中国共産党(中共)当局は、億万長者や大企業に対する徴税を強化している。関係者によると、税務当局は専門チームを設置し、富裕層が国内外に持つ資産や納税状況を追跡している。億万長者1人ごとに担当チームを付けるケースもあるという。期限までに不足分を納付しなければ処罰されるとしている。富裕層の間では不安が広がり、株式を売却して納税資金を確保したり、外国のパスポート取得を急いだりする動きが出ている。専門家は、土地財政が行き詰まった後、目先の税収を得るため将来を犠牲にする「鶏を殺して卵を取る」ような政策だと指摘し、企業家の信頼をさらに損なうとみている。
ブルームバーグが9月末に報じたところによると、中共税務総局は、「徴税の新時代」を掲げ、徴税の重点を富裕層や大企業に移す方針を明確にした。当局は海外信託をめぐる規則を改定するとともに、複数の専門チームを設置し、富裕層が国内外に保有する資産や納税状況を調べている。億万長者1人ごとに担当チームを付けて追跡するケースもあるという。
報道によると、対象者には10月下旬までに不足分の税金を納めるよう求めており、応じなければ処分するとしている。対象となった富裕層は、納税資金の確保や今後の対応を急いでいる。
中国の火鍋チェーン「海底撈」の共同創業者、シュ・ピン氏は、家族信託を通じて約3億5千万ドル相当の株式を売却し、納税資金の確保に動いた。
一部の富裕層は、当局が将来出国税を導入することを懸念し、外国のパスポート取得を急いでいる。また、資金の預け先として小規模な銀行を探す動きも出ている。
一方、徴税強化をめぐっては、中央と地方の思惑の違いも表面化している。
中央政府が徴税強化を進める一方、地方政府は深刻な財政難に直面している。このため、一部の富裕層が地方の税務当局と税額をめぐって交渉するケースもあるという。例えば、広州のある企業経営者は1億元の税額を通知された後、会社を上海へ移転すると伝えた。すると地方当局は税額を500万元まで引き下げた。当初の税額から95%減額されたことになる。
また、中国本土の住民が香港に保有する1兆7千億ドルを超える資産も、当局の監視対象に入っている。しかし、富裕層が納税のため海外資産を中国へ戻そうとしても、資金の流入と流出の双方を制限する外貨規制が壁となっている。税務当局は海外資産を国内へ戻して納税させたい一方、外貨管理当局は巨額の資金が一気に出入りし、金融システムに影響を及ぼすことを警戒している。このため、成都や珠海などでは、資金移動のための「特別ルート」も設けられているという。
分析では、不動産不況で地方政府の土地売却収入が落ち込み、消費・投資・輸出も低迷するなか、AI関連投資には巨額の資金が必要となっている。このため、政府が企業家への徴税を強めているとの見方が出ている。
米国在住の経済学者、李恒青氏は「各地の地方税務局や国税局がこうした動きに加わり、対象を絞り込みながら繰り返し調査している。税収が各機関や職員の業績、個人の収入、ボーナスなどと結びついているため、徴税強化の動機になっている」と述べた。
李恒青氏によると、地方政府はかつて企業誘致のため、政府文書で10〜30年間の免税を約束したケースもあったが、現在ではそうした企業にも追徴課税を始めている。当局はまた、国際的な共通報告基準による税務情報交換制度を利用し、中国人が海外で得た株式や投資による収益も調査している。
李恒青氏は「現在、政府は『中国人だから、中国で税金を納めなければならない』としている。もう一つは資産移転だ。中国では過去20年以上にわたり、多くの人が海外の家族信託などを使って資産を海外へ移してきた。しかし当局は、資金を海外へ移した後でも税金を納めるよう求めている」
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