本件は、虚偽の共謀疑惑を拡散させた陰謀を主張する2022年の訴状に端を発する。
トランプ米大統領は10月9日、ヒラリー・クリントン氏や民主党全国委員会(DNC)らを相手取り、棄却されていた民事訴訟の復活を最高裁に求めた。
大統領は、相手方が2016年の大統領選陣営がロシアと共謀していたという虚偽のストーリーを捏造・拡散するために共謀したと主張している。
下級審はこの訴えを退け、トランプ氏と同氏の弁護士の一人であるアリーナ・ハバ氏に対し、100万ドル近い制裁金の支払いを命じた。一審判決および控訴裁判所は、この訴訟には法的根拠がなく、正当な請求というよりも政治的私怨を目的としたものであるとして「不当訴訟(frivolous)」と呼んだ。
トランプ氏は現在、訴訟の棄却と制裁金支払いの双方を支持した控訴裁判所の判断を見直すよう、連邦最高裁に求めている。
2020年の選挙に敗れて職を離れていたトランプ氏は、民事RICO法(Racketeer Influenced and Corrupt Organizations Act)として知られる連邦組織犯罪処罰法に基づき、2022年3月にフロリダ州の連邦裁判所に訴訟を提起した。同法は、詐欺や共謀などの組織的な違法行為に関与されたと主張する民間人が、損害賠償を求めることを認めている。
この訴訟は、クリントン氏、DNC、元英国情報機関員のクリストファー・スティール氏、元FBI長官のジェームズ・コミー氏、その他20人以上の人物を対象としていた。訴訟の中心となったのは、ロシア政府がトランプ氏の弱みを握っていると主張した、クリントン陣営の資金提供による敵陣調査資料、いわゆる「スティール文書」である。
トランプ氏の訴訟は、過去に行われた2つの政府調査で扱われた論点にも触れている。ロバート・モラー元特別検察官による2019年の報告書は、トランプ陣営とロシアとの間に刑事上の共謀関係は認められないと結論づけた。ジョン・ダーラム元特別検察官による2023年の報告書は、トランプ陣営とロシアとの接触疑惑に対する2016年の反スパイ調査(コードネーム「クロスファイア・ハリケーン」)におけるFBIの対応を批判した。ダーラム氏は、FBIがクリントン陣営に関係する資料をはじめとする裏付けのない情報提供に過度に依存したと指摘した。
それらの政府報告書は刑事事件および防諜上の問題を扱ったものである。対照的に、トランプ氏の民事訴訟は異なる規則に準拠する民事上の損害賠償請求訴訟である。下級審は、トランプ氏がRICO法の出訴期限を過ぎてから提訴したと判断した。
文書の情報源に対する精査
スティール氏の文書には、ロシア政府がモスクワのホテルでのトランプ氏の不名誉な映像を所持しているという主張が含まれていた。同氏の主な情報源は後に、米国を拠点とし、ロシア情報機関との関係の可能性を巡って連邦捜査官による調査を受けていたイーゴリ・ダンチェンコ氏であることが判明した。
トランプ氏とハバ氏の弁護団は新たな申立書の中で、大統領職という制度を守るために最高裁による本件の審理が必要であると主張した。下級審の判断は、「正当な法的主張を(誤って)却下したばかりか、制裁金や懲戒処分の脅しを使って大統領や弁護士を処罰しようとする、連邦裁判所の極めて憂慮すべき傾向」を反映していると述べた。
「見解が分かれる法的主張を不正行為として扱えば、健全な法文化が損なわれ、世間の批判を浴びる依頼人を弁護する者がいなくなる。その結果、憲法判断を仰げるかどうかが、弁護士が個人責任を負う覚悟を持てるかに左右されてしまう」と彼らは主張した。
申立書によると、彼らは訴訟の中で、2016年選挙に至る数カ月間にわたり、クリントン氏がトランプ氏陣営がロシアと共謀していたという「虚偽の言説」で同氏の信用を失墜させるため仲間と共謀したと主張した。訴訟では、組織的犯罪や「悪意ある虚偽の流布に関する共謀」など複数の請求が申し立てられた。

トランプ氏は2016年にクリントン氏を破り、2017年1月から2021年1月まで大統領を務めた。その後、2024年に現職副大統領であった民主党候補のカマラ・ハリス氏を破り、大統領職に返り咲いた。
2022年9月、ドナルド・ミドルブルックス連邦地裁判事は、トランプ氏が一部の請求を行うのが遅すぎた点など、複数の理由を挙げてクリントン氏に対する訴訟を却下した。ミドルブルックス判事はトランプ氏の訴訟を、「自分に反対した人々に対する不満を概説した200ページに及ぶ政治的マニフェスト」になぞらえた。同判事は後に、「政治的言説を不誠実に推進するため」に計算され、司法を悪用したとして、トランプ氏とハバ氏に制裁を科した。
2025年、第11連邦巡回区控訴裁判所は、トランプ氏とハバ氏の法的主張の多くが「確かに不当なものであった」として、制裁を含めてミドルブルックス判事の判断を支持した。
新たな申立書において弁護団は、トランプ氏が国家の最高責任者としての憲法上の職務遂行に集中できるよう第1期目の任期中の提訴を遅らせる選択をしたため、提訴の期限は延長されるべきであったと主張した。
弁護団は、大統領職の重い重責は大統領在任中に個人訴訟の通常の出訴期限を一時停止することを正当化するものであり、国家運営と自身の法的権利の防御のどちらかを選ばざるを得ない状況に置かれるべきではないと主張している。
また弁護団は、たとえ最終的に裁判所がその主張を退けるとしても、単にそうした主張を行ったことだけを理由に、下級審が大統領とその弁護士に100万ドル近い罰金を科すことができるのかどうかについて、最高裁が判断を下すよう求めている。
申立書は「司法による見解の相違が弁護者を処罰する口実となるのを防ぎ、大統領職を守るために、最高裁の介入が不可欠である」と述べている。
最高裁がいつこの申立書を受理・審理するかは現時点で明らかになっていない。
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