麻生太郎副総理兼財務相は5日、東京都内で行われた講演で中国が台湾に侵攻した場合には安全保障関連法が定める「存立危機事態」として認定し、限定的な集団的自衛権を行使することもあり得るとの認識を示した。
台湾海峡の緊張が高まるにつれ、日米同盟の形も変化していることは明らかになった。 英フィナンシャル・タイムズ紙は7月1日、日米両国が台湾海峡での紛争に対応するため、軍事演習や合同軍事訓練を行っていると報道した。
フォーブス誌の報道によると、日本は台湾のために戦う可能性が高まっていること、軍事介入の拠点として最も可能性が高いのは台湾から約445キロしか離れていない宮古海峡だと指摘した。つまり、台湾海峡での戦争に対応する際に、沖縄の米軍基地が日米同盟の肝心な部分となる。
沖縄の米軍基地、台湾海峡危機に迅速な対応をする可能性
専門家たちは、中国の「反接近・領域拒否」(Anti-Access/Area Denial、A2/AD)能力の増加に伴い、沖縄の米軍基地に対する脅威が相対的に高まっていると指摘する。
防衛省の防衛研究所中国研究室・主任研究官の山口信治氏は、「中国が東シナ海や南シナ海で頻繁に行っている軍事演習は、確かに日本に大きな圧力をかけている。その結果、日本当局は、中国が強引に台湾へ侵入しようとする場合、日本は参戦しなければならないと認識している」と米政府系ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対して述べた。
さらに、「台湾海峡で戦争が起こった場合、地理的に最初に対応をしなければならないのは沖縄だ。軍事的な観点からも、第一列島線の重要性がますます高まっている。沖縄には米軍の前線基地がある。中国軍は米国の直接関与を避けるために、沖縄の米軍基地を攻撃する。これは日本領土への攻撃となり、自衛隊が参戦することになる。だから、米中の対立が深まれば深まるほど、沖縄の戦略的重要性は高まる」と説明した。
沖縄国際大学教授の野添文彬氏は、中国軍事力の向上につれ、中国は米国の西太平洋における軍事的な優位性を脅かし、日米の軍事協力が不可欠となっている。台湾有事が発生した場合、日米政府は協議を行ったうえ、沖縄基地からの反撃が必然的に行われる。その後、中国による嘉手納飛行場へのミサイル攻撃や沖縄の各所へのサイバー攻撃が行われると述べた。
沖縄基地で展開する米軍の強化訓練
沖縄県に、全国の米軍専用施設面積の約70.6%が集中している。米空軍の嘉手納飛行場や第3海兵遠征軍の駐屯地と普天間飛行場が台湾に近いため、米軍が台湾海峡戦争への対応や日本の後方支援に利用するには、最も適切な場所である。
台湾有事の可能性が高まったことを受け、沖縄における米軍の訓練が徐々に強化されている。「米軍は現在、『遠征前進基地作戦(EABO)』という新しい作戦コンセプトのもと、訓練を強化している」と述べた。
海兵隊は、台湾や南シナ海での有事が発生する可能性を前提に、いくつかの離島のそれぞれに小規模な部隊を駐留させ、ミサイル基地や燃料補給基地を設け、制海権の確保と中国海軍の侵攻を抑止するために訓練を行っている。野添氏は、沖縄では現在V‐22「オスプレイ」、KC130空中給油機、F-35 ライトニング II、パラシュートの降下訓練などを積極的に展開していると付け加えた。
いっぽう、野添氏は「すべての軍事基地を沖縄に集中させることは、政治的にも軍事的にも持続可能ではない」と述べた。 米海兵隊のEABOや、空軍のACE(Agile Combat Employment)など、グローバルで柔軟性の高い対空戦能力を備えた即応性を高められるよう、訓練戦略を調整するべきだとした。こうした共同訓練は、九州の島や日本本土、さらにはアジア地域にも分散させることができるだろう」と述べた。
また、パラオの米軍基地の開設やオーストラリアの米軍訓練施設の拡充など、アジア太平洋地域はより多くの米軍のプレゼンスを受け入れることができるとし、「インド太平洋地域における米軍の安定性の向上にもつながる」と野添氏は語った。
日米台協力における沖縄の役割
日米同盟は台湾の安全保障を重要な課題と考えており、台湾の蔡英文総統は2019年から日台間の安全保障対話を始めたいとの意向を示した。日本の菅内閣が発足した昨年、岸信夫防衛相は産経新聞を通じて「日米台の安全保障対話に期待している」と述べた。
日米台の三国間軍事協力は求められている。 山口信治氏は、第一列島線の戦略的な重要性や、中国が台湾海峡に大規模な侵攻を仕掛けてくる可能性が高まっていることを踏まえ、中国の侵略を抑止するために、日米台の緊密な協力関係を築く必要があると指摘した。
しかし、日米の安全保障対話において、期待と現実に差がある。台湾は「同盟国」に近い形にはなっているが、現在では、日本は台湾の安全保障に直接参加することができない。
「日本は台湾と直接に戦略的な対話をする可能性が低く、米国を通じて間接的に行わなければならない。日米は共通の戦略的利益を持っているとはいえ、中国との政治的な距離感が異なる」と東京工業大学の川名晋史氏は言う。
「日本は、日米台の安全保障対話が中国に刺激を与えすぎることを懸念するだろう。沖縄は台湾海峡問題の中で極めて重要な位置を占めているが、台湾との安全保障協力よりも、日本当局と沖縄は、米海兵隊がグアムやダーウィン港に移転する可能性に関心を持っている」と付け加えた。
いっぽうで、野添氏は「日米台の3者が、医療、教育、文化、技術、商業の交流など、ソフト面での協力をはじめ、結果的に離れない緊密な関係を築いた方が良いとした。
地理的に台湾に最も近い沖縄は、台湾に対して特別な好意を持っており、沖縄と台湾の経済・社会的交流を強化することができる。沖縄は以前から「万国の津梁」(世界への架け橋)という目標を達成するために尽力しており、非軍事的な交流や投資から始めれば、実は沖縄が台湾への支援を増やし、その上で沖縄の安全保障に関する学術的な共同研究を行うことが容易になる」と述べた。
(翻訳編集・蘇文悦)
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