「台湾に行くと、中国にも別の道があるのだと気づく」。北京の清華大学で准教授を務めた鄭毓煌氏は、2011年ごろの台湾訪問を振り返った動画を海外SNSで紹介している。台北の交通秩序や行政機関の対応、教師を敬う学生の姿を挙げ、中国本土が参考にできる点を語った。
鄭氏によると、台湾を訪れたのは2011年ごろである。当時、清華大学のMBA課程の学生約30人を率いて台北の政治大学を訪れ、2~3週間ほど交流活動を行った。動画では、その際の体験をもとに、行政機関の対応や人々の振る舞いについて、印象に残ったことを語っている。
台北の交通秩序と市民のマナーに感銘
鄭氏がまず挙げたのは、台北の交通秩序と市民のマナーである。
街には多くのバイクが走っていたが、交通は整然としており静かだったという。訪問中は、無理な割り込みや乱暴な運転をする人を見かけなかったと振り返った。
鄭氏は多くのバイクが走る中でも秩序が保たれていることに感心し、都市の交通管理という面でも、中国本土が台湾から学べる点があると述べた。
台湾の行政機関で感じた市民への信頼
行政機関の対応も、印象に残ったという。
鄭氏によると、自身が訪れた台湾の行政機関では、入館の際に厳重な手荷物検査を受けたり、幾重もの警備をくぐり抜けたりする必要がなかった。こうした経験から、市民に開かれた姿勢を感じたと述べた。
鄭氏は、誰もが利用しやすい環境が整えられていることに、市民への信頼や一人ひとりを尊重する姿勢が表れていると受け止めた。ただし、動画を紹介した記事には具体的な施設名を示しておらず、台湾の行政機関全てに共通する対応かどうかは確認できない。
教師を敬う「尊師重道」の文化
鄭氏がとりわけ感銘を受けたのは、教師を敬い、学びを大切にする「尊師重道」の精神である。
台湾では、学生が教授に会うと、自ら立ち止まってお辞儀をする姿を見たという。鄭氏はこうした振る舞いに、人と人とが互いを尊重する姿勢を感じたと述べた。
また、中国本土では教師を敬う伝統が以前より薄れていると感じる一方、台湾ではよく受け継がれているとの見方を示した。これも、自身の経験に基づく評価である。
台湾と中国の子育て支援の比較
鄭氏は台湾の子育て支援にも言及し、その手厚さを評価した。
台湾の中央政府による育児手当は、対象条件を満たす乳幼児について、第1子は月額5千台湾元(約2万4300円)、第2子は6千台湾元(約2万9200円)、第3子以降は7千台湾元(約3万4100円)である。
一方、中国本土では、2025年1月1日から、対象となる3歳未満の子供に対し、国の基本基準として1人当たり年額3600人民元(約8万5千円)の育児補助が設けられている。月額に換算すると300人民元(約7100円)となるが、制度上は年単位で支給する。
伝統文化を共有する台湾と中国、異なる社会の姿
鄭氏の発言の中心にあるのは、伝統文化を共有していても、行政機関の対応や日常の人間関係には違いが生まれるという見方である。台湾での経験を通じて、教師を敬う姿勢や人々が互いを尊重する文化に触れ、中国本土にも参考になる点があると感じたという。
中国の弁護士が台湾の地下鉄や街で見た公共心
台湾社会の姿に強い印象を受けたのは、鄭氏だけではない。台湾を旅行した中国本土の弁護士も、現地で目にした光景に大きな衝撃を受けたと動画で語っている。
Xで紹介された動画によると、この弁護士は台北の地下鉄駅でエスカレーターに乗った際、乗客が整然と右側に立ち、急ぐ人のために左側を空けていることに驚いた。当初は、その場所だけで見られる光景だと思ったという。
「ところが、その後の数日間、板南線から淡水線まで乗ってみても、どの駅で乗り換えても同じだった。どれほど混んでいても、皆が同じように並び、無理に割り込む人は一人もいなかった」
さらに驚いたのは、信義区の台北101のすぐそばで見つけた小川だった。弁護士が「台湾で最も地価が高い」と表現するにぎやかな一等地に、澄んだ水が流れていたという。
「水中を泳ぐ小魚の姿まではっきり見え、水草がゆったりと揺れていた。周囲には、紙くず一つ、ビニール袋一枚落ちていなかった」
弁護士は、そのときの気持ちをこう語った。
「中国のインフラは確かに立派だ。高速鉄道も本当に速い。だが、目の前のきれいな小川を見ていたら、何も言えなくなった」
昼食を取るために入った弁当店でも、心を動かされる光景を目にした。
周りの会社員や学生は、食べ終わっても食器を置いたまま立ち去ることはなかった。静かに食器やトレーを返却場所まで運び、種類ごとに分けて片付けていた。紙ナプキンで自分が使ったテーブルを拭き、次に使う人が気持ちよく食事できるようにする人もいたという。
ビルの高さでは測れない社会の豊かさ
弁護士は帰国後も長く、この旅で見聞きしたことについて考え続けたと語った。
「本当の違いは、ビルの高さや道路の広さといった目に見えるものではなかった。日々の暮らしに根付いた公共心、自ら進んでルールを守る姿勢、見知らぬ人への思いやりや敬意、そして自然と穏やかに共存しようとする心にあった」
「こうしたものは、いくらお金をつぎ込んでも手に入らない。数年で築けるものでもない。何世代にもわたる家庭での教育や社会全体の雰囲気の中で、少しずつ育まれるものだ。今回は、本当に感服せざるを得なかった」
鄭氏も、台湾は伝統文化を受け継ぎながら現代社会を築く一つの可能性を示していると語り、中国本土の人々にも自分の目で台湾を見てその意味を考えてほしいと呼びかけた。
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