米石油大手シェブロン イラク油田に投資へ ホルムズ海峡の迂回ルートも検討

2026/07/17 更新: 2026/07/17

米エネルギー大手シェブロンは16日、イラクの2つの油田への投資に向けた予備合意に署名する予定だ。同社は複数の企業と企業連合の設立について協議しており、シリア沿岸につながるパイプラインの建設や再稼働も検討している。

イランによる妨害や封鎖で閉鎖の危機に直面するホルムズ海峡を迂回し、新たな原油輸送ルートを確保する狙いがある。

戦争前は、世界の石油とLNGの約20%がホルムズ海峡を通過していた。しかし、緊張の高まりで海峡が事実上閉鎖されたため、石油輸出国機構(OPEC)第2位の産油国であるイラクは、生産量を半分以下に削減せざるを得なくなり、財政が悪化している。

イラクをはじめとする中東の産油国は、代替となる輸出ルートの確保を急いでいる。

3つのパイプライン案

英紙フィナンシャル・タイムズによると、企業連合はイラク産原油を西側市場へ輸送するため、主に3つのルートを検討している。

第1案は、イラク南部の油田と北部の石油産業の中心地キルクークを結ぶ新たなパイプラインの建設だ。南部で生産された原油を北部へ運ぶ。

第2案は、キルクークからシリアを横断し、地中海沿岸のバニヤス港まで輸送するルートだ。20年以上使われていない既存のパイプライン網を一部再利用する。

第3案は、南部バスラから延びるパイプラインを、キルクーク南方のハディーサで分岐させ、シリア、トルコ、ヨルダンへつなぐ構想だ。

シェブロンは各案について、技術面と採算面から実現可能性を調べているという。新たなパイプラインを建設するか、既存設備を改修してトルコ経由の輸送網に接続するかを検討する。

米政財界の人脈が交渉を後押し

関係者によると、企業連合にはシェブロンのほか、ロサンゼルスに本社を置くTIキャピタルと、富豪アル・ハイヤート兄弟が所有するパワー・インターナショナル・ホールディングが参加する。

トランプ米大統領の長年の盟友で、駐トルコ米大使とシリア・イラク問題担当特使を兼務するトム・バラック氏も、関係者間の調整を進め、イラクとの合意を後押ししたという。バラック氏はTIキャピタルやアル・ハイヤート兄弟と深い関係を持つ。

トランプ氏は14日、ホワイトハウスでイラクのアリ・アルザイディ新首相と会談し、両国間で多くの取引を成立させ、雇用を生み出す考えを示した。また、アメリカ企業がイラクでの石油開発を進めていると述べた。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、全米商工会議所は17日、ワシントンで米イラク・ビジネスサミットを開催する。アルザイディ首相やクリス・ライト米エネルギー長官らが、総額最大600億ドルに上る複数の協力協定に署名する見通しだ。

安全面に課題

新たな輸送ルートへの期待が高まる一方、安全面には課題が残る。

イラク北部とシリアのパイプライン関連施設の多くは、過去10年間の過激派組織「イスラム国」との戦闘で大きな被害を受けた。武装勢力の活動が続く地域もあり、両国政府がパイプラインの安全を確保できるかは不透明だ。

それでも、アメリカが中東のエネルギー輸出に対するイランの影響力を弱めようとするなか、シリアはホルムズ海峡を迂回する輸送拠点となることを目指している。

米エネルギー企業が相次ぎ進出

シェブロンはパイプライン計画に加え、イラク南部の西クルナ2油田の権益取得に向けて交渉している。同油田の生産量は日量46万バレルで、これまでロシアのルクオイルが運営していた。同社が2025年にアメリカの制裁を受けたことで、事業に支障が出ていた。

シェブロンはパワー・インターナショナル・ホールディングと協力し、シリア沖での油田探査も進めている。

コノコフィリップスは今年6月、シリア国営石油会社などとガス田開発に関する協定を結んだ。シリア新政府とガス田開発契約を結んだ初の米エネルギー大手となる。

また、米HKNエナジーはシリア北東部のルメイラン油田の運営を引き継いだほか、今年7月にはイラク政府とハムリン油田を共同開発することで合意した。

李言
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