ポンペオ氏「米政権内で妨害あった」ウイルス起源調査巡り 研究への資金提供が一因

2021/06/08 更新: 2021/06/08

マイク・ポンペオ前国務長官は3日、英文大紀元の取材に対し、退任前の数カ月間に中共ウイルス新型コロナウイルス)の発生源を特定しようとしたが、政権内の関係者から猛烈な反対を受けたと明かした。米誌の報道では、ウイルス調査を阻止した主な理由の一つとして、利益相反が挙げられている。

ポンペオ氏は、2020年後半から、ウイルスの発生源について可能な限り多くの証拠を公開するよう働きかけてきたと説明した。しかし、当時、情報機関は多くの重要な証拠を持っていたが、公開を拒否していた。

ポンペオ氏はインタビューで、この紆余曲折のプロセスを「物議を醸した闘い」と呼んだ。同氏は、「これらの証拠を公開することが重要であり、米国民はすべての事実を知る権利がある。もし、武漢ウイルス研究所からウイルスが流出したのであれば、中国共産党が責任を負うべきだ」と強調した。

ポンペオ氏は退任前の1月15日、中共ウイルスの起源を徹底的に調査するよう求める声明を発表した。声明では、武漢ウイルス研究所の複数の研究者が、ウイルス蔓延の数カ月前に感染の症状を示していたことや、同研究所で(コロナウイルスのヒトでの感染性を高める)機能獲得(Gain of Function=GOF)実験が行われていることに言及し、米国の税金がこの研究プロジェクトに流れていた恐れがあると指摘した。

メディアが明かす本当の理由

米有力誌「バニティフェア(Vanity Fair)」が3日発表した調査報道によると、同誌はトランプ前政権の内部メモを入手した。このメモの中で、米国務省のトーマス・ディナンノ(Thomas DiNanno)前国務副次官補は、2つの部署のスタッフがホワイトハウスの省庁間会議で、政府高官に対し、収拾のつかない事態を引き起こす可能性があるため、ウイルスの発生源を調査しないよう警告したと記しているという。

それによると、少なくとも4人の元ホワイトハウス高官が警告を受けた。また国務省の調査チームは、武漢ウイルス研究所の科学者3人が、2019年秋に中共ウイルスのサンプルを使った機能獲得実験中にウイルスに感染したことを示す機密情報を入手した。

また、米非営利団体「エコヘルス・アライアンス(EcoHealth Alliance)」は、過去5年間に米国立衛生研究所(NIH)から受け取った補助金340万ドル(約3億7400万円)のうち、60万ドル(約6600万円)近くを武漢ウイルス研究所に割り当て、コウモリのコロナウイルスがヒトへの感染の可能性に関する機能獲得研究に使われていた。

報道では、中共ウイルスの発生源に関する調査を妨げている主な理由の一つとして利益相反を挙げている。つまり、米衛生当局が(武漢ウイルス研究所の)怪しいウイルス研究に多額の補助金を出したため、調査はあらゆる段階で妨害されたという。

6月5日付の英紙デイリー・メールによると、エコヘルス・アライアンスの代表で、中共ウイルスの発生源を調べるWHO(世界保健機関)訪中団メンバーのピーター・ダスザック(Peter Daszak)氏が2020年初頭に26人の科学者に送ったメールの中で、「コロナウイルス(COVID-19)が自然発生したものであると主張し、ウイルスの研究所流出説を糾弾する」共同書簡を英医学誌ランセット「The Lancet」に掲載するよう求めていた。

複数の米メディアはこのほど、情報公開法(FOIA)に基づき、米感染症対策トップのアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)博士の2020年前半に送受信した数千ページに及ぶ電子メールの内容を入手した。その中には、2020年4月18日付のダスザック氏からファウチ氏へのメールがあり、メール本文にはウイルスの研究所流出説に反論してくれたファウチ氏への謝辞が書かれている。

ダスザック氏は、武漢ウイルス研究所との共同研究で20数本の論文を発表しており、そのうち少なくとも3本は、同氏自身が武漢ウイルス研究所のコロナウイルス専門家である石正麗氏と共同執筆したものである。

中国共産党の浸透による「学術界のいじめ」

ウイルス学者で米国疾病予防管理センター(CDC)のロバート・レッドフィールド(Robert Redfield)前所長は、バニティフェア誌に対し、昨年3月にCNNの番組で「コロナウイルスは武漢ウイルス研究所から流出した」という説に支持を表明した後、かつての友人を含む多くの「著名な科学者」から死の脅しを受けたと訴えた。「私は(攻撃が)政治家から来ると思っていたが、科学界から来るとは思っていなかった」と驚いたという。

英秘密情報部(MI6)のリチャード・ディアラブ(Richard Dearlove)元長官は、中共ウイルスが武漢の研究所で発生したことを証明するのは難しく、証拠がすでに中国当局に隠滅された可能性が高いとデイリー・テレグラフ紙に語った。

ディアラブ氏は、欧米諸国は中国共産党の信頼性について、甘く見すぎていると主張した。中国共産党はイギリスなどの科学機関や学術誌に浸透しており、真実を語ろうとする科学者は沈黙させられている。ウイルスの起源について「あらゆる議論を封殺する」という科学界の異常な行動は、「学術的いじめ」に近いものであると指摘した。

中共ウイルスの発生後、WHOや米衛生当局の指示のもと、世界の主な学術誌や科学者、報道機関が、ウイルスの「研究所流出説」を陰謀論とした。ジョー・バイデン米大統領は5月26日、中共ウイルスの発生源をめぐる調査結果を90日以内に報告するよう、同国の情報機関に指示した。

(翻訳編集・王君宜)