【大紀元日本12月23日】広東省陸豊市烏坎村で、9月から続く村民による大規模な抗議デモに国際社会が注目する中、中国政府はついに村民に歩み寄りをみせた。
広東省共産党委員会の副書記が率いる対応チームが現地入りし、村民代表と対話、村民の複数の要求を口頭で受け入れ、事態は一旦沈静化した。抗議の焦点となる無断売却土地の返還や、民主選挙による村幹部の選出について、双方がこれから交渉していくという。一方、「現地政府の対応は一時的な応急策で、問題が実際に解決されるかは疑問だ」という見方も根強い。
村を封鎖する警察隊はすでに撤退し、中共中央紀律委員会委員で広東省共産党委員会の副書記・朱明国氏が率いる政府対応チームが現地入りした。
20日午前、同政府対応チームは、幹部と村民が参加する会合を開き、朱明国・副書記は重要発言を行った。その中で「村民の主な訴求は合理的である」と認め、「村民の一部の過激行為を理解し、許す」「責任を追及しない」と述べた。そして村民代表らに対して「もし依然として村民を煽いで政府と対立させ、外国の敵対勢力に利用されるままでいるならば、必ずその責任を追究する」と警告した。
広東省のトップ、同省共産党委員会の汪洋・書記も次の指示を伝えた。「今回の烏坎村の事件は偶然性と必然性の両方を持ち合わせている。これは経済中心の社会の発展過程において生じた対立・不満が、長期にわたり蓄積した結果だ。私たちの『一手硬、一手柔(意味:柔和策で駄目なら強硬手段に出る)』の対応の必然的な結果である」。
汪洋書記が指している「一手硬、一手柔」対応はどういう意味なのか、インターネットでは熱い議論を交わされており、人々は政府の今回の対応の裏を読もうとしている。
中国在住の憲政学者・陳永苗氏は大紀元の取材で、この言葉は国民ではなく政府に発するメッセージであろうを示唆した。
21日、同チームは村民代表と対話した。その結果、村民の点の要求を口頭で受け入れた。逮捕された村民4人の釈放、監禁中に急死した村民・薛錦波さんの遺体の返還、海外を含む中立メディアと遺族が立会いの下での検死と死因の公表、村民が設立した臨時理事会の合法性を認めること。
村民たちも自身らの
抗議の横断幕をはずす烏坎村の村民(MARK RALSTON/AFP/Getty Images)
抗議活動を沈め始めた。十数日間設置して道路の障害物を撤去し、予定していた同日午後の大規模デモを中止、村中の横断幕も取り外した。
双方が第1目の合意に達した後、中国共産党の機関紙「人民日報」は同事件を論じる評論を出した。村民の合理的な訴求が重視されなかったとし、第1線の政府機関との対応の誤りにより、理性的な陳情活動が過激行為に化した、などと結論付け、事実上抗議の合法性を認めた。
また
政府メディア「中国日報」の英字版は、村の土地を大量に無断売却した同村の共産党書記と村長はすでに12月中旬に懲戒免職されて、いまは現地検察機関の取調を受けていると報じた。
BBC中国語版は現地村民の証言として、今回の合意は、抗議の焦点である無断売却された土地の返還について触れていないと報じた。
村民代表・楊色茂さんはBBCの取材に対して、政府が約束事を履行しなければ、村民は抗議を再開すると話した。
前述の中国憲政学者の陳永苗氏は今回の対話結果について、政府の対応はただの陰謀なのか、それとも誠意を持って履行されるのか、現時点ではまだ見極められないと話し、次のように情勢を分析した。
「2012年下半期には、共産党の第18回全国代表大会(下略・18大)が開かれる。今回の抗議事件への対応は、中央政治局の常務委員のポストを狙っている広東省のトップ汪洋氏にとって、政治生命がかかっている一大事である。もし、弾圧あるいはその他の不適切な対応を取り、国内外の非難を招いてしまったり、国際的な大事件に発展したりすると、汪洋氏の中央政治局入りの夢は消えてしまう。しかも、その政敵はこの事件を利用して彼の揚げ足を取るであろう。だからこそ、今、同氏は事態を沈静化させる穏便な対策を取っている」
今後の流れについて、陳永苗氏は「汪洋書記長は先延ばしの手段を取るであろう。ゆっくりと対話し、時間をかけて解決して行こうとするだろう。とにかく、18大が終わるまでに時間稼ぎするではないか」との見解を示した。
一方、北京在住のある情報筋は陳氏と近い観点を持っており、海外メディアの取材で「この抗議事件に参加した人を厳しく罰するのは確実だ。いまは官民の対立が一時的に緩和しているだが、それも権力闘争のための応急策である」と話した。
同情報筋は、現在周辺地域の海門市や、汕頭市などの地区で相次ぎ大規模な抗議が発生していることについて「烏坎村の事件は中国の民衆にあるメッセージを発している。つまり権益を守るためには戦うしかない。その幕が今、開かれ、中国の民主化の進展を促している」と述べた。
マイクロブログ・微博の書込み情報によると、現地の村では約80人の外国メディア取材班が留まっている。
RFAは専門家の見解として、「村民たちは正当な訴求を頑なに続けており、民主的組織を結成し、強い意志で対抗している。それに加え、国際社会に注目されているため、政府高層部と交渉する今回の機会を勝ち取った」と報じた。
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