中国政府が新疆ウイグル自治区に開設した30以上もの強制収容所では、100万人ものウイグル族やその他の少数民族が思想転向のために拘束されている。虐待や拷問が相次ぐともいわれる当局主張の「職業訓練センター」では、収容者は強制労働させられているとの証言や映像証拠が増えている。
米ニューヨーク・タイムズは12月17日、海外に逃亡した収容者の家族から情報収集している米アリゾナ大学卒トルコ人のメフメット(Mehmet Volkan Kasikci)氏は、「収容所ではゼロ賃金か非常に低い賃金で働かされている」との最新情報を報じた。
新疆から脱出したカザフスタン人を支援するカザフ人権団体アタ・ジュート(Ata Jurt)の創設者によると、収容者は政治転向を完了した後、強制的に働くよう命じられている。収容者の親族10人からの聞き取りで分かったという。収容所での労働賃金は非常に低く、労働時間や公衆衛生などの環境は劣悪だという。
アパレル業界幹部「新疆から労働者10万人追加」
2018年3月に中国繊維アパレル連盟の副社長・孫瑞哲副代表は演説で、収容所と工場労働者について初めて言及した中国高層の人物。孫副代表は2018年中に、貧困層や第三類人員(受刑者家族)を中心に、新疆ウイグル自治区から繊維および衣服産業の労働人口を10万人以上追加する計画があると述べた。
さらに、新疆南部のカシュガル当局者は、工場労働人員として10万人を派遣する予定を立てていた。2018年初めに発表されたカシュガル地方予算計画表によると、収容所で「雇用問題の解決」がなされたという。
また、収容者だけでなく満期釈放された人でさえも、収容所が管理と監視する工場に動員されていることも明らかになった。彼らが生産する靴下、スカートなどは、中国国内のアパレル店舗のみならず、海外のアパレル市場にも流通している。
中国中央テレビ(CCTV)は最近、施設内部映像として、ウイグル族の収容者たちが、ミシンの備え付けられた縫製工場で働く様子が映し出された。報道によると、スポーツウェアを作っているという。
AP通信の追跡調査によると、ウイグルの収容所で製造されたスポーツウェアは、米国ノースカロライナ州の大手スポーツアパレル、バジャー(Badger Sportswear)に供給されていた。製造や組み立て工程が分散する国際サプライチェーンのなかで、強制労働を監視するのは困難なことが伺える。同社ジョン・アントンCEOは17日、調査を行うと発表した。
中国当局は、収容所でウイグルやカザフの少数民族居住地域における貧困を解消し、「現代文明化する」目的で、無料の職業訓練センターを設置していると主張している。
18日の定例会見で、中国外交部の華春瑩報道官は、職業訓練センターに関する海外メディアの報道を批判した。どの報道機関かは言及していない。「多くの事実でない報道がある」「彼らが証拠とする多くの話は伝聞だ」と、強制労働との指摘を否定した。
強制労働する以外 他に選択肢がない
AP通信が聞き取った収容者の家族によると、収容所にいる限り、強制労働に従事する以外、選択肢はないのではないかと推測する。亡命ウイグル人によると、収容所には医師や博士、技術者など高位の専門職についていた人物もいるが、収容所内では一様に工場労働させられている。
ウイグル自治区の情報を知る匿名の人物はAP通信に対して、1万人収容の施設ならば10~20%が工場労働していると推計する。この情報筋は、報復を恐れて身元を明かすことはできない。
別の情報筋で、新疆TVの記者だったという人物によると、収容所の若い男性は早朝、大工作業やセメント工場へ派遣されているという。
米ワシントンDC在住のウイグル族ルーシャン・アッバスさんはAP通信の取材に対して、姉妹であり医師のグルシャンさんが収容所にいると述べた。海外企業に向けて、「人々が奴隷のように働かされている場所から製品を輸入していることを知ってほしい。(中国当局は)何をやらせているのか。医師に針子になるよう訓練させているのよ」と述べた。
(翻訳編集・佐渡道世)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。