台湾で8月から実施する、高校歴史教科書綱要の微修正案をめぐって、さまざまな議論が盛んに起きている。「台湾の歴史を大幅に改ざん」「親中国派の仕業」などとして、野党・民進党や学生を中心に反対運動が起きている。陣頭に立っていた男子学生が7月30日に自殺したのを受け、学生は綱要を改訂した台湾教育部前で1週間近く抗議を続け、新綱要の撤廃を求めている。
2013年末、教育部は同新綱要を発表、「脱台湾化」ではなく、「脱日本化」を目指したものだと説明した。その一方、「中国寄り」の色合いが強いとも懸念された。こうしたことから、当初から民進党が「政治の力で教育を主導しようとしている」「脱台湾化を図っている」などと綱要への反対を表明した。
教育部は7月はじめ、同微修正案の争点として17カ所の表記変更リストを発表。次にその内容の一部を説明する。
日本に関しては、「日本統治時期」を「日本植民統治時期」に、「慰安婦」については「強要された」との語句を追加、「台湾人および抗日戦争」の項目も新設した。また、インフラ整備などの日本の統治は台湾住民のためではなく、日本人移民の生活を改善することが目的と強調する内容なども盛り込まれた。
「中国寄り」に関しては、「中国」を「中国大陸」にと変更し、台湾と中国の関係を近くしたとされる。そのほか、「(中国からの国民党が)台湾を受け継いだ」を「(同)台湾を解放した」など10カ所あまりの変更は、漢人(中国人)及び中国文化による台湾への影響を強調するためとして、綱要反対派が批判を強めている。
学生も「台湾の歴史を正しく知る権利がある」として、綱要の撤廃を求める抗議行動を起こしている。こうした中、抗議行動を率いる学生幹部で専門学校の男子学生(20)が7月30日、寝室で練炭自殺を図り死亡した。遺書などは発見されていないとされるが、周囲の話によると、自殺する数日前、誕生日であるこの日に「詳しくは明かにできないが、絶対的かつ有効な方法で問題の綱要を廃止させる」と話していたという。学校側は、男子生徒は以前から精神に障害があるとしているが、同級生や友人たちは「とても明るい人で、学校側の発言はにわかに信じられない」と疑問を示した。
同日夜、大勢の学生が教育部前の大通りを埋め尽くし、亡くなった男子学生を追悼、新綱要の撤廃を改めて求めた。その間、十数人の学生が台湾立法院(国会)に一時侵入、教育部トップの引責辞任と綱要の廃止を要求した。ある学生は取材記者に対し、「このブラックな新綱要は、親中派の学者、中国政府から利益を供与された学者が、私利私欲のために作ったものだ」と憤りをあらわにした。
教育部前での抗議行動は6日夕方までに続いた。新綱要を推し進める与党・国民党内部からも、反対意見があったとされる。
(報道・台湾大紀元取材班 翻訳編集・叶子)
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