サウジ 中国主導のデジタル通貨決済網への参加を終了

2026/09/21 更新: 2026/09/21

サウジアラビアが、中国主導となる国境を越えた中央銀行デジタル通貨(CBDC)決済網「mBridge」への正式参加を2025年に終えていたことが分かった。英紙フィナンシャル・タイムズが9月20日に報じた。サウジ中央銀行は、2025年5月13日に実証実験を完了したためで、当初の計画に沿う対応だったと説明している。

一方、mBridgeは米ドルやSWIFTへの依存を減らし得る仕組みとして、米国が警戒を強めてきた。

中国が進める新たな決済の仕組み

mBridgeは、各国の中央銀行が発行するデジタル通貨を使い、国境を越えて直接取り引きできるようにする仕組みである。ブロックチェーンと呼ばれる技術を使い、外国為替取引にかかる時間や費用を減らすことを目指している。

一方で、仲介通貨として使われる米ドルの役割を弱める可能性があるとの見方もある。

mBridgeは、米ドルを仲介通貨とせず、国際銀行間の送金・決済ネットワーク「SWIFT」などに依存しない決済手段となる可能性がある。このため、アメリカが他国に科す経済制裁の効果を弱めるおそれがあるとの懸念も出ている。

mBridgeは現在、中国人民銀行傘下のデジタル通貨研究所、アラブ首長国連邦中央銀行、香港金融管理局、タイ中央銀行が開発を進めている。

香港にある国際決済銀行の研究拠点も、かつては参加していた。しかし、国際決済銀行は2024年10月に離脱した。

フィナンシャル・タイムズは、国際決済銀行の離脱にはアメリカ政府の圧力があったと報じた。一方、当時のアグスティン・カルステンス総支配人は「段階的な任務を順調に終えて離脱した」と述べ、失敗や政治的な配慮が理由ではないと説明していた。

サウジ中銀「実証実験を完了」と説明

サウジアラビア中央銀行は声明で、2025年5月13日に実証実験を完了し、それ以降は参加メンバーではないと表明した。

サウジは2023年、国際決済銀行の枠組みの下で、mBridgeにオブザーバーとして加わった。2024年6月には正式参加を発表し、その後は初期段階のシステムと実証実験用の仕組みの開発に参加した。

サウジ中央銀行は今回、関与は研究目的の実証実験に限られていたと説明した。当初の計画に沿って2025年5月末に実験を終え、プロジェクトへの参加も終了したもので、これまで公表していなかっただけだとしている。

2024年に正式参加を発表した際の説明と、今回、研究目的の実証実験に限られていたとする説明には違いがある。

サウジは主要な産油国で、アメリカの安全保障上のパートナーでもある。今回の対応は、アメリカがドルを中心とする国際決済の仕組みを維持しようとする一方、中国共産党がドルへの依存を減らす決済の仕組みを広げようとしている中で起きた動きといえる。

米国が警戒する制裁回避とドル離れのリスク

mBridgeは、アメリカで懸念の対象となってきた。米ドルを中心とする国際決済の仕組みを通さない決済手段になる可能性があるためだ。

バイデン前政権で国際経済を担当したダリープ・シン国家安全保障担当副補佐官は2025年初頭、個人情報の保護や安全性、異なる決済システムを連携させる仕組み、経済制裁の実効性などに関するルール作りで、北京が「絶大な影響力を及ぼした」可能性があると述べた。

トランプ大統領は、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどでつくる新興国グループ「BRICS」が、米ドルに代わる通貨の仕組みを模索すれば、最大100%の関税を課すと繰り返し警告している。

コーネル大学教授でブルッキングス研究所上級研究員のエスワー・プラサド氏は、多くのアメリカの同盟国も、こうした取り組みによって米ドルへの依存を減らせると考えていると指摘した。その一方で、アメリカの反対姿勢が参加の可否を慎重に判断すべき問題にしていると述べた。

BIS離脱後も続くmBridgeの開発

事情に詳しい関係者はフィナンシャル・タイムズに対し、サウジの関与は限定的であり、参加終了に過度な意味を見いだすべきではないと語った。

別の関係者は、サウジ中央銀行が公に参加することを望まなくなった一方、より目立たない形で関与を続けているとも述べている。このため、「離脱」の実態には不明な点も残る。

アメリカの反対とサウジの参加終了にもかかわらず、mBridgeに減速の兆しは見られない。マカオ金融管理局は2026年にmBridgeに加わり、6月2日には参加銀行による取り引きが始まった。稼働初日には、マカオの3つの銀行が23件の国境を越えた取り引きを完了した。

国際決済銀行が主導していた時期には、インド準備銀行もオブザーバーとして参加していた。インド準備銀行は以前から、中央銀行が発行するデジタル通貨を使った国境を越えた決済の実現可能性を探ってきた。

中央銀行が発行するデジタル通貨を使った国際決済の取り組みは、mBridgeだけではない。国際決済銀行や各国・地域の中央銀行などは、国境を越えた決済のあり方を探る複数のプロジェクトを進めている。主なものに、Aurum、Dunbar、Mariana、Icebreakerがある。

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