中国版スターリンク計画 中共が2026年に軌道監視能力と軍事宇宙戦力を拡大 

2026/01/27 更新: 2026/01/27

解説

中国は2026年に、これまで以上の回数でロケットを打ち上げ、数百基規模の衛星ネットワークや軍事向け監視衛星を配備することで、宇宙空間での軍事力を大きく強化し、米国が握ってきた主導権に本格的に挑もうとしている。

中国は1月13日、軌道投入任務2件を実施して2026年の宇宙ミッション日程を開始した。記録的な打ち上げ回数となる可能性がある大規模な計画の幕開けである。中国は「軍民融合」を軸に、国家主導の打ち上げを70回超実施し、商業ロケットを含めると総数が100回を超える可能性があると見込まれている。これは2025年の92回から大幅な加速となる。

2026年計画の中核をなすのが、数百基規模の衛星を一体のネットワークとして軌道に並べるメガコンステレーションであり、国網(Guowang)は約310基、千帆(Qianfan)は約324基の投入が見込まれている。両コンステレーションだけで2026年に計画される打ち上げ数は計約634基となり、2025年に中国が配備した約300基の2倍を超える。

最初の任務では、長征6Aロケットが太原から打ち上げられ、遥感50(01)衛星の軌道を赤道に対して傾斜角142度という地球の自転とは逆行する軌道に投入された。

中国当局は同衛星の役割を、土地調査、作物推定、災害監視など民生目的として説明したが、遥感シリーズは、レーダー、光学撮像、信号情報などを含む軍事偵察任務を支援していると広く理解されている。

軌道傾斜角142度の逆行軌道はコスト増を伴う。地球の自転に逆らって打ち上げるには、追加の速度と燃料が必要となるが、中国は監視能力の向上を得るためにこの軌道を選択した。

この軌道傾斜は、地上軌跡のカバーを高速化し、北緯・南緯およそ52度の中緯度帯への反復的なアクセスを可能にする。対象には米本土の大半、日本、韓国、グアムの主要な米軍施設、太平洋の重要な海上交通路が含まれる。頻繁な再訪能力により、固定施設の観測にとどまらず、基地、空母打撃群の航路、兵站拠点の動きを継続的に把握できる。

高度に逆行する軌道の採用は、全天候・昼夜を問わず撮像可能な合成開口レーダー(SAR)の搭載を示唆している。SARは、雲や煙、暗闇を通して地表を撮像でき、晴天と日中を必要とする光学センサーとは異なる。

逆行軌道は異なる角度からの頻繁な再訪を可能にし、断続的な画像取得ではなく、継続的な軍事監視に適している。

遥感シリーズのデュアルユース性と併せると、この軌道特性は、太平洋における米軍活動、さらには米本土上空に対する持続的監視に最適化されていることを示す。中国は遥感衛星を民生資産として位置づけているが、多くが偵察、目標設定、信号情報を支援する軍用級センサーを搭載していると考えられている。

台湾有事の際には、上空を頻繁に衛星が再訪することにより、ミサイルの目標設定、海洋状況把握、早期警戒を保証し、断片的な観測ではなく、ほぼ連続的な更新によって米軍の動きを追跡し、妨害する助けとなる可能性がある。

神舟20号宇宙船と3人の宇宙飛行士を乗せた長征2号Fロケットが、2025年4月24日にゴビ砂漠の酒泉衛星発射センターから打ち上げられた(ペドロ・プルドア/AFP via Getty Images)

1月13日の長征6A打ち上げから約1時間後、長征8Aロケットが海南商業宇宙打ち上げ施設から発射され、国網の低軌道メガコンステレーション向けに9基の衛星を投入した。国網はスターリンクに対抗する国家主導の計画で、通信、航法、リモートセンシング、宇宙状況把握を支援するとみられている。

海南省からの打ち上げは、中国がこれまで使ってきた軍事用の宇宙港から、短期間に多くのロケットを打ち上げられる商業向けの施設へと軸足を移しつつあることを示している。複数の衛星をまとめて運ぶのに適した長征8Aは、メガコンステレーションの配備に必要な打ち上げ能力を備えており、2025年12月に初飛行した長征12に続く、再使用型ロケットへの移行を後押しする役割を担っている。

国網は、米国にとって国家安全保障上、無視できない意味を持つ計画と受け止められている。運用内容の透明性が低いことから、民生用に加えて軍事目的にも使えるペイロード(搭載機器)や、安全保障関連の機能を含んでいるとの見方が広がっており、スペースXの機密プログラム「スターシールド」と比較されることもある。

中国の軍民融合戦略を踏まえると、国網は平時から軍事目的に利用されるか、危機時に人民解放軍(PLA)の作戦を迅速に支援する形で動員される可能性がある。

国網は、国家が運営する大規模な衛星通信網として、スターリンクに代わる中国独自の選択肢を提供する。これにより、中国人民解放軍(PLA)は安定した通信手段を確保でき、非常時でも指揮や連絡を維持しやすくなるほか、米国が中国軍の衛星通信を妨害する余地を小さくする効果がある。

実用的な低軌道(LEO)衛星インターネットが整備されれば、第一列島線の外側で活動する航空部隊や海軍部隊でも、通信の速度や届く範囲が広がり、予備手段も確保しやすくなる。これにより、中国人民解放軍(PLA)の通信能力は全体として強化される。

また、国網は複数の層からなる構造を持ち、地上の5Gや将来の6G通信網と組み合わせて使うことも想定されている。こうした仕組みは、中国が進める「情報化戦争」の考え方に沿って、通信ネットワークの強さを高めるとともに、国家が一元的に管理しやすい体制を支えるものとなる。

世界規模のLEOブロードバンド・コンステレーションを戦略的に掌握すれば、中国は国内外での衛星サービス提供能力を高めると同時に、データ流通や協力国に対する影響力を拡大できる。GPSを含む米国主導の宇宙インフラへの依存低下は、主要パートナーに対する米国の影響力を弱め、連合軍の調整を複雑化させる可能性がある。

中国が宇宙分野で能力を拡大しているものの、米国は技術革新の力や、攻撃に強い仕組み、民間企業との連携といった点で、なお重要な優位を保っている。米宇宙軍が進める「レジリエンス競争」と呼ばれる戦略では、多数の小型衛星を分散して配備することで、特定の衛星が失われても全体が機能し続ける体制を整え、厳しい競争環境でも耐えられる宇宙戦力の構築を進めている。

こうした取り組みの一環として、米宇宙開発局は2025年後半、2029年から世界規模のミサイル警戒を行うことを目的に、ミサイルの発射から飛行中の動きを継続的に捉え、追い続ける追跡レイヤー衛星72基の契約を総額35億ドルで結んだ。

2025年4月9日、フロリダ州ケープカナベラルにあるNASAケネディ宇宙センターのスペースX施設の一部(ミゲル・J・ロドリゲス・カリロ/ゲッティイメージズ)

米国は、他国に比べて突出した打ち上げ能力と、政府と民間企業の強い連携という強みも持っている。スペースXは2025年に165回の軌道打ち上げを行い、その回数は世界全体の合計を上回った。これにより、米国は必要に応じて、迅速かつ柔軟に宇宙へアクセスできる体制を整えている。

これらの打ち上げの多くは再使用型のファルコン9ロケットによるもので、打ち上げコストの低下や準備期間の短縮、頻度の向上につながっている。これに対し、中国は現在も使い捨て型の長征ロケットへの依存が大きく、再使用技術の試験は国家主導の枠組みで始まったばかりだ。

打ち上げ回数だけでなく、能力の質や即応性の面でも米国は優位にある。スペースXは1回の打ち上げで、より大型で高性能な衛星を投入でき、必要とあれば数日以内に対応することも可能だ。一方、中国の打ち上げ体制は国家が管理しているため、対応が遅く、官僚的だとみられている。現在試験が進む次世代ロケット「スターシップ」は、中国が現在運用しているロケットでは実現できていない規模の搭載能力を備える見通しで、将来的には複数回の打ち上げを1回で代替する可能性がある。

こうした米国の強みは、制度面からも支えられている。2026年には、国防総省の「商業補完宇宙予備」が拡充され、有事の際に商業衛星ネットワークを軍事目的で活用できる仕組みが強化される予定だ。また、NASAのスターリング任務では、スターリンクを使った衛星同士の自律的な連携運用がすでに実証されている。

研究では、多数の小型衛星を分散配置する米国のコンステレーションが、中国の限られた対衛星能力に大きな負担を与えることが示されている。ただし、こうした優位を保ち続けるためには、継続的な投資に加え、実践的な訓練や、同盟国との強固な宇宙分野での協力が欠かせない。

経済学者、中国経済アナリスト。上海体育学院を卒業後、上海交通大学でMBAを取得。20年以上アジアに滞在し、各種国際メディアに寄稿している。主な著作に『「一帯一路」を超える:中国のグローバル経済拡張』(Beyond the Belt and Road: China's Global Economic Expansion)や『A Short Course on the Chinese Economy』など。
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