニュース番組プロデューサー、新聞社編集長などを歴任。現在は自身の動画番組「世界十字路口」「唐浩視界」で中国を含む国際時事を解説する。米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)、台湾の政経最前線などにも評論家として出演。古詩や唐詩を主に扱う詩人でもあり、詩集「唐浩詩集」を出版した。旅行が好きで、日本の京都や奈良も訪れる。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。
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