習近平に訪朝観測 中朝接近の裏にある「本当の狙い」

2026/05/23 更新: 2026/05/23

韓国メディアによると、中国共産党(中共)の習近平党首が、早ければ来週にも北朝鮮を訪問する可能性がある。韓国政府は、関連する動向を注視しているという。専門家からは、今回の訪問について、表向きは中朝の友好関係に基づく交流だが、その背後には複数の戦略的思惑が絡んでいるとの見方が出ている。習近平の「後継体制」をめぐる観測から、中朝双方の思惑が交錯する微妙な関係まで、国際社会の注目を集めている。

習近平の訪朝観測 「対話促進」の裏で進む反米陣営づくり

聯合ニュースは5月21日、韓国政府高官の話として、習近平が今月下旬または来月初めに北朝鮮を訪問する可能性が高いとの情報があると報じた。この高官は、中共の王毅外相が先月、平壌を訪問したことに加え、習近平の警備・儀典関係者が最近、平壌入りしたことにも言及した。

韓国外務省は、政府として関連動向を注視しており、朝中間の交流が朝鮮半島の平和と安定の維持に資することを望むと表明した。

中共外務省の郭嘉昆報道官は5月21日の記者会見で、習近平の訪朝の可能性について問われ、「現時点で提供できる情報はない」と述べた。

独立系評論家の秦鵬氏は番組で、中共の公式説明には、表向きの建前と実際の狙いがあると指摘した。秦氏によると、習近平が訪朝する場合、表向きの理由は「中朝友好協力相互援助条約65周年」とされ、対外的には米朝対話を促す姿勢を示す可能性がある。しかし、外部がより注目しているのは、その背後にある戦略的目的だという。

秦氏は、アメリカが習近平に仲介役を本気で期待することはないとの見方を示した。「トランプ氏は1期目政権時代、いわゆる六者会合に頼らず、金正恩氏と直接対話した。現在のトランプ氏は当時以上に強気の姿勢を示しており、アメリカが習近平に仲介を求める必要はない」と述べた。

秦氏は、習近平がロシア、イラン、北朝鮮との関係を頻繁に強化しているのは、「反米同盟」を構築し、いわゆる「アメリカに次ぐ大国」としての地位を裏付けようとしているためだと分析した。

そのうえで、「習近平は現在、内外ともに困難を抱えている。安定した環境を必要としているため、一方では強硬な姿勢を見せながらも、実際には情勢を制御不能な状態にまで押し進めることは避けている」と述べた。

金正恩氏は北京の駒ではない 中朝関係の深い溝

しかし、北京がいかに周到に布石を打っても、平壌の姿勢は常に最大の変数となる。秦氏は、中朝関係には長年にわたり相互不信があり、外部が想像するような「一体不可分」の関係ではないと強調した。

秦氏によると、1990年代に中共が韓国と国交を樹立した後、北朝鮮の金正日総書記は北京に強い不満を抱いた。その後、北京が一時、金正恩氏の兄を支援したことも、双方の関係悪化につながったという。「金正恩氏は中共を信頼していない一方で、一定程度依存せざるを得ない。北京を利用しながら、同時に警戒している」と秦氏は述べた。

秦氏はまた、ポンペオ元米国務長官の回顧録の内容を引用し、北朝鮮が中共に強い警戒感を抱いていると指摘した。秦氏によると、ポンペオ氏が2018年に訪朝した際、金正恩氏に「中共はアメリカに対し、米軍が韓国から撤退すれば金正恩氏は非常に喜ぶだろうと伝えている」と述べたところ、金正恩氏は笑いながら机をたたき、「中国人はみな嘘つきだ」と述べたという。

秦氏は、金正恩氏が在韓米軍がむしろ中共をけん制する役割を果たしていると考えていると説明した。「金正恩氏は、中共が米軍の朝鮮半島撤退を強く求めるのは北朝鮮のためではなく、北朝鮮をより容易に支配するためだと見ている」と述べた。これは、北朝鮮が中共の従属的な立場に置かれることを望んでいないことを示しているという。

秦氏は、ロシアによるウクライナ侵攻後、北朝鮮がロシアに兵士を派遣し、武器を供与する一方、プーチン大統領からミサイルや衛星などの重要技術を得て、北朝鮮の実力が大きく高まったと指摘した。「これにより、金正恩氏は中露の間で新たな均衡点を見いだし、交渉上の価値を高めた」と述べた。

そのため秦氏は、習近平の訪朝には、「北朝鮮がさらにロシア側に傾くのを防ぐ」という狙いもあると見ている。

金一族の世襲に学ぶのか 習近平の後継をめぐる臆測

外交面では一定の公式説明が可能だが、習近平の「権力の世襲化」をめぐる内部の動きについては、外部の関心がさらに高まっている。

独立系評論家の蔡慎坤氏は自身の番組で、習近平の今回の訪朝は通常の外交交流ではなく、「習近平が北朝鮮の金一族の世襲モデルを参考にするのか」という点に注目すべきだと指摘した。蔡氏は、「金正恩氏は近年、娘の金主愛氏をたびたび公の場に登場させている。これは単なる家族の紹介ではなく、金一族4代目への権力継承に向けた布石であり、主体思想による統治の正統性を強化するものだ」と述べた。

中共第20回党大会以降、習近平は従来の後継者選定の慣例を破り、権力を高度に集中させてきた。そのため、「誰が後継者になるのか」は、中共内部で最も敏感な問題の一つとなっている。

蔡氏は、習近平が北朝鮮のように「赤い政権を代々受け継ぐ」方向に進むのか、外部の関心が高まっていると述べた。「今後、娘の習明沢が金主愛氏のように徐々に公の場に姿を見せ、さらには政治の舞台に立つのか。これに注目する人はますます増えるだろう」と語った。

蔡氏は、金正恩氏の娘はまだ若いものの、北朝鮮の後継論理は一般の国家とは異なると指摘する。「強権的な手法で権力を掌握できれば、党・政府・軍内部に不満があっても、公然と挑戦する者はいない」という。蔡氏はさらに、習近平が過去10年以上にわたり、何らかの「権力の世襲化」に向けた準備を進めてきた可能性があるとの見方を示した。

蔡氏によると、習明沢は現在も中共高官の家族の中で、動静がほとんど明らかになっていない人物の一人だという。「海外では、彼女の最新の写真を把握している人はほとんどおらず、現在何をしているのかも実際には分かっていない」と述べた。

蔡氏はさらに、かつて中国中央テレビ内部から聞いた話として、習明沢がすでに結婚しており、相手は「感動中国」の称号を受けた後、国家開発銀行関連の機関で勤務した秦悦諾とみられると明かした。

蔡氏は、これらの情報は完全には確認できないとしつつ、ネットユーザーが公開資料を照合した結果、関連する住所や身元情報に接点があると述べた。また、当時、公開情報の照合に関わった若者らは、その後、広東省の警察によって重刑を言い渡されたと説明した。

蔡氏はさらに、「より衝撃的な情報」として、習明沢が出産後、政策決定に関わる機関に入ったとの情報があると述べた。「彼女はいまその機関の中におり、非常に大きな権限を持っている」という。

蔡氏は、習明沢の具体的な職務は現時点では分からないとしながらも、重要なのは「習近平の意向を代弁し、指示を出せる立場にある可能性がある」という点だと述べた。今後2年、特に中共第21回党大会の前後に、「習明沢が公の場に姿を見せるかどうか」は、極めて敏感で注目すべき政治的シグナルになるとの見方を示した。

蔡氏はまた、習近平が最終的に家族による継承を選ばない場合でも、「より若く、まだ最高指導部に入っていない人物」を後継者に選ぶ可能性があり、現在の高層部から後継者が出る可能性は低いと分析した。

蔡氏はもう一つの隠れた手がかりにも言及した。陝西省には、習近平の父である習仲勲の大規模な陵園が建設された。「中共のこれまでの慣例に照らせば、通常の権力移譲だけを考えているのであれば、父親のためにこれほど大規模な陵園を建てることは考えにくい」と述べた。蔡氏は、「習近平がこのようなことを行ったのは、将来、権力を簡単に外部の人物に渡すつもりがないと、かなり早い段階から考えていたことを示している」と指摘した。

さらに蔡氏は、中国歴史研究院が近年、格上げされ、特定の歴史研究を重点的に担うようになっているとも述べた。重点的に研究されているのは、「陝北紅軍が中央紅軍を救った」とする歴史だという。蔡氏は、これは実質的に「中共史における習一家の正統性」を強化する動きだと見ている。

李浄
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