中国共産党(中共)当局はこれまで一貫して、政府債務リスクは全体として安全かつ抑制可能であると主張してきた。「2025年中央・地方予算執行状況および2026年中央・地方予算草案に関する報告」のデータに基づき算出すると、政府の負債率(政府債務残高の対GDP比)は約68.5%となり、G20諸国の平均政府負債率118.2%、G7諸国の平均政府負債率123.2%(IMFの昨年4月の報告による)を大きく下回っている。
同報告が公表した債務データは以下の通りだ。
第一に、2025年末時点で政府債務残高は約96兆500億元(約2244兆円)、うち国債残高は約41兆2300億元(約963兆円)、地方政府債務残高は約54兆8200億元(約1281兆円)
第二に、国債残高および地方政府債務残高はいずれも限度額(2025年の全国政府債務限度額は約99兆8500億元以内に抑えられている。第三に、2025年の中国GDPは約140兆1900億元であり、これに基づき算出される。
これは大いなるごまかしである。上述の政府債務残高は、顕在的債務、すなわち法定債務にすぎない。実際には、中央・地方を問わず、多額の偶発債務(保証責任を負い、一定の救済責任を負う可能性がある債務)が存在する。中国共産党の経済体制は計画経済から「改革」によって形成された「鳥かご経済」であり、政府が社会経済生活に介入する程度はきわめて深く、偶発債務の範囲・規模・種類はきわめて広く大きい。
政府の偶発債務は主に四つの分野から生じる。第一に国有企業、第二に地方融資平台、第三に事業単位、第四に養老保険(例えば2015年末の都市労働者基本養老保険個人勘定の空帳は4兆2646億元である。これらの隠れ債務を加算すれば、政府負債率はまったく異なる様相を呈することになる。本稿では中国共産党政府の債務をおおまかに整理する。
一、中央債務
(一)法定債務。
国債は中央債務の主要部分であるが、その全部ではない。中央政府の起債は主として二つに分かれる。一つは予算管理に組み入れられた中央政府債務で、主に中央財政資金で償還される国債、国際金融機関および外国政府からの借款などを含む。もう一つは予算管理に組み入れられていないが、中央政府が負担すべき債務(中央部門および所属機関が償還責任を負う対外債務、国家重大水利事業建設基金で償還される南水北調事業建設借款など)であるが、こちらについて当局は具体的な説明を一度もしていない。
「全国政府性債務監査結果」(2013年第32号公告)によれば、2012年末時点で中央政府が償還責任を負う債務は9兆4376億7200万元(約220兆5600億円)であり、うち中央財政債務残高は7兆7565億7000万元(約181兆2700億円)であった。すなわち、中央政府債務の8割は国債の形態で存在していたことになる。
中央財政債務残高が中央政府の償還責任を負う債務に占める比率が2012年時点の水準(82.2%)とほぼ同じと仮定し、これに基づき国債残高から2025年末の中央政府債務規模を推計すると、41兆2300億元÷82.2%=50兆2800億元(約1174兆9400億円)となる。
(二)偶発債務(隠れ債務)
当局は具体的な説明を一度も公にしていない。試算可能性、公共財政、有限責任の原則に基づき、政府偶発債務の規模を推計した研究によれば、2015年末時点で中央の偶発債務は8兆3597億元(約195兆4000億円)、うち都市労働者基本養老保険個人勘定の空帳が4兆2646億元(約99兆6600億円)、中国鉄路総公司の債務が4兆951億元(約95兆7000億円)であった。ただし、実際の偶発債務はこれより大きいはずである。
本稿では中央政府の偶発債務の具体的データを示すことはできないが、以下の三種類の債券(「準国債」)から、国債以外の中央偶発債務がきわめて巨額であることが推測できる。
第一に、政策性金融債である。1994年、3行の政策性銀行(国家開発銀行、中国農業発展銀行、中国輸出入銀行)が相次いで業務を開始した。その資金は主に市場での起債に依存している。発行する金融債券は、国務院の承認を得て中国人民銀行が金融機関に対して計画的に割当購入させるものである。政策性金融債は「次国債」と呼ばれるが、その発行は政府債務限度額の制約を受けず、中央に対する裏ルートの資金調達手段となっている。
2025年の政策性金融債の通年発行規模は約6兆4100億元(約149兆7900億円)で、2024年比24.76%増加した。2025年末時点で残高規模は28兆元(約654兆3600億円)を超え、ほぼすべて国内保有で、海外機関の保有規模はわずか7千億元(約16兆3500億円)にとどまる。市場では、2026年通年の発行規模は6兆5千億元(約151兆9千億円)から7兆元(約163兆5900億円)の範囲で推移すると広く予想されている。
第二に、中央匯金公司債券(匯金債)である。中央匯金公司は2003年に設立され、国務院の授権に基づき、国有重点金融機関に対して株式投資を行い、国家を代表して出資者の権利を行使し出資者の義務を履行する国有独資会社であり、2010年に初めて債券を発行し、現在では常態化した発行を行っており、政府支援機関債券に分類される。
第三に、中国鉄路建設債券(鉄道債)である。1995年9月に初めて発行された。鉄道システムの「政企分離」改革に伴い、2019年6月以降、中国国家鉄路集団が法定発行主体となり、引き続き従来の税制優遇と政策支援を受けている。
二、地方債務
(一)法定債務
当局は2011年以降、地方政府債務に対する全面的監査と部分的監査を相次ぎ実施し、2015年には地方政府債務限度額管理制度を確立し、地方政府債券を発行して地方政府債務を置換した。2015年末時点で全国地方政府債務残高は16兆元(約373兆9200億円)であった(2016年11月4日、財政部の担当責任者が記者の質問に答えた際の発言)。その後、地方政府債務は急速に増加した。
2025年12月末時点で、全国地方政府債務残高は54兆8231億元(約1281兆9900億円)、うち政府債券は54兆6613億元(約1277兆2100億円)、非政府債券形態の既存政府債務は1618億元(約3兆7800億円)である。非政府債券形態の既存政府債務の比率は0.3%にも満たない。これが地方政府債務と中央政府債務の大きな相違点の一つである。
(二)偶発債務(隠れ債務)
当局は地方政府偶発債務の詳細データを一度も公表していない。試算可能性、公共財政、有限責任の原則に基づき、地方政府偶発債務の規模を推計した研究によれば、2015年末時点で地方の広義偶発債務は39兆5440億元(約923兆9千億円)、うち地方政府偶発債務(保証責任を負い、一定の救済責任を負う可能性がある債務)は9兆7314億元(約227兆4200億円)、特定建設基金と地方性基金の合計は4兆9400億元(約115兆4400億円)、三類債務に組み入れられていない地方融資平台(LGFV)債務は24兆8726億元(約581兆2700億円)であった。この時点で、地方政府偶発債務(39兆5440億元、約923兆9000億円)はすでに地方政府法定債務(16兆元、約373兆9200億円)の2.47倍に達していた。
その後、偶発債務は急速に増加した。地方政府債務の高リスクに迫られ、当局は「一括解決」案を模索した。2024年11月、中国共産党財政部は、2023年末時点の全国地方政府隠れ債務残高が14兆3千億元(約334兆1900億円)であると発表した。これに対し各方面から失笑が漏れた。
2026年1月28日、国際通貨基金(IMF)は「2025年第4条協議スタッフ報告書」を公表し、中国の地方政府偶発債務の主体である地方政府融資平台(LGFV)の債務が、2024年にはすでに66兆元(約1542兆4200億円)に達しているとの見方を示した。
中国共産党財政部とIMFの隠れ債務の定義における核心的な相違は、「地方融資平台(LGFV)」の債務の性質に関する画定範囲の違いにある。
中国共産党財政部の論拠は「政府債務」と「企業債務」を区別し、LGFVが負う純粋に商業的な借入金は政府債務に算入せず、地方政府が財政資金で償還することを約束した、または違法に保証を提供した債務のみを認めるというものであり、ゆえに14兆3000億元(約334兆1900億円)にとどまるとする。
しかしIMFの見解は、LGFVが収益性の低い公益性インフラに大量に投資しており、そのキャッシュフローでは債務を賄えないため、本質的には財政赤字の延長(Augmented Deficit)であり、政府のバランスシートに全額計上すべきだというものである。
IMFはすべてのLGFV債券発行体の財務諸表を集計し、2025年のLGFV債務総額を約72兆元(約1682兆6400億円)と推計しており、うち約10兆元(約233兆7000億円)が公式定義の隠れ債務に対応し、その他はIMFが潜在的リスクを有する準財政負担とみなすものである。明らかに、IMFの見解の方が中国の実態と国際慣行により合致している。
ゴールドマン・サックスによる中国地方政府隠れ債務の推計の核心的論理はIMFと類似しているが、より定義が広く、数値が高い。ゴールドマン・サックスが2024年末から2025年にかけて発表した関連調査報告によれば、中国の地方政府隠れ債務(主にLGFVが負担)は約91兆元(約2126兆6700億円)と推計されている。
中国共産党財政部のデータによれば、2024年末時点で全国の解消すべき隠れ債務総額は約10兆5000億元(約245兆3900億円)であるが、IMFの推計は66兆元(約1542兆4200億円、LGFV)でゴールドマン・サックスの推計は91兆元(約2126兆6700億円)である。政府間国際金融機関としてのIMFの専門性と権威性に鑑み、本稿はIMFの推計データを採用する。
結語
以上のとおり、具体的データのある債務に限ってみても、2025年末時点で中央政府が償還責任を負う債務は50兆2800億元(約1174兆9400億円)だ。そのうち国債41兆2300億元(約963兆5400億円)で偶発債務は少なくとも28兆元(政策性金融債:約654兆3600億円)である。地方政府債務残高は約54兆8200億元(約1281兆元9300億円)で偶発債務は72兆元(LGFV債務:約1682兆6400億円)である。
明らかに、中国共産党の政府負債率(政府債務残高の対GDP比)は68.5%にとどまるはずがなく、米国を上回り、G20諸国、G7諸国の平均政府負債率をも上回っている。
2026年、当局は政府債務を11兆8900億元(約277兆8900億円)を新規に増やす計画であり、うち中央財政が起債する国債は合計6兆6900億元(約156兆3300億円)で地方財政が起債する地方政府債券は合計5兆2千億元(約121兆5200億円)である。隠れ債務に至っては、推計すら困難である。しかし債務という落とし穴から、中国共産党政府はすでに抜け出せなくなっている。
(大紀元初出)
人民元換算には2026年4月25日時点の参考レート(1人民元≒23.37円)を使用
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。