中国で個人所得税 25.9%急増 富裕層の海外資産への徴税強化が影響か

2026/08/25 更新: 2026/08/25

中国の7月の個人所得税収が前年同月比25.9%増となった。不動産市場の低迷が続き、家計所得にも下押し圧力がかかるなか、個人所得税収の急増が注目を集めている。

今春以降、中国共産党(中共)当局は富裕層の海外所得に対する徴税を強化してきた。最新のデータからは、これまで十分に課税されてこなかった所得を改めて課税対象に取り込む動きが、税収にも表れ始めた。

7月の個人所得税収が急増 誰が税収を押し上げているのか

中共財政省が8月21日に発表した7月の財政統計によると、全国の財政収入は前年同月比11.7%増え、2025年以降で最も高い月間伸び率となった。

このうち、企業所得税は20.8%増、個人所得税は25.9%増、輸入関連税は15.3%増となり、主要3税目の大幅な増収が財政収入全体を押し上げた。

景気減速と不動産市場の低迷が続くなか、とりわけ目を引くのが個人所得税の25.9%増である。中国の個人所得税は、一部の高所得者層への依存度が高い。

データによると、年収上位1%の人が申告・納付する個人所得税は全体の5割以上を占め、上位10%では約9割に達する。

つまり、中国の個人所得税収は、一般住民の所得動向をそのまま映す指標ではない。大多数の所得が大きく改善していなくても、一部の高所得者が得た所得が新たに課税対象となれば、全国の個人所得税収を大きく押し上げてしまう。

中国メディアは、7月の個人所得税収が急増した背景として、資産所得の増加、一部業種や高所得者層の所得改善、徴税管理の強化など、複数の要因を挙げている。

台湾南華大学国際事務・経営学科の孫国祥教授は、7月の個人所得税収急増について、キャピタルゲインや株式譲渡益、配当、一部高所得業種の給与所得に加え、過去の未納分の追納などが重なった可能性が高いと分析した。一般住民の所得が広く改善した結果と単純に捉えることはできないと述べた。

孫氏は、今年に入っての海外所得への徴税強化も、6~7月の税収に一定の影響を与えたとみている。特に4月以降、共通報告基準(CRS)の情報との照合や個人所得税アプリを通じた申告の呼びかけが進み、6月末の個人所得税の年度精算期限を過ぎた後に、追納が発生した。

7月の個人所得税収の急増は、これまで十分に把握されていなかった資産所得を、税務当局が捕捉し始めたことを示している可

こうした徴税強化は、すでに実際の税収にもつながっている。中国メディアが引用したデータによると、今年1~5月、海外所得がある納税者による追納額は累計約130億元に達した。

税収増は単なる所得増だけでなく、これまで十分に課税されてこなかった所得を新たに把握した結果でもある。

所得上位1%が個人所得税全体の5割以上、上位10%が約9割を負担する構造では、これまで十分に課税されていなかった所得が新たに課税対象となれば、対象者が少なくても税収への影響は大きくなり得る。

海外信託にも課税強化 海外資産への徴税広がる

中共はここ数か月、居住者の海外所得に対する徴税をさらに強化している。

7月24日、中共財政省と税務総局は「2026年第21号公告」を発表し、対象となる納税者に対し、2023~25年に資産を海外信託へ移した際に発生した未納の個人所得税を90日以内に申告するよう求めた。対象所得には20%の税率を適用する。

ただ、この新規定が7月の個人所得税収25.9%増を直接押し上げたとは限らない。

孫氏によると、新規定による本格的な税収増は90日間の移行期間やその後の申告期間に表れる可能性が高い。7月の段階では申告や納税を促す動きが始まったばかりで、多額の税収がすでに計上されたとは考えにくい。

また、7月24日の公告が海外所得への徴税強化の出発点だったわけではない。

中国メディアは今年5月、上海、湖北、山東などで、富裕層が海外所得に関する個人所得税を追納する事例が相次いでいると報じた。税務当局も個人所得税アプリを通じて納税者に自己点検を促し、未納分を追納するよう求めていた。

孫氏は、7月の個人所得税収の大幅増には、それ以前から進められていた海外所得への徴税強化の効果が、すでに一部表れているみている。

ただ、7月に増えた個人所得税のうち、海外所得の追納がどの程度を占めるのかを示す公表データはない。

そのため、個人所得税の増加が高所得者の所得増によるものなのか、それとも当局がこれまで十分に把握できていなかった所得への課税を強めた結果なのかは、現時点では判然としない。

また財新網は8月5日、北京や浙江省杭州市などの税務当局がCRSで交換された情報を基に、香港の保険商品から得た配当や前払い利息などについて、一部の契約者に課税していると報じた。

海外所得の申告から海外信託、香港の保険商品による収益まで、税務当局はCRSなどの国際的な金融口座情報を活用し、これまで把握が難しかった海外資産から生じる所得への課税を広げている。

土地収入が減少 新たな税収源はどこまで支えになるのか

土地関連収入が縮小するなか、富裕層の所得や企業利益、資産所得が新たな課税対象として重要性を増している。

今年1~7月の土地使用権譲渡収入は前年同期比31.5%減った。一方、7月の企業所得税は20.8%増、個人所得税は25.9%増となり、対照的な動きを示している。

土地収入が減少するなか、中共は企業利益や資産所得、富裕層への課税をこれまで以上に強化している。

ただ、孫氏は、株式譲渡益や配当、海外所得の追加申告によって特定の月の個人所得税収が増えることはあっても、資産所得は安定した税収源ではないと指摘した。

海外信託への課税強化による追納にも、一時的な側面が強い。

また、資産所得などへの徴税を過度に強化すれば、投資意欲を冷え込ませ、富裕層による資産の海外移転を加速させる恐れもある。

孫氏は、こうした税収は財政の不足分を一時的に補うことはできても、土地関連収入に代わる恒久的な財源にはなりにくいとみている。

「長期的な財源を確保できるかどうかは、最終的には家計所得、消費、企業収益が回復するかにかかっている」と述べた。

趙彬
顧暁華
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