【大紀元日本3月18日】人類史上最大級の災難、東日本大地震の発生から今日で1週間。地震発生後、世界各地から日本に数々の応援メッセージが届いている。ニューヨークタイムズの元東京支局長ニコラス・クリストフ氏が今回の大地震の翌日、同紙に日本人への思いを綴った文を寄稿した。以下はその抄訳である。
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日本への同情、そして敬意(Sympathy for Japan, and Admiration)
痛ましい地震の後、今日、我々の思いは日本の人々と共にしている。日本史上最悪の地震。しかし、1995年の阪神大震災を経験したものとして、私はこう付け足したい。「今後数日、数週間、日本を見ていよう。私たちはきっと何かを学ぶだろう」と。
日本政府の地震対応が特に良いという意味ではない。その政府は1995年の震災救助では間違った判断をしており、他国から送られてきた薬や救助犬を取り上げていた。その政府の無能により、人々はまだ瓦礫の下で生きていた最初の数日間で、いくつかの命が奪われてしまったのだ。
しかし日本の人々の忍耐力、冷静さと秩序は、実に気高いものだった。日本には「我慢」というよく使われる言葉がある。英語にはぴったりの訳はないが、 「toughing it out(耐え抜く)」と似た意味。神戸の人々がまさにそれを実行したのだ。彼らが勇気と協調性と共通目的を持って「我慢」したことに、私は畏敬の念さえ抱いた。
日本にいた間、私はしばしば日本人の秩序と礼儀正しさに感動していたが、神戸の震災後ほどその思いが強くなったことはない。神戸空港がほぼ全壊し、街中の商店のガラスが割れていた。私は略奪や救援物資をめぐる争奪をスクープしようと街中を探し回った。ようやく、2人組の男に強盗に入られたという店主に巡り会えた。私は少し大げさにこう尋ねた。「同じ日本人が、自然災害を利用して犯罪に走ることに、驚きはありますか?」店主は驚いた顔で「誰が日本人だと言った?彼らは外国人だったよ」と答えた。
日本にも貧しい人々はいるが、他の国々と比べると、極端に貧しい人はあまりいない。しかも、彼らは高い共通の目的意識を持っている。中流階級層が異常に厚く、実業界の巨頭であっても、儲け過ぎていることは決まりが悪いと考える傾向がある。そのような共通の目的意識は、日本の社会構造の一部であり、特に自然災害や危機の後で顕著に表れてくるのだ。
これについては褒め過ぎてもいけない。日本の礼儀正しさの裏には、学校や職場におけるいじめや、不法行為で利益を得るやくざ、政治家と実業家の癒着などの問題も確かに存在する。しかし震災直後に、やくざまでもが被災者のために食料などを配布するカウンターを設置していたことは、衝撃的だった。日本の社会構造は(地震で)決して引き裂かれることはなかった。それどころか、かすり傷ひとつ負わなかった。
日本人のこういった忍耐強さは、言葉の中にも組み込まれている。人々はよく「仕方がない」を口にし、他人にかける言葉として最も多いのが「頑張ってください」。耐え抜け、強くなれという意味である。自然災害も「運命」として受け入れられている。16世紀に日本を訪れたイエズス会の人による古い記述を読んだことがある。そこには、村が地震に破壊された数時間後には、農民たちは自分の家を建て直し始めたという話があった。
忍耐強く、周りと一緒に立ち直る精神は、日本人に深く根付いている。私はしばらく長男を日本の学校に通わせたことがあるが、幼い子供たちが真冬の寒さのなか半ズボンで学校に行く光景が忘れられない。気骨をつくるためだというが、私は単に風邪をひかせているだけだと思っていた。しかしそれは「我慢」をしみ込ませるためのまたひとつの努力だった。そしてこの「我慢」こそが、日本を第2次世界大戦から立ち直らせ、また、バブル崩壊後の「失われた10年」を耐え抜かせたのだ。実際、日本人はもっと不平を言ったほうがいいかもしれない。そうすれば、日本の政治家ももっと答えてくれるだろう。
自然との関係についても言及しなければならない。アメリカ人は、自分たちを自然と対立した存在として考え、制御しようとしている。それと対照的に、日本人は、自分たちを自然の一部として考え、たくさんの地震をもたらした自然に身をまかせている。日本語の「自然」という言葉でさえも、たった100数年前にできた新語である。なぜなら、そのような概念を表現する必要が昔の日本には無かったからだ。阪神大震災後の本紙エッセイに、私は同じようなことを書き、最後に、日本の最も偉大な俳人の1人、松尾芭蕉の句で締めくくっていた。
「憂き節や竹の子となる人の果て」
日本の回復力と不屈の精神に、気高さや勇気を感じる。世界もまもなくそれを目の当たりにするだろう。これはまた、綿密に編み込まれた日本の社会組織、彼らの強さと回復力が、輝きを放つときでもある。日本の人々は必ず力を合わせてくれると私は信じている。その姿は、分裂と口論と私利私欲にかられたアメリカの現状とは対照的と言えよう。私たちは日本から学ぼう。私たちは日本を思い、そして、この痛ましい地震を経験した日本に深い同情と、深い敬意を表したい。
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