[ハンボグド(モンゴル) 14日 ロイター] – モンゴルのゴビ砂漠で、石炭を満載した数千台もの大型トラックが、中国国境に向かう渋滞した道路をのろのろと進んでいる。中国まで1週間かかることもある。
トラックの運転手たちは、石炭のほこりまみれのトラックの上で食事を作り、食べ、眠る。8世紀以上も前にチンギス・ハンの大軍の胃袋を満たしたものと同じ肉のスープを食べ続けている人も多い。
トラックの列沿いに、たばこや水、ディーゼル燃料を売って歩く人たちが活発に商売をするようになった。中国の税関通過待ちのトラックの列の長さは、130キロに達することもある。
石炭価格の回復と中国向け輸出増加のおかげで、モンゴルの炭鉱は今年大儲けした。通貨・債務危機により、国際通貨基金(IMF)の支援を必要とする事態に追い込まれたモンゴルの小さな経済にとっても、石炭は生命線となっている。
だが、両国間の主要な国境検問所であるモンゴル側のガシュンシュハイトと中国のガンツモッドでは、検問通過に長時間の遅れが生じており、こうした恩恵を損ねている。これによりゴビ砂漠の炭鉱から中国に石炭を運ぶトラックによる長蛇の列ができている。
通関の遅れは、石炭貿易の急成長による交通量の増加に原因があるとされている。だが、モンゴル当局が多発する石炭の密輸を止めることができずにいるため、中国側がここ数カ月、検問での審査を強化していることも事態を悪化している。
中国の内モンゴル自治区の通関担当者は、コメントの求めに応じなかった。北京の中国税関総署は、取材に応じなかった。
<回復も頭打ちに>
地元警察によると、今年の石炭価格上昇を受けて国境の交通量は倍増。中国とモンゴルの双方で、警察や税関のスタッフに大きな負荷がかかっている。
ゴビ砂漠の炭鉱は、中国での石炭価格上昇に乗じて利益を得ようと来年は増産を計画しているため、国境のボトルネックはさらに悪化しそうだ。
中国では、環境規制の強化により数百カ所の炭鉱が閉山したほか、小さな港での石炭の荷揚げが規制されため、石炭価格が上昇している。
北朝鮮の核実験に対して国連が経済制裁を強化し、中国が北朝鮮からの石炭輸入を減らしたことも、モンゴルがその穴埋めに入る好機を生んだ。
モンゴルの中国向け石炭輸出は、今年上半期に4倍以上に膨らんだ。だが通関の遅れが発生した7月以降、その伸びは頭打ちとなっている。
ガシュンシュハイトのモンゴル側の通関責任者、バター・ダワースレン氏は、両国とも通関の人員が不足していると説明する。10月に北京で行われた中国共産党大会のようなイベントも、状況を悪化させたという。
モンゴル外務省は、そもそも通関の遅れの最初の原因となったのは、モンゴル人の多くが長期休暇を取る夏の祭典「ナーダム」だったと説明する。
また、石炭の積荷に生肉や銃がまぎれているケースがあるとの中国側からの抗議を受け、モンゴル側でも積荷の検査により時間をかけるようになったと、ダワースレン氏は話す。
運転手が生きた狼を中国側に持ちこもうとしたことすらあったという。
「もちろん、誰も長い列になど並びたくない」と、ダワースレン氏は言う。同氏は、1日の通関処理能力を、現在のトラック700台から3000台に増加させれば、問題はすぐに解消できるとした上で、「運転手のためにも国のためにも良くない状況だ。解決に向けて取り組んでいる」と語った。
トラックの渋滞がない時でも、国境に行くのは恐ろしい試練だ。猛スピードの車が片側1車線の道を行き交っている。街路灯がなく、飲酒運転が横行しているため、夜はさらに危険が増すと運転手たちは語る。
「とても危険だ。毎日、道路脇でひっくり返った車をみかける」と、あるドライバーは語った。
ロイターの記者が最近この道を通った時にも、ひっくり返ったトラックや、正面衝突を起こしてつぶれた車がうち捨てられているのを何台も見かけた。
「信じられないものを見ることがある」と、運転手のドゥンシグ・バーサンジャブさんは、渋滞で動かない車列の脇に立って言った。「よそから来る人は、これまで見たもののなかで最悪だと思うだろう。でも私たちはいつも見ているので、何も感じなくなった」
炭鉱運営会社は、長期的な国境のボトルネックの解消策は、炭鉱とガシュンシュハイトを結ぶ新たな鉄道だと言う。
モンゴルは、200キロ以上に及ぶレールの土台部分をすでに築いているが、その後予算不足で計画は中断してしまった。
あまりにも長い間、モンゴルの厳しい自然環境に土台の基礎部分が放置されてきたため、計画を最初からやり直す必要があると、地元の当局者はみている。
鉄道計画の命運がどうなろうと、ゴビ砂漠から中国に向け、少しずつ進んでは止まる渋滞の中にいる運転手たちは、運転し続けるしかない。IMFの支援計画の影響で緊縮財政を敷くこの国では、他に雇用の機会は多くない。
「これは極めて危険で、命を脅かす仕事だ。でも、他に選択肢がない」と、トラックから降りてきた運転手が言った。ちょうど太陽が、ピクリとも動かない車の列の向こうに沈むところだった。
「他にすることは何もない」
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
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