富士通と阪大 量子計算の実用化前倒し 新技術で材料開発に道

2026/03/26 更新: 2026/03/26

富士通と大阪大学は2026年3月25日、量子コンピュータの実用化時期を前倒しし得る新技術を発表した。創薬や新素材開発に不可欠な複雑な分子のエネルギー計算を、従来より大幅に短時間で実行可能にするもので、量子計算の応用範囲拡大につながるとみられる。

量子コンピュータは、「0」か「1」で情報を処理する従来のコンピュータと異なり、「0と1の重ね合わせ」という量子状態を利用することで、多数の計算を同時並行的に処理できる特性を持つ。このため、従来のスーパーコンピュータでは処理が困難な問題の解決手段として期待されてきた。

一方で、量子計算はエラーが発生しやすく、実用化には誤り訂正を可能にする大規模な量子ビットが必要とされてきた。一般にその規模は100万量子ビット級とされ、実現は長期的課題と位置付けられていた。富士通が目指す1万量子ビット級の装置では、本格的な誤り訂正が困難であり、複雑な化学計算への応用は難しいと見られていた。

こうした制約に対し、両者は計算手法の高度化によって性能を補うアプローチを採用した。第一に、計算精度を向上させる「STARアーキテクチャ ver.3」を開発し、必要な量子ビット数を従来比で15分の1から80分の1程度まで削減した。第二に、第二に、分子モデルを変形させて2つの異なる計算手法のバランスを最適化する技術を導入し、、計算時間を約1千分の1に短縮した。

これらの技術を用いた検証では、従来手法では数千年を要するとされた複雑分子の計算について、10日から35日程度で処理可能であることを確認した。対象には、創薬に関わるシトクロムP450、アンモニア生成に関連する鉄-硫黄クラスター、二酸化炭素の有効利用に資するルテニウム触媒などが含まれる。

今回の成果は、誤り訂正が不十分な「Early-FTQC」と呼ばれる過渡期の量子コンピュータでも、実用的な化学計算が可能となることを示した点に意義がある。従来は完全な大規模装置の実現を前提としていた応用開発が、数万量子ビット規模でも現実的になる可能性がある。

量子コンピュータの活用が現実味を帯びることで、排出ガス浄化触媒の開発や新薬設計など、産業分野への波及効果が期待される。技術成熟を待つのではなく、早期からの活用準備が競争力を左右する局面に入りつつある。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます
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