在留台湾人評論家・黄文雄氏「東シナ海のシーレーンは、21世紀の中国にとっての生命線」

2006/06/22 更新: 2006/06/22

【大紀元日本6月22日】在留台湾人で「中国の没落」などの著作で知られる評論家の黄文雄氏は20日夕、東京大手町のサンケイプラザで「米中が激突する日」という演題で講演を行い、21世紀の極東地域、特に台湾海峡における米中の国際外交問題についてその認識を語り、その親日的で地球規模に及ぶ独自の視点は、日本人聴衆の拍手喝采を受けた。

黄氏は講演の中で、台湾が大陸に統一された所謂「一つの中国」の期間は、日清間の下関条約が締結される以前の数年間と故蒋介石・国民党政権が国共内戦に敗れて台湾に逃れた数年でしかないと主張した。また台湾が中国の統一に関し拒否し続けてきたのは、国家の建国理念、政治体制、経済格差等々において相違を見てきたからであって、「簡単に言えば結婚しても幸せになれないからだ」と述べた。

また台湾の96年の大統領統一選の際に、中共海軍が東シナ海のミサイル演習で台湾当局を「恫喝」した経緯を挙げ、中共はすでに国家理念の違いなどから武力侵攻しか台湾を統一できないと考えており、台湾国民2300万人の民意の主流は「独立」にあると主張、現在台湾は国際的な認知に係わらず主権国家として存在しており、中共当局がいくら武力を誇示してもその独立過程を阻止することは非常に難しいとの認識を示した。

台湾政界の国内総統選挙については、国内の人気として次期大統領選のある2008年には国民党の馬英九(現台北市長)が当選する公算が大きいが、国内世論はこれによって「統一派」と「独立派」に大きく分裂し国内不安が増大するだろうとの懸念を示した。しかしながら、馬政権が仮に誕生しても現韓国政権・慮武鉉氏のような「親北」のスタンスを採れるだけで一線を越えると米国の外交戦略の標的になるだろうとの認識を示した。

また台湾の教育問題として台湾人に対する「中国人教育」を挙げ、台湾マスメディアも7-8%が大陸の資本ではとの推算を示し、「反台湾的」論調が目立つと指摘。日本国内の教育とメディアの論調も「反日的」であるところは台湾と非常に類似しているのは何故かと疑問を提出した。また台湾司法は、長らく国民党の支配下にあったため、国民党の汚職には甘く、与党民進党には厳しい現状を問題として指摘した。

また21世紀の台湾自体の将来については、米国が対台湾関係法を放棄しない限り、大陸は台湾への侵攻が難しく不可能に近く、また大陸が対台湾外交においてどのような選択肢をとるか、また更に台湾人自身「独立への決意と愛国心」をどれぐらい保持できるかが台湾の将来を左右する要素になると強調した。

台湾海峡の戦略環境については、中共軍は既に台湾を照準として800基以上の長距離ミサイルを準備しており、毎年70-80基を増強しているため、これから2-3年後には台湾を照準するミサイルは1200発を超えるのではないかと推算、中共当局による台湾への「恫喝」を譴責した。その侵攻の時期とシナリオについて、中国共産党の崩壊危機時が最も緊張が高まり「窮鼠猫を噛む」状態になる可能性があるという。中共崩壊の時期は、ソ連共産党の歴史が74年間であったことから見て、残り10年以内と推量した。

また中共は政権維持のため「経済成長」を余儀なくされており、中南米、アフリカ諸国と形振り構わぬ資源外交を展開していると指摘、エネルギーを確保するために、日本や台湾以上に中東など西部地域からのシーレーンを確保する必要に迫られ、南アジアのパキスタンなどに軍港を築こうとしているのはこのためで、21世紀の中国は海外に進出しなければ活路がないのだという。

日中関係については、中共当局が日本を「仮想敵国」に選択したのは、建国以来のことではなく、89年の「64天安門事件」以降だという。中共政権の創立当時の「愛国教育」に基づく仮想敵国は米国が最初で、次にインド、ベトナム、そして日本という風に変遷してきたので、いくら日本が「謝罪」しようと党の存立のためには関係がないのだという。中共当局の日本の次に来る「仮想敵国」は、人口の大きさと資源の国家的な需要からインドになる可能性が大きく、その時は日中関係が劇的に改善されると予測した。

また米中関係については、中国が将来的に資源の問題、或いは台湾海峡問題で米国と衝突する場合になっても、米国は世界GDPの約30%、世界軍事予算の約50%を占める超大国であり、また世界戦略においても米国の同盟国が欧州連合や日本・韓国・台湾などの民主的で経済的に豊かな優等生であるのに対し、中国は北朝鮮などの世界各地の軍事独裁政権と結んでおり、両陣営の優劣は火を見るより明らかと指摘した。

また極東の安全保障については、在日沖縄米軍の戦略的重要性を指摘、もし日本政府が米軍再編に窮する場合は、台湾政府が10兆円規模の予算を歳出して米軍の一部1000人規模の部隊を台湾に駐留させ、米国のプレゼンスを台湾に分散配置することも選択の一つとして安定につながるとの認識を示し、現在の台湾国民の安保上の「死活問題」は日本人より深刻であると表明した。

※黄文雄氏プロフィール;1938年、台湾で出生。1964年に来日し、早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。台湾戒厳令下で著した「中国の没落」で一躍有名になり評論作家活動に入った。1994年の「台湾人的価値観」(前衛出版社)では、台湾ペンクラブ賞などを受賞。現在、拓殖大学客員教授のかたわら、「日本李登輝の会」理事。他の著作に「日本の植民地の真実」(日本扶桑社)など多数。

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