中国当局は5月下旬、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)と全国人民政治協商会議の閉幕後、景気回復対策として、「地攤(ディータン、露店)経済」を推し進めている。当局は2005年以降、都市景観を悪化させているなどとして、各地の「城市管理行政執法局(城管)」を通じて、露天商への取り締まりを強化してきた。当局の政策転換について、中国ネット上では、もてあそばれたとの声が上がった。
中国の李克強首相は5月28日、全人代閉幕後の記者会見で、月収1000元(約1万5000円)の中国国民は6億人いると発言した。また、「1000元では、中規模の都市で部屋を借りるのも難しい」と話した。
李首相は「雇用の安定、国民生活を守ること」が政府の最も重要な任務だと強調し、四川省成都市政府が雇用のために「露店経済」を導入したことを称賛した。
中国当局は1980年代初期、文化大革命で壊滅的な打撃を受けた経済を立て直すために、露店や屋台などの路上の経済活動を奨励していた。
中共ウイルス(新型コロナウイルス)のまん延に伴い、国内での経済活動停止や消費低迷、海外からの受注激減などで、中国経済は大打撃を受けた。今年3月、成都市の都市管理当局、城市管理委員会は新たな規定を公表し、市民が繁華街で露店や屋台を経営し、商店が道端に臨時の出店を置くことを許可した。これ以降、上海市、甘粛省、浙江省など各地の地方政府も同様の政策を打ち出した。
5月27日、中国共産党中央精神文明建設指導委員会は、今年の「文明都市」ランキング評価の基準に、「道端での露店や市場、露天商などの設置状況」の項目を設けないと発表した。
李首相の発言を受けて、「露店経済」はSNSやメディアの注目ワードとなった。中国メディア・証券日報などは、相次いで評論記事を掲載し、露店経済は雇用の安定化に重要な役割を果たすと主張し、「露店は不衛生で無秩序だ」とする今までの論調を変えた。
一部の中国人ネットユーザーは、当局の政策転換について深刻な経済悪化を反映したと冷ややかな見方を示した。
「露店を推進しているということは、景気がかなり悪いということだ」
「中国経済に冬がやってきた。単に資金を供給するだけでもう問題を解決できないという状況だ」
中には、「私が子どもの時、(文化大革命の)四人組が失脚した後、中国は露店経済を発展させた。自分が中年の大人になった今、またも露店経済に出会うなんて」と、中国経済の現状は文化大革命が終わった後の状況に似ていると示唆した。
また、中国当局が2005年に各地で屋台や露店への取り締まりを強めて以降、城管の職員と露天商の衝突や、職員らによる暴力事件が頻発した。ネットユーザーは、当局の政策に翻弄されていると不満の声を上げた。
「景気が悪くなったから、(メディアは)毎日喜んで露店経済を報道して、政策をほめている。でも、城管が露天商に暴力をふるって、商品を無理やり没収した時、なぜ報道しなかったのか?」
「露店や屋台を排除するとき、景観に悪いとか、不衛生だと批判していたのに、今は『(屋台から食べ物の)いい匂いがする』と称賛しているのはおかしい」
(翻訳編集・張哲)
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