中国の民族政策に詳しいドイツの研究者は13日、スイスのジュネーブで開かれた米英独など各国国連代表部主催イベントに出席し、新疆ウイグル自治区の収容施設には、推計150万人が拘留されている可能性があると述べた。
新疆ウイグル自治区は、トルコやキルギスタンなど中央アジアと国境を接し、数百万人の少数民族が住む。中国政府は同地区で「過激主義の脅威を抑制する」という名目で、数十の収容施設を設置している。
英語圏の主要メディアが海外ウイグル団体の証言を報じるなどして問題が明るみになった2017年頃から、中国政府は思想矯正施設、再教育キャンプ、職業訓練センター、寄宿学校などと説明を二転三転させている。
中国民族政策に詳しい欧州文化神学校のアドリアン・ゼンズ(Adrian Zenz)研究員はこのたび、米国と英国、ドイツ、カナダ、オランダの各国連代表部主催イベント「新疆ウイグルの基本的権利の保護」に出席。ゼンズ氏は衛星写真分析、収容施設への公的支出、行方不明者の家族の証言を基に、収容者数は150万人に上る可能性があるとした。
「2017年頃から急速に拡大した新疆ウイグル自治区における一連の拘束により、成人の6人に1人、つまり150万人が拘束されていると推計する」「中国政府は明確な信仰と民族のアイデンティティを根絶しようとしており、系統的に行われている文化的ジェノサイド(大量虐殺)だ」と非難した。
収容者だったカザフスタン籍のウイグル族オミール・ベカリ(Omir Bekali)氏は同イベントに出席し、数カ月間の拘束について語った。収容者に対して拷問による思想の強制転向が行われ、死亡者も出ているのを目撃したという。
収容者は40人程度毎に狭い部屋に押し込まれ、「共産党とその指導者を称賛し感謝する歌を歌うことを強制された。収容者同士が互いに会話することは禁じられていた」と、ベカリ氏は語った。
ゼンズ氏は2018年5月、米シンクタンク・ジェームズタウン基金に発表した調査論文で、新疆政府の資金調達や建設入札は、陳全国・新疆ウイグル自治区共産党委員会書記が2016年8月に就任して以降、飛躍的に増加したと分析する。公募など73の文書を合わせると6億8000万人民元(約108億円)に上るとした。陳書記の前職はチベット自治区政府共産党委員会書記で、チベット族弾圧を強化したことで知られる。
建設施設の入札の多くに、有刺鉄線のフェンス、セキュリティー機能付きドアと窓、監視塔、モニタリング室を含む包括的なセキュリティー機能の設置の明記があり、「死角のない」設計を求められているという。
ゼンズ氏によると、中国共産党による共産主義への洗脳施設・労働教養制度(労教)は1950年から存在し、2000年以降は法輪功学習者に対して集中的に行われたとした。
新疆での収容を経験したキルギスタンのウイグル人の告発によれば、収容者は長時間の強制労働を強いられており、製造業や食品産業に関わっているとした。製造品は国内のほか米国や欧州にも輸出されるという。
The United States will continue to raise international awareness of the dire situation in #Xinjiang, and we will continue to promote accountability for those who are involved in #HumanRights violations and abuses. Read full remarks by Ambassador Currie – https://t.co/RJUZYhw83d pic.twitter.com/1Eh5G5FhMx
— U.S. Mission Geneva (@usmissiongeneva) March 13, 2019
米国務省のケリー・カリー(Kelley Currie)国際犯罪事務局担当が講演会に出席した。中国政府に対して制裁を科すかどうかについての質問に対して、「私たちは常に深刻な人権侵害の事件を監視している。弾圧の責任者の米国入国を禁止したり、米国の金融システムへのアクセスを停止させるなどの措置を辞さない」と述べた。
米国の超党派議員はトランプ政権に対して、少数民族や社会的弱者を対象とする中国共産党政権の非人道的行為について制裁を科すよう求めている。ペンス副大統領やポンペオ国務長官も2018年から継続的に、新疆ウイグル地域における迫害を批判している。
(翻訳編集・佐渡道世)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。