中国は11月6日から9日にかけて、国連人権理事会の第3回人権査定を受け入れる予定だ。近年、中国の人権状況が悪化し続けている。人権侵害を訴える被害者たちは、中国の人権法律は中身のない党のスローガンに過ぎないと指摘する。
中国外交部(外務省)陸慷・報道官は、政府は国連査察を重視し、中国政府による人権報告書を国連に提出したと発表した。楽玉成・副部長(外務副大臣)を代表とした中央政府、新疆ウイグル自治区、チベット自治区政府と香港・マカオ特別行政区の担当者で構成された中国代表団が、この国連による査察に参加する。
国連人権理事会は定期的に加盟国の人権状況を見直し、報告書を作成する。前回の中国提出は2013年10月だった。人権活動家・曹順利氏は同年9月、国連の審議会に出席するためジュネーブへ向かおうとしたが、北京空港で連行された。北京の朝陽区拘留所にいる間、曹氏の健康状態は著しく悪化した。当局は家族や法定代理人の面会を何度も拒絶し、曹氏は2014年3月に死亡した。
生前、曹氏は国連に提出するための中国政府の人権報告書作成に寄与しようとした。自ら調べた何千ページにおよぶ人権アンケート資料を受領してもらうため、外交部の門前で座り込みを続けた。
2017年12月、米国政府はマグニツキー人権法にもとづき、当時の北京市公安局朝陽分局局長・高岩氏の制裁を決定した。米政府の通告文には、曹氏の死は拘禁によるもので、面会や医療措置が取られなかったと書かかれている。
また、ウイグル人を対象とする人権弾圧は国際的に注目されるようになった。チベット自治区書記だった陳泉氏が、新疆ウイグル自治区書記に転任以来、同地域に住む少数民族への抑圧は強まった。
海外メディアは、新疆ウイグル自治区にある超法規的措置で大量拘束された収容所の存在を暴露している。人権団体やウイグル組織によると、収容者は100万人以上。中国当局は、収容施設は「職業訓練センター」であり、過激思想からの更生と説明している。新疆では警察官や警備員を多数募集し、監視ネットワークを構築する技術を導入したと報告されている。
米上院と下院の超党派議員は、新疆ウイグル自治区の陳全国書記に対してマグニツキー人権法による制裁を科し、国際オリンピック委員会に対して2022年北京大会の開催を見直すよう求めている。
2016年、カナダを訪れた王毅外相に、記者会見でジャーナリストが人権問題について質問した。王外相は「あなたは中国に行ったことがあるのか」と聞き返し、質問にいらついた様子を見せた。外相は、中国人権については話す権利を持つのは中国人だと述べた。
2018年6月と7月、深セン拠点の佳士科技(JASIC)の労働者たちが労働組合の設立と待遇改善を求め、北京大学や人民大学の学生や社会知識層など全国数百人の支援を受けた。しかし、公安により強制鎮圧された。多くの労働者が逮捕されたり、行方不明になったり、複数の学生支援者も連行され、その後行方が分からなくなっている。
汚職役人の告発、人権問題、法輪功迫害問題など、中国では最も難しい弁護案件を請け負ってきたクリスチャンの高智晟弁護は13年間近く、共産党当局に拘束や監視を受けている。2005年末に胡錦濤主席に法治の徹底を求める公開書簡を送付したところ、逮捕された。海外のメディアによると、陜西北部の実家で軟禁状態に置かれていた高智晟氏は2017年8月、支援者により救助されたが、同年9月に山西省で拘束された。現在も行方不明になっている。
2018年8月1日、山東大学の教授だった84歳の孫文廣氏は、米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)との電話インタビューの最中、公安に連行された。中国共産党政権の対外援助政策を批判したことが原因と考えられている。2週間後、自宅に戻り再びVOAの取材に応じた孫文廣氏は、警察当局は妻を脅し、夫婦で外出していると海外メディアに嘘を言うよう要求されたという。二人はこの要求拒否後に所在がわからなくなっている。
2015年7月9日、中国当局は人権擁護派の弁護士や活動家を大量に拘束し、人権運動を抑制しようとした。事件が起きた日付から「709事件」と呼ばれ、国際社会は、近年の中国の著しい人権状況の悪化を象徴する事例とみている。弁護士たちには国家転覆罪や扇動罪で刑罰が下った。すでに3年4カ月以上拘束されているが、家族は面会を許されていない。
拘束された王全璋弁護士の妻、李文足さんはVOAの取材に答え、弁護士家族の被った状況が中国の人権状況を証明するのに十分だと述べた。李さんは、夫には3年以上会えず、子どもも学校に通う許可が取り消された。当局には常に監視されており、安定した暮らしができていないと訴えた。
「中国に人権?ありません。法律に『人権』と記し読み上げれば人権があるとでも言っているかのよう、空虚なものです」
2017年冬、北京では数万人におよぶ低所得者や地方労働者と家族が都市中心部から強制排除された。石景山区、海淀区、房山区、順義区、昌平区から追い出された「底辺人口」と呼ばれる人々は、私財を没収されたとして抗議活動を行った。しかし、参加者たちは相次ぎ逮捕された。
中国共産党北京市委員会の蔡奇書記は公開文書で、この「底辺人口」一掃運動について「(反対者がいれば)強行突破を辞さない」と発言、世論に強く非難された。
米国は、国連人権理事会には人権状況の非常に悪い国が加盟しているとして2018年6月に離脱した。人権理事会は、特定国家の人権侵害をめったに糾弾しておらず、人権組織や活動家は、国連人権理事会の会合は賄賂や汚職がまかり通っていると指摘する。最近、国連は中国の支援により支えられ、組織のあり方に疑問視されている。
(翻訳編集・佐渡道世)
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