中国共産党(中共)が海外の華人社会を監視・統制するために構築したとされる連絡拠点網が、日本にも広がっていることが、国際人権NGOの調査で明らかになった。ス
ペイン・マドリードに本拠を置く「セーフガード・ディフェンダーズ」が11月6日に公表した報告書によると、中共当局が正式に指定した海外の連絡拠点は少なくとも91か国の1247か所に上り、日本でも東京や名古屋、福岡などに複数の系統の拠点が設けられていたという。
報告書「A Formula for Repression – China’s Global Grid for Community Control(弾圧の方程式:中国の地域社会統制のグローバル・グリッド)」によると、中国国内で住民を数百世帯単位の「網格(グリッド)」に分けて監視する仕組みが、2014年以降、海外にも広げられてきた。報告書の日本語要約に掲載された拠点所在国の一覧には、日本も含まれている。
台湾の英字紙タイペイ・タイムズによると、報告書はオランダ・ハーグで開かれた「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の年次総会で発表された。セーフガード・ディフェンダーズのウェブサイトでは、英語の全文に加え、日本語を含む10言語の要約版が公開されている。
東京に華僑連合会の連絡拠点 世論把握や政策宣伝も
報告書によると、中国江蘇省蘇州市姑蘇区の華僑連合会(僑連)は2024年、東京に「委員工作室」を設置した。在外華僑の声を聞き、その要望を区の各部門に伝えることを目的としている。
同報告書の拠点一覧によると、2024年5月ごろには、姑蘇区として初めてとなる海外連絡拠点の看板が東京に設置された。報告書は、こうした活動をグリッド管理員の任務の一つである「世論の把握」に当たるものと位置づけている。安徽省の華僑連合会も日本で活動していたという。
報告書によると、同僑連は2024年に代表団を日本へ派遣し、在日華僑に対して中共の第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)の内容を説明した。参加者を集めるため、漢方医による健康相談も用意されていたという。報告書は、この活動を中共の方針を海外の華人社会に浸透させる「法・政策教育」の事例として取り上げている。
東京の「海外110」、暴露後も中国側と交流
中共の海外拠点について、セーフガード・ディフェンダーズは2022年、福建省福州市の警察による「海外110」と呼ばれる拠点網の存在を指摘しており、その中には東京も含まれていた。
今回の報告書によると、2022年の暴露後、警察の看板は撤去されたものの、拠点を受け入れていた団体と中共側との関係は続いていたという。
報告書が引用した福州側の記録によると、東京の受け入れ団体の会長は2024年秋、福州市の華僑連合会を2度訪問した。2度目の訪問では、日本に住む福州出身者の学業や生活、仕事の状況について報告したという。
在日法律顧問、大使館の委託で刑事事件を担当
報告書は、中国の全国組織である中華全国帰国華僑連合会が、海外で活動する弁護士を法律顧問委員会の委員に任命していることも取り上げた。同報告書によると、日本在住の委員は2017年、在日中国大使館・領事館から委託を受け、刑事事件を扱ったという。
また、報告書が紹介した2021年の発言によると、この委員は「祖国の主権を守り、独立に反対し統一を促進する」ことが在外華僑の重要な任務であると述べた。
東京・名古屋・福岡などに拠点 警察や司法当局も関与
セーフガード・ディフェンダーズの報告書には、中国の省や地方政府の組織ごとに海外拠点をまとめた一覧が掲載されている。これによると、日本には少なくとも十数の系統の拠点や任命者が存在し、中共の警察、司法当局、統一戦線工作部、各地の華僑連合会などが関係しているという。
警察関係では、福建省福州市公安局の「海外110」が東京に、江蘇省南通市公安局の「警僑連動」海外分センターが福岡と設けられていた。福州市の拠点は2022年、南通市の拠点は2023年より前の記録に記載されている。
華僑・華人の生活支援や相互扶助を目的とした組織、旧国務院僑務弁公室の「華助中心」は東京と名古屋に設けられていた。同弁公室は2018年に中共中央統一戦線工作部へ統合・吸収されている。
華僑連合会関係では、安徽省僑連の海外連絡センターが東京にあり、最後の記録は2024年9月となっている。姑蘇区僑連の海外連絡拠点も東京に置かれ、2024年5月ごろに看板が設置された。
また、無錫市僑連の「海外無錫郷情駅站」や北京市僑連の海外名誉職も東京に存在していた。
司法関係では、江蘇省司法庁の海外法律サービスセンターが日本に設けられ、常州市の拠点は2024年4月時点で試行段階にあった。南通市司法局の海外法律サービス分センターは、2022年11月に日本で看板を設置したという。
このほか、済南市、杭州市、義烏市、臨安区の各華僑連合会も日本に拠点や関係者を置いていたが、具体的な都市名は記載されていない。
浙江省統一戦線工作部の「海聯駅站」についても、2016年から2017年にかけて日本で指定された記録がある。
報告書によると、中共当局の公開資料には、拠点の所在都市を明らかにせず、設置数だけを記載している例も多い。このため、今回公表された一覧は、海外に存在する拠点をすべて網羅したものではないとしている。
中国大使館は否定 NGOは統一戦線工作部への対応を提言
中国政府はこれまで、いわゆる「海外警察署」の存在を一貫して否定してきた。
カナダのCTVニュースによると、今回の報告書についても、在カナダ中国大使館は「そのようなものはそもそも存在しない」と反論した。
一方、セーフガード・ディフェンダーズは、報告書の内容はすべて中国の党・国家機関自身が公開した資料に基づいていると強調している。
報告書は、海外の華人社会に対する統制の中心に、中国共産党中央統一戦線工作部と、その下で海外の華人団体との窓口を担う華僑連合会があると指摘した。
そのうえで、各国政府に対して6項目の提言を示した。
主な提言には、統一戦線工作部とつながりのある団体を外国代理人登録制度などの対象とすること、地方自治体の公職者や大学などに注意を促すこと、監視や統制の標的となるコミュニティ全体を保護することが含まれている。
また、報告書は、確認された海外拠点は全体の一部にすぎないと指摘する。2022年に「海外110」の存在が明らかになった後も、看板が撤去されただけで、海外の華人社会を管理する仕組み自体は拡大を続けているとの見方を示した。
今回の報告書は、日本にも中共の警察や司法当局、統一戦線工作部、華僑連合会など複数の組織につながる拠点網が存在すると指摘している。ただし、一覧に記載された拠点すべてが現在も活動しているかどうかは明らかではない。
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