「愛国」のつもりで中国軍の強さを誇示していた軍事マニアを、「国家機密漏えい」で摘発した。
中国当局が公表したこの事例は、軍事情報の発信に対する締め付けが一段と強まっていることを示す一方、「見せしめ」を狙った警告ではないかとの見方も広がっている。
中国の国家秘密保護機関(保密局)は8月4日、公式SNS「保密観」で、軍事マニアの男を「故意に国家機密を漏えいした罪」で摘発したとする事例を公表した。
それによると、男は長年にわたり軍事関連の記事を収集・転載していたところを、海外の情報機関が目を付けた。記者を名乗る人物から接触を受け、中国の国産空母などを話題にしながら関係を築き、報酬と引き換えに収集した資料や内部文書を公開した結果、摘発されたという。
しかし、保密局は事件が起きた時期や具体的な証拠を一切示していない。このため、事件そのものの真実性を疑問視する声もあり、中国当局がこれまでたびたび公表してきた「スパイ事件」と同様、軍事マニアに「一線を越えるな」と警告するための見せしめではないか、と受け止める向きもある。
一方で、中国当局が軍事情報への締め付けを強めていることは事実だ。近年、「政権の安全」を重視する姿勢を強める中、軍事マニアは監視対象となっている。
2024年初めには、中国の国家安全部が軍事マニアを軍事情報漏えいの「高リスク集団」と位置付け、「場所を教える者」「情報提供を手助けする者」「内部協力者」の3つの類型に分けて警戒を呼びかけた。
中国では長年、多くの軍事マニアがSNSやネット掲示板、動画配信などを通じて軍艦や戦闘機、ミサイルなどの写真や分析動画を発信してきた。その多くは「小粉紅」と呼ばれる熱烈な愛国派ネットユーザーで、中国軍の実力を誇示することを「愛国」の表れと考えてきた。
軍事チャンネル「馬克時空」の司会者・馬克氏は本紙の取材に対し、「中国共産党はいま極度に安全保障への不安を抱えている。これまで軍事力を誇示することを『愛国』と考えていた人たちも、現在の厳しい監視体制の下では、その発信が、そのまま『機密漏えい』と見なされる恐れがある」と警鐘を鳴らした。
今回の事例に注目するのは、案件を公表したのが、これまで表舞台に立つことの多かった国家安全部ではなく、保密局だった点だ。保密局は昨年10月以降、公式SNSで「海外スパイの浸透」などを繰り返し発信し、存在感を強めている。
時事評論家の李林一氏は、「保密局も国家安全部も本来は裏方の組織だった。それが競うように前面に出て情報発信しているのは、両機関の主導権争いを映し出すと同時に、中国当局が過敏なまでに警戒を強めていることの表れだ」と分析した。
かつては「愛国」の一環と考えていた軍事情報の発信も、当局の判断一つで「機密漏えい」と見なされる危険性がある。
今回の公表事例の真偽は確認できないものの、中国当局が軍事情報の管理を一段と強化し、軍事マニアに強い警告を発していることだけは明らかだ。
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