【大紀元日本2月27日】「深層改革を行わない限り、中国が経済危機に直面することになる」。世界銀行と中国国務院の発展研究センターが共同でまとめた報告書の警告だ。
『2030年の中国』と題するこの報告書は27日に北京で発表される。世界銀行のロバート・ゼーリック総裁が発表式典に出席する予定。報告書の内容を報じた米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、作成にかかわった6人の専門家から同報告書の内容を事前に入手したとしている。
WSJの報道によれば、報告書は次世代の中国指導層に助言することを目的とし、過去10年間の胡錦濤体制における経済発展モデルの問題点を提起する。「中国経済は、ほとんど予兆なしで急激に減速する危険性がある」と報告書は警告し、また、そういった減速は銀行などが抱えている難題を一段と深刻化させ、経済全体を危機へと追い込みかねないと分析している。
「国有企業の役割を制限すべき」
報告書は特に中国の国有企業に焦点を当てている。国有企業は資産管理会社の監視・指導を受けるべきだとし、政治目的ではなく商業ベースでの企業の運営を保障すべきだと指摘した。「中国は国有企業の役割を制限すべきだ。独占状態を破り、民営企業が競争に参加できるようにしなければならない」。先月、シカゴで開かれた経済会議でも、ゼーリック総裁はこのように述べている。
中国の国有企業はエネルギーや資源などを独占し、電気通信やインフラの手綱も握っている。国からの低金利融資も容易に得られる。米財務長官のティモシー・ガイトナー氏は、中国の国有企業がもつこれらの便宜が国際競争のあり方を狂わせていると批判している。中国国内でも、国有企業は独占により得た巨大な利益をさらに他の業界に投資しているため、国内競争が全般的に窒息しており、各業界関係者の不満が積もっている。
「中国の国有企業は十字路に立っている」。米ゴールドマン・サックスの元大中華圏部門会長でプリマベーラ・キャピタルのフレッド・フー会長はこのように語り、「巨大な国有企業が主導する国家資本主義の道を歩むのか、それとも自由な市場経済の道を歩むのか、政府が決断しなければならない」と指摘した。
報告書は同時に、国有企業が株主となる政府に支払う配当を大幅に引き上げるよう助言した。それによって、政府の財政収入が向上し、さらに新たな社会事業に投資できるという。
こういった内容が含まれた同報告書は、すでに国有企業の経営者から強烈な反発を受けていることを、作成にかかわった専門家らは明かしている。
「内部性質の問題」
北京の経済学者で天則経済研究所理事長の茅于軾氏はボイス・オブ・アメリカの取材で、国有企業の独占問題は非常に深刻な問題だと賛同しつつ、その問題点は報告書が指摘する管理の問題ではなく、「内部性質」の問題だという見方を示した。
国有企業には経営上の特権があり、その特権は「政治上における特権と絡み合っている」。これが中国社会にとって致命的であると茅氏は指摘した。「中国のほとんどの国有企業は民営企業に転換されるべきだ」と茅氏は主張する。
北京理工大学の胡星斗・経済学教授は、中国経済の課題を解決するカギは、行政介入と国有独占の形態を取り除くことだと指摘。「行政権力は市場に介入することなく、市場の環境整備に務めるべきだ。また、国有企業の独占をなくし、民営企業を使い捨ての駒としてではなく、その役割を十分に重視すべきだ」と助言した。
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