医師による倫理組織は、2013年から国際連合人権理事会(UNHRC)に請願していた、中国の強制臓器摘出の停止を求める署名活動を終わらせると発表した。WHOの移植問題検討組織に、強制臓器摘出問題に関わったと疑われる中国移植医がメンバー入りしたため、「署名者情報の安全確保が難しい」という。
「強制臓器摘出に反対する医師の会(DAFOH)」代表トルステン・トレイ氏は6月25日、公式サイトで、2013年から5年間で300万人の署名を集めた「法輪功学習者に対する臓器奪取の停止を求める」署名活動の停止を発表した。
7月にスペインで開かれた2年に1度の国際移植会議の後、国連組織である世界保健機関(WHO)組織で、専門家や医師からなる「臓器と人体組織の提供と移植に関する作業部会」30人のメンバーに、中国移植医・黄潔夫氏が、WHOの推薦により選ばれた。
黄潔夫氏は、中国臓器移植・提供委員会委員長で、元衛生部副部長(厚生省副大臣に相当)。中国臓器移植の発展につなげた「移植界の権威」といわれる人物。黄氏は、2016年8月に香港で開かれた国際移植会議から、北京、昆明、バチカン、香港など6回連続で移植関連フォーラムやサミットに出席した。
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DAFOHは、黄潔夫氏がWHO臓器関連問題の作業部メンバー入りするのはWHO原則に反しているとして、反対を表明し、署名運動終了の一因とした。
「WHOの指針では、移植手術にいかなる売買があってはならないとしているが、中国は違反している。さらに、臓器入手の透明性や経緯なども公にされていない」とDAFOHは指摘した。
さらに、DAFOH代表のトレイ医師は「黄潔夫が、国連組織に対して、この活動の署名者の個人情報を照会する可能性は否定できない」「署名してくれた勇敢な人々の個人情報と安全を晒(さら)すことになる」と、署名活動中止の理由を述べた。
中国臓器移植の発展を支持するWHO幹部
環球時報7月4日付によると、スペインで開かれた国際移植会議では、中国臓器移植の医師や専門家ら150人が出席した。記事は、「中国の移植経験は、世界に称賛されている」「疑われた臓器狩りはでっち上げだということが、WHO臓器移植プロジェクト代表のホセ・ヌニェス氏ら医師の立場から証明された」と書いている。
WHOマーガレット・チャン総裁は、2016年10月に北京の人民大会堂で開かれた「中国国際臓器移植・提供会議」に送ったビデオメッセージで、「WHOはいつでも中国移植発展に貢献する」と述べ、中国の臓器移植技術発展の成功体験は「中国モデル」として、他国も参考にできると語った。
中国の強制臓器摘出問題の停止に向けた署名は、世界中の医師や人権擁護者、倫理専門家らがサインしていた。しかし、国連が対応してこなかったことにトレイ医師は不満を示した。「ジュネーブの国連本部を訪問し、300万人分以上の署名を渡し、この人道犯罪について話し合ってきた。しかし、国連はこれまで検証できる行動を起こしていない」と署名活動停止の発表文書に書いている。
米国はこのたび、国連人権理事会について、中国やベネズエラ、シリアなど、世界で明らかになっている露骨な人道犯罪に対応していないと批判し、離脱した。これを受けてDAFOHも、国連高等弁務官事務所にあてた臓器摘出に反対する署名も、関心の低下が予想されるとした。
米国国務省は年次人権問題報告書の中で、中国の臓器強制摘出の疑いについて言及し続けている。
DAFOHは、「強制臓器移植問題について関心を示す国と政府を支援する」と文末に加えた。
(編集・佐渡道世)
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